お子様向けなのか何なのか分からないタイトルだけどそれにしちゃ妙にキャストが豪華だな、と気になっていた『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』観てきました。出演はダニエル・クレイグ、クリス・エヴァンスほか多数!
※「あらすじ」「雑感」まではネタバレありません。最後にネタバレ要素を含む感想箇条書きがあります。
あらすじ
有名ミステリー作家で大富豪のハーラン・スロンビーが遺体で見つかる。彼の85歳を祝う誕生日パーティーが前の晩に催されたばかりだった。現場は自殺の線が濃厚。しかし匿名の依頼を受けて現れた名探偵ブノワ(ダニエル・クレイグ)はこの事件を他殺と考え、スロンビーの一族や関係者相手に事情聴取を始める。
ライアン・ジョンソン監督自らナビゲートしてくれるレトロな予告編。たのしい。
雑感
最初から最後まで軽く楽しめる、いまどき珍しい古風なミステリーでした。例えるなら『オリエント急行殺人事件(1974)』みたいな、なんて思っていたら実際にアガサ・クリスティをリスペクトした作品だったようで、すごく納得!
監督は『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン。もともとミステリーが大好きだった彼が、“ミステリーの女王”アガサ・クリスティーに捧げ100%オリジナル脚本で撮り上げた。
なるほど、オールスターキャストっていうところまでオマージュしてるんですね。だってジェームズ・ボンドにキャプテン・アメリカですよ。二人とも真逆のキャラみたいなのをやってて楽しい。ダニクレあんなにコメディいけたんだ。キャップはそんなセカンドライフを送っていたのかい…。マイケル・シャノンが出てたのは口髭のせいで気付かなかった。
ヒロインポジションのアナ・デ・アルマスさんは、『ブレードランナー2049(2017)』のJOY役。はいはいはいはい!(思い出せてすっきり) どうやら今度の007にも出るらしく、ダニクレ2連チャンじゃないですか。
ミステリーに疎くてもよくできてるなあと思える脚本で、隅々まで回収されていく伏線が気持ちよかったです。そうだよね、なんか僅かに違和感あったよ、みたいなところを全部拾ってくれる。予想通りの展開もそれはそれで快感。
また、メッセージ性みたいなものが少なくとも表には出てこないので、本当にいまどき珍しい、単純に楽しめる映画でした。キッズ向けっぽいサブタイもこれはこれで悪くない気がしてきた。おすすめです。
以下、ネタバレ要素を含む感想箇条書きが続きます。
はみだし感想(ネタバレ要素含む)
マグカップが気持ちよかった! 偶然思いついたシーンだったらしい(【ネタバレ】『ナイブズ・アウト』あの重要シーンは偶然だった ─ ライアン・ジョンソン監督が明かす意外な秘話 | THE RIVER)ですが、あれがあるとないとではやられた感が段違いだと思う。映画ってそういう偶然の積み重ねなんですね。
人気ミステリー作家が死ぬ直前に遺したシナリオ、っていう展開が素敵。「出来上がった状態で降りてくるらしい」と家族が言っているシーンを経ているので、突然完璧なトリックを言われても違和感がない。いい話だった。
モルヒネ投与してから結構時間経ってる気がするけど全然汗かいたり異常な症状出てなくない?なんて思ってたのもちゃんと回収してくれて気分がよい。下手したら演出ミスでしかないような小さな違和感もこういう作品だと引っかかっちゃうので、いくつか感じた「小さな違和感」が全部ちゃんと回収されたのには感心した。
数分前に頼んでた取り分け用のボウルがそんなかたちで使われるとは!!みたいな細かいところもいちいちうまい。
マルタがあくまで根っからのいい人であり、最後にあの家族を心配してあげるのもハートウォーミングでよい。かろうじて「あんな奴ら心配する必要ねえよ!!!」と感じなかったのは(感じる人もいるだろうけど)、遺言開封に到るまでのあの家族の描き方がうまいのだと思う。
総じて気分のいい映画でございました。
一家の主が殺されたところからの、館を舞台にした家族と使用人たちのミステリー、『8人の女たち(2002)』っぽい。…というのは『オリエント急行殺人事件』のときにも書いていた。そうですか。
(2020年18本目/劇場鑑賞)
- 発売日: 2020/07/22
- メディア: Blu-ray