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主に映画の感想文を書いています

映画「ドゥ・ザ・ライト・シング(1989)」雑感

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スパイク・リーの初期作品ドゥ・ザ・ライト・シングを観ました。現在コロナと並行して世界的に大きな動きとなっているBlack Lives Matterの運動。昨日('20/06/02)放送の「アフター6ジャンクション」冒頭でライムスター宇多丸さんが、この件に関して本作をまさに連想したと言っていました。なかなか当事者意識を持って考えることが難しい問題なのですが、少しでも考えなきゃなと思っての鑑賞です。

あらすじ

ニューヨーク、ブルックリンの黒人街。イタリア系白人の父子が営むピザ屋は、地域の黒人たちでいつも賑わっていた。アウェイの地に開店してから20年間、うまくやっていると店主は思っていた。しかしちょっとしたいざこざが導火線となり、大変な事件が巻き起こってしまう。

雑感

あれ、こんな映画?? と意外なほどポップで明るいコメディタッチの序盤。黒人街で白一点、人気のピザ屋を経営しているサルダニー・アイエロとその二人息子。お世辞にも仕事熱心とは言えない黒人の若者ムーキースパイク・リーをバイトで雇い、彼が配達のたびに道草くって小一時間帰ってこなくても我が子のように可愛がってやるサルの姿は、どちらかといえば好印象。決してステレオタイプな敵キャラではないのです。

その後もなんだかハートウォーミング。しょっちゅう言い合いこそしているけれど、一触即発という感じでもなく、なんだ全然うまくやっているじゃないか。この状況からそんな大事件などに発展し得るのだろうか? そう思っていると、終盤に差し掛かった頃、事態はじわりじわりと険悪に。そして「起こってはならないこと」が次々と……。

騒ぎの発端となっていた黒人の若者を白人警官が取り押さえるだけでなく絞め殺してしまうところから暴動は取り返しのつかないものとなっていくのですが、2020年現在のジョージ・フロイド事件と全く同じではないかと驚きました。というよりむしろ今回の事件のほうがますます非道いではないかと、非常に驚きました。

また本作でなんとも複雑なのは、暴動の要因となった白人のサルが前述のとおり「いい人」なところです。彼を憎っくき白野郎として描かなかったことで本作の問題提起はとてつもなく考えさせられるものになっていると思います。なによりも、「悲しいなあ」と思わされる映画でした。

日本で暮らす日本人が有色人種差別の根深さを理解すること、あるいは男性として育った男性がフェミニズムを心から理解すること、いずれも不可能に近いほど難しいですが、でも今の時代に必要不可欠なこと。ブレイディみかこさんの著書『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で印象的だった「エンパシー」の力をますます鍛えていかないといけないなあと引き締まります。

(2020年85本目/U-NEXT)

ドゥ・ザ・ライト・シング (字幕版)

ドゥ・ザ・ライト・シング (字幕版)

  • 発売日: 2014/01/01
  • メディア: Prime Video
余談も余談ですが、本作に出てくる3人の駄話おっちゃんズと1998年のアニメ『カウボーイビバップ』に出てくる3人の駄話じいさんズが似ているなあと。そういえばビバップって主人公「スパイク」じゃん、とか。そんなことをふと。