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主に映画のあらすじと(まとまりのない)感想文

四十二番街(1933)

四十二番街【淀川長治解説映像付き】 [DVD]

四十二番街【淀川長治解説映像付き】 [DVD]

ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000)」にてビョークカトリーヌ・ドヌーヴが映画館で観ていた映画、です。環になったダンサーたちを真上から撮影した万華鏡のようなやつ、といえばピンと来る方も多いかも。「四十二番街」と訳されているのはニューヨークの42丁目、ブロードウェイあたりの通りのことを指します。

あらすじ

…は、よくあるバックステージもの。ですが、その起源になっている作品のひとつなのだとか。本作はワーナーの作品で、一連の(〝よくあるバックステージもの〟の)MGMミュージカル映画が出てくるのはこれ以降となります。アステアが「ダンシング・レディ」の端役で映画デビューするのもこの1933年。アステアといえば、本作にはジンジャー・ロジャースもやはり端役で出演しています(そしてアステアと初めて「空中レヴュー時代」で組むのも同年)。

ワーナー・バクスター演じるスパルタな演出家ジュリアンは、雰囲気的にはジーグフェルドっぽい感じ。というかジーグフェルドがモデル、みたいな話もどっかで見た気がします。感情移入できる良いキャラクターでした。終盤で新人女優を「スターになって戻ってこい!」と激励するシーンはグッときました。くたくたになりながらも熱血指導を続ける様は、「TAP THE LAST SHOW(2017)」の水谷豊ってこのへんのイメージなのかなーとか。セットのミニチュアを見ながらスポンサー降板云々の話をするとこもまさに同じようなシーンがありました。

よくあるバックステージものとは言ったものの、愛を育む時間よりもリハーサルシーンのほうが中心なのでわりと骨太。また、出演者同士のいがみ合いみたいなシーンも結構過激に描かれており、女社会こわい〜〜〜といった感じです(そんな中で、なごめる名脇役ウーナ・メルケルさんは今回もわたしイチオシです)。バックステージものでありながらリハーサルシーンに尺を取っている作風は、「バンド・ワゴン(1953)」あたりが近いでしょうか。

バスビー・バークレー

バークレー・ショット」と呼ばれる撮影技法、名前だけは聞いたことがありましたが本物を見るのは初でした。はじめにも書いた「環になったダンサーたちを真上から撮影した万華鏡のようなやつ」ってやつです。他にも、今では新鮮ともなんとも思わない「ラインダンスの脚を望遠で横からずらーっと撮影したやつ」などもバークレーの生み出したものだとか。「ダンサーの股の間をぬっていくカメラーワーク」や、マスゲームで表現する摩天楼もすごかったです。

バークレーの独創的なショットに共通しているのは、客席で観ているのとは違う「映像でしか体験できない新しいショウのかたち」を追い求めていた、ということ。斬新なアングルはもちろん、特徴的だなと思ったのが劇中劇のスケールの大きさ。そこは劇場のステージ上であるはずなのに、明らかにオープンセットのような広々とした世界へと急に移るんです。視点の制約だけでなく床面積やその他現実的な制約を取っ払って「映像体験」に特化するそのスタイルは、「え、ちょっと待ってステージじゃないでしょそこ」ぐらいの明らかな違和感があるのですごく印象に残ります(笑)

バークレー・ショットについてはこちらの記事にとても分かりやすく書かれていました。 そういえば確か町山さんの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」解説で聴いたんだったと思いますが、「シェルブールの雨傘(1964)」冒頭の「真上から撮った傘」のシーンはバークレー・ショットを模したものであると。んで、その主演女優であるカトリーヌ・ドヌーヴが「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のなかで「四十二番街」のバークレー・ショットなシーンを観ているというのがじつにおもしろい、と。なるほど。映画って捉え方次第でいくらでもおもしろがれるのがいいですね。

(2018年118本目)