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主に映画の感想文を書いています/【ご注意】GOTs8ネタバレあります

サウルの息子(2015)

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ホロコーストを題材にした作品。先日「帰ってきたヒトラー('15)」を観たあたりからウォッチリスト入りさせていたやつです。

舞台は第二次世界大戦中のアウシュビッツ強制"絶滅"収容所。日々多くのユダヤ人たちが不当に処刑されるこの場所で、その処刑作業に携わっていたのはあろうことかユダヤ人の囚人たちでした。

「ゾンダーコマンド」と呼ばれた彼らは、移送されてきた同胞たちをガス室に誘導し、死体を運び、焼き、灰を皮に捨てる、そんな汚れ仕事を全て請け負いました。移送されたら即処刑というアウシュビッツにおいて生き延びる唯一の方法でしたが、彼らも結局は道具に過ぎず、数ヶ月ほど働かされたのちガス室送りになり、新たな囚人に交換されたのだそうです。

という、地獄なんて表現すらヌルく思えるようなゾンダーコマンドの囚人サウルが本作の中心人物。ある少年の死体を見て息子だと思ったサウルは、その若者をどうにか倫理的に正しく葬ってやりたいと奔走します。そういうわけでこの「サウルの息子」というタイトルになっているのですが、じゃあ本当に「息子」だったのか?というとあまりそうも思えない描き方をされていて、おそらくは象徴的な「生きた証」として捉えるのがしっくりくるかもしれません。

骨すら残らないよう灰にして川に流して、文字どおりユダヤ人を歴史からも絶滅させようとしていたナチス。少年を土に葬ろうとしたサウルのそれは、どうにかして後世に自分たちの存在を残そうとする行為のひとつだったのでしょう。ラストシーンでカメラがサウルからある人物に乗り替わるシーンは、直後の銃声を聞いてもなお希望を感じさせます。あそこで乗り替わった結果としてこの映画が存在している、なんて考え方もできます。

本作はその映画的手法が話題になったようで、スタンダードサイズの狭い画面、かつ被写体が画面のほとんどを占めており、わずかに見える背景は浅い被写界深度で大いにボケている、というのが特徴です。

ひたすら凄惨なシチュエーションに置かれているゾンダーコマンドたちですが、彼らは一様に無表情で作業をしています。きっと感情のスイッチを切っていたのだろう、心を無にして働いていたのだろうという推測から、地獄絵図にはピントを合わせない、視界は極力狭くする、そんな演出になっていると思われます。そう思えるからこそ、普段なら意識しない背景の、ぼんやりと映った死体の山が強烈に残る、と、そういう映画です。

エグさで言えば、パンフォーカスで全てを映した「シンドラーのリスト('93)」のほうが上かもです。本作は決して直視できないほどの映像ではありません。直視できないようなものからはピントを外してあるから。が、しかし、ぼやけた背景から鮮烈な印象は残るという画期的なつくり。

また意外なことに語弊はあるにしろ、おもしろかったという感想も抱きました。個人的な好みとしては、どんな映画にもエンタテインメントの要素は大事です。トータルでいい映画だったと感じました。

アウシュビッツから生還を果たした元ゾンダーコマンドの方が書かれた本、気になってKindleで買ったので読んでみます(→読みました)。

With A Little Patience

これは、監督が2007年に製作した「ちょっとの我慢」というショートフィルム。本作はハンガリー映画で、このショートフィルムに出てくる女性もハンガリー人設定です。

ハンガリーは元々ドイツに、つまりホロコーストに協力的だったのだそう。この映画もたった10分ちょいの尺のなかで衝撃的なものがフレームインし、そして目を逸らして終わります。そこに見えているのは「ちょっとの我慢」どころではないものなわけですが。

本作より10年近く前の作品なのに全く同じテイスト、同じ手法で撮られており、とても印象的な作品となっています。ちなみにこの女性の鼻、ジェニファー・コネリーにすごく似ている。などと脱線。

(2019年41本目)

サウルの息子 [Blu-ray]

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イメージ、それでもなお アウシュヴィッツからもぎ取られた四枚の写真

イメージ、それでもなお アウシュヴィッツからもぎ取られた四枚の写真

下のは本ですが。この写真を撮ってる場面も出てきます。