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主に映画の感想文を書いています

ブルックリン(2015)

プライムビデオにて、なんとなく「好きそう」と思って鑑賞。

あらすじ

仕事と新しい人生を求めてアイルランドからニューヨークのブルックリンへひとり移住したエイリシュ。慣れない環境でホームシックに陥る彼女だったが、彼女に恋をするトニーという青年と出会ったことで次第にそれは解消される。

すっかり生活に慣れてきた頃、訃報が入りエイリシュは故郷へ一時帰国することに。トニーは彼女が戻ってこないのではと不安がり、渡航前に急遽ふたりは籍を入れる。アイルランドへ帰ってきたエイリシュは最低限の滞在でブルックリンへ戻ろうとするも、アメリカの地で結婚してきたことを言い出せなかったせいでなかなか帰れなくなってしまう。

雑感

始まってFOXサーチライトのロゴが見えた瞬間「あ、きっと絶対好きなやつ」と確信しました。好きなやつでした。サーチライトさん、信頼してるから!

アイルランドの小さな街で細々と生きていた若い女性が、アメリカに渡って全く新しい人生を見つける。いつしかホームシックもなくなったし恋人もいる、もう私ここで生きていける! でもわけあって帰郷したら、やっぱりこっちもこっちでいいかもなあ、なんて揺らいでしまい…。みたいなお話。

ブルックリンは移民の街なのだそうで、そういった「背景」がしっかりある作品ではあるのですが、わたしは鑑賞時点ではそのへんのことを全く知らなかったので単純に人間ドラマとして楽しみました。環境による心の移り変わり、あるよなあ、と深く頷ける内容でした。「違う人生を想像してた」のところは正直どっちに転んでもおかしくないなあ、と。ただ映画的には、そっちに転んでくれて嬉しかった。

こういう地味目の作品って大好きで。よかったポイントを挙げてるときりがないんですけど、例えば行きの船で出会った「彼女との出会いがのちにエイリシュの人生を大きく変えるのだった」的な女性キャラと再会しない潔さ! いやーでもわかる! ひとり旅の最中って結構ああいう出会いが付き物。お互い開放的になって気が大きくなって、その記憶は美化されて。あのシーンはすごいよかったです。

そしてまたうまいなあ〜〜と思わせるのが二度目の船シーン。エイリシュが、今度は逆の立場になって後輩移民ちゃんに先輩風をふかすとこ。めちゃくちゃグッときちゃいました。冒頭のあの女性も、慣れているように見えてじつはほんの2回目だったかもしれない。終盤のエイリシュと同じような境遇だったのかもしれない。なにかにつけて対になるようなシーンを意図的に作っている本作ですが、この循環構造も粋ですね〜。

エイリシュを演じるシアーシャ・ローナンさんは、口角上がりのおとなしい顔立ちが黒木華さんに似てるなあと思いながら見ていました。次第に血色が良くなって生き生きとしてきて、とても魅力的でした。ただ、コニー・アイランド用に買ったサングラスだけはいただけない。

彼女は簿記を勉強しているということで、全編通して「Bookkeeping」というワードが頻出します。聞いてる限りは「ボキ」と聞こえるので、あれ、もしかして「TSUNAMI」みたいに日本語から英単語になったパターン?とか思っちゃいました。違いました。ひとつ勉強になりました。

時代設定はいつ頃なのだろうと思っていたら、映画デートが「雨に唄えば」! 都合よく「雨に唄えば」だけは公開年を覚えているため「1952年か!」と即座に判断できるわたし。映画デートのあとに公園の街灯で「雨に唄えばごっこ」する彼氏かわいい。ちなみに設定が1952年であることは後の墓標で確認できます。ちとかなしい。

あと、これは意図的なのか偶然なのか、籍入れることにして同じ公園でハグしてるシーン。ちょうどその瞬間に向こうの信号が次々と青になっていくんですよ。意図的だったらニクい演出だし、偶然だったら天が味方してるし、いずれにせよ好きなシーンです。

てなわけで、とても好きな風合いの作品でした。内容は全然違いますけど「キャロル(2015)」とか好きな人は雰囲気的にストライクかも。

(2018年197本目)