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主に映画の感想文を書いています

オズの魔法使(1939)

スタンダード・ナンバー「虹の彼方へ(Over the Rainbow)」を生んだ偉大な作品。ジュディ・ガーランド主演。送り仮名なしの「魔法使」が正しい表記です。

あらすじ

カンザスの田舎に暮らす少女ドロシーは、お月様の向こう、雨の向こう、虹の向こうにまだ見ぬ素敵な世界があると信じていた。そんなある日、竜巻に家ごと呑まれた彼女は魔法の国「オズ」へと辿り着く。困惑する彼女に対し、「オズの魔法使い」に頼めば帰してくれるかもしれないと「良い魔女」はアドバイスする。魔法使いのいるエメラルドの都へと歩いて向かう道中、脳みそのない「かかし」、心のない「ブリキ男」、勇気のない「ライオン」と出会った彼女は連れ立って都を目指すが、「悪い魔女」が一行の行く手を阻み、ついにはドロシーを殺そうとする。

虹の彼方へ

ちょうど10年前になりますが、所属する吹奏楽団のコンサートにてこの曲のソリストをつとめたことがあり、それ以来なんとなく特別な曲でした。映画をよく観るようになってからはジュディ・ガーランドがオリジナルを歌っていると知り、その時代の映画やスターに憧れのあるわたしとしては少なからず運命的な気持ちに。

古い映画への抵抗は一切ないものの、本作はファンタジーということで明らかにビジュアルがチープそう…。あんまり気乗りしないな〜と先送りし続けること数年。久々に「虹の彼方へ」の演奏を聴く機会があり、曲紹介のなかでジュディ・ガーランドの名前も読まれ、いいかげん観よう!と手に取ったのでした。

これ吹き替えではなく、当時16歳のジュディ・ガーランド本人の歌声です。ジュディは幼いころから天才的なシンガーでもありました。圧倒的な歌唱力です。

1939年のカラー映画

初の長編カラー映画が1935年ということで多分それなりに作られてはいたのだと思いますが、カラーは40年以降かなというイメージがあったので観終わってから公開年を見て「39年?!」と驚きました(39年以前の作品はこれまでも結構観ているものの、全てモノクロでした)。同年のやはりカラー映画である「風と共に去りぬ」など観ていればよかったんですけども、あいにく未見という不勉強。こちらも先延ばしにしている作品です、観なければ。

本作すごくおもしろいのは、「オズ」の世界だけをカラーで描いていることです。プロローグとエピローグはモノクロ、というか独特のセピア。無彩色の世界で開けたドアの先に彩り豊かなカラーの世界が広がっているという演出は、今でも鳥肌が立ってしまうのですから当時はどれほど興奮させられたのでしょう。

今の目で見ると、セットはだいぶチープです。カラーで、かつクリアにデジタル修復されてしまっていることもあり、書き割りなどがまたよく目立ってしまいます(笑) ただ、チープというよりも例えるならディズニーランドの「イッツ・ア・スモールワールド」であるとか、Eテレの子供向け番組であるとか、そっちのほうのテイストかな?という気もします。冒頭には「子供心を忘れていない人たちと、子供たちへ」というメッセージも出ますし、MGM制作のファミリー向けミュージカル映画という立ち位置でしょうか。

やっぱりおうちが一番だわ

そ、そんな超インドアな結論なんだ!知らなかった!笑 非常に汎用性の高いセリフかと思いますがネット上でまったく見かけません。これは今こそ流行らせるべきかもしれません。

いくらおうちが一番とはいえ、あんな竜巻来たらたまったもんじゃないですね。竜巻のシーンがかなりリアルに怖かったです。特典映像のドキュメントによると、竜巻のくだりで見られる数々の映像効果はみな工夫を凝らした特撮なのだそう。そのへんをよりリアルにするために、カンザスのパートはモノクロにしたのかも…?

あと、昨日「グリーン・ランタン」という映画を観たのですけども、奇しくもこれ結構グリーンランタンじゃない???とか思っちゃいました。球体の乗り物でやってくるでしょ、都が緑で、魔法使いも住民たちも緑でしょ、意志と想像力を強く持ち、恐怖に打ち勝つライオン…レイノルズ…いや冗談。ついでにマーベルじゃないけどマーベル教授出てくるし、なんか必要以上に「あれ??」ってなっちゃいました(笑) 完全なる余談。

1989年には公開50周年を記念したパレードがニューヨークの34丁目でおこなわれ、ドロシーの靴にちなんで大勢がタップをしながら行進したそうです。ギネス記録にもなったとか。まさに「三十四丁目の奇蹟(1947)」って感じでいいですね。

ちなみに映画で印象的なマンチキンたちは、実際にサーカスなどで活動していた小人の人たちを125名も集めての撮影だったらしいです。壮観だしなんかMGMって感じがする…。そんな興味深い裏話、Blu-rayの特典にたんまり入っており非常に楽しめました。あの「良い魔女」のひと、ジーグフェルドの奥さんだったんだ!とか、かかし役のレイ・ボルジャーって「巨星ジーグフェルド(1936)」で関節外れたような超絶ダンスしてた人か!とか。

てなわけで、上のほうでも書いたとおり比較的「子供向け」なテイストで作られている作品なので、お子さんと観ていただいたりするとより楽しいんじゃないかなーと思います。もちろん、子供心を忘れていない大人のみなさんもぜひどうぞ。

(2018年133本目)