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主に映画の感想文を書いています

サンセット大通り(1950)

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ビリー・ワイルダー監督作品。こわっ。そしてヘイズコードへの闘志が見える!

あらすじと感想

舞台は1950年代ハリウッド。サンセット大通りに面した豪邸のプールに浮かぶ男性の死体。彼はどうしてこのような最期を迎えることになったのか。

遡ること半年。売れない脚本家ジョーは、取り立て屋から車で逃げている最中にとある豪邸へ迷い込む。廃墟かと思いきや、そこにはすっかり歳をとった往年のスター女優ノーマ・デズモンドが暮らしていた。生活に苦しんでいたジョーはここぞと彼女の懐に入り込み、彼女が執筆していた脚本の手直し作業を住み込みでおこなうようになる。自らの「映画復帰作」を信じて疑わないノーマの情熱は日に日に高まり、同時に若き同居人ジョーへの愛憎も露わになっていくのだった。

ワイルダー監督を全面的に信頼しているので今作も期待値を上げて鑑賞。いやはや、こりゃまたすごい作品でした。ワイルダー作品の特徴に「効果的なナレーションによる導入のうまさ」があると思うのですが、本作はそのひとつの頂点なんじゃないでしょうか。

「朝5時、サンセット大通りをパトカーが走ってきた。邸宅で殺人事件があったらしく大騒ぎ。ほら、プールに男が浮かんでる。売れない脚本家だった奴だ。彼がどうしてこんなかたちで“憧れのプール”を手に入れてしまったか、新聞は真実を語ってくれないだろうから僕が説明しよう」

ナレーションのお前は誰だ、と。それはもうすぐに分かることで、プールに浮かんでたアイツなわけです。死人が語るスタイル。ぱっと連想したのは先日観た「ファイトクラブ」でした。あれは死人じゃなくて死にそうなヤツ、ですけどね。でもノリとしてはあの感じで、淡々と「渦中の本人」のナレーションが物語を進行させていきます。もっとそのまんまなのは「アメリカン・ビューティー」だそうで、そういえばそんな作品でした。だいぶ前に観て内容忘れてしまった…。どちらも1999年の作品ですね。

観たばかりの「エド・ウッド(1994)」も、テイストは違えどストーリーはすごく似てます。売れない脚本家の主人公、ひょんなことから出会う往年の映画スター、「まだ生きてたのか」と言われながらも復帰作を作ろうとしていく過程。まあ、間違いなくティム・バートンも影響は受けているでしょうから、少しくらい意識はしたかもしれません。


ヒロインとは言い難い老婦人ノーマは、サイレント時代の大スター。というと思い浮かべるのは翌々年公開の「雨に唄えば(1952)」。あちらは1927年のトーキー移行時期に捨てられたサイレント女優を“捨てる側”からコミカルに描いていますが、こちらは“捨てられた側のその後”ということで、「雨に唄えば」のダークサイドなスピンオフと言えそうです。ちなみにジョー役にはジーン・ケリーへの打診もあったそう。実現してたら大変なことに…笑

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実際にジョーを演じたのはウィリアム・ホールデン。わたしは「麗しのサブリナ(1954)」と「パリで一緒に(1964)」のいずれもヘプバーン映画で拝見したのみですが、ノーマの豪邸は車庫やテニスコートなど「麗しのサブリナ」のそれと似てますし、「パリで一緒に」はまた筆の進まぬ脚本家の役ということでいちいちパラレルみを感じます。他作品を連想ということでは、最も影響を受けているとされているのが「マルホランド・ドライブ(2001)」だそう。言われてみればあちらも“ハリウッドの闇”のお話。マルホランド・ドライブとはサンセット大通りに通じるハリウッドの道ですね(GoogleMapでしばし散策してしまいました)。なんでもパラマウントスタジオの出てくるシーンで、ノーマのあのお高い車が置かれてるらしいですよ!


とにかく本作、調べれば調べるほど小ネタ的な要素が山盛りでして、特にキャラクターと演者の関連性がものすごいです。関連性どころか本人出演も多数。まさかこんなかたちでバスター・キートンを初めて拝見することになるとは…。ご興味ありましたらぜひ調べまくってみてくださいませ。めちゃくちゃ掘れる映画です!

書きたいこともまだまだ山盛りなんですがきりがないので…。あ、ひとつだけ、うーーむと思ってしまったのがジョーとノーマの年齢差。あんなメンヘラおばちゃんとのロマンスなんて有り得ないでしょという前提で進むストーリーですけど、あの年齢差って性別を逆にすると当時の映画では当たり前のカップル設定なんですよね。考え出したらなんか複雑(笑)

キムラ緑子の主演で舞台化されたら観に行きます! よろしくお願いします!

(2018年64本目)