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主に映画のあらすじと(まとまりのない)感想文/期間限定でNY旅ブログ連載中

雨に唄えば(1952)

言わずと知れたミュージカル映画の超名作。Blu-rayも持っているくらい好きな作品ですが、この度「午前十時の映画祭」にて上映されるということでホイホイ行ってきました。ここ数週間、日曜朝の映画館通いがお決まりコースになっていて楽しいです。今回はTOHOシネマズららぽーと横浜で鑑賞。なんと、ゆったりシート&サイドテーブル付きのプレミアスクリーン! 1,100円でプレミアはお得! しかもプレミアって予告編がないんですね、プレミア感すごい。客層のほうは老若男女まんべんなくの満員御礼でした。よきかなよきかな。

概要

時は1927年ハリウッド。サイレント映画全盛時代からトーキー映画時代への移り変わりをコミカルに描いた、映画業界ウラ事情ミュージカル。主演はジーン・ケリーデビー・レイノルズドナルド・オコナー。劇中劇のダンサーとしてシド・チャリシーも登場する。

ざっくり言うと、喋ったら幻滅しちゃう系ボイスのサイレント映画女優にこっそりアテレコしちゃう話。元祖、声優モノ!

別格の名作

何度観ても、むしろ観れば観るほどによいです。と言っても最初に観たのは「ラ・ラ・ランド(2016)」きっかけなので、全然最近ですけどね(笑) 「ラ・ラ・ランド」関連作品については過去記事でまとめております、ご興味ありましたらどうぞ。 初めて観たころはまだ何も知識がなくて、それでも「なんておもしろいんだ」と感動しながら「THE END」の字を見ていた記憶があります。今回の再鑑賞ではニワカなりにだいぶ知識が増えているのでいろんなところに「おっ!」となれて、また新鮮におもしろかったです。「これジーグフェルド・フォリーズ風だったのか!」とか「めちゃくちゃバークレーショットだ〜」とか「もしかしてこのダンサーはアステア風かな?」とか。

プレミアのシーンがチャイニーズ・シアターだったというのも初めて知って驚いたのですが(まず、当時あったんだ?!っていう)、調べてみたらまさに1927年に完成したのだとか。出来立てホヤホヤの劇場でプレミアやってたわけですね〜。そしてチャイニーズ・シアターはトーキー映画の歴史とともに歩んでいるのか、なるほど。

同年代の名作ミュージカル映画は他にも多数ありますが、やはりこの「雨に唄えば」は存在そのものが数段上、別格だなと思うのでありました。

無駄のない脚本

観るたびに同じところで「あれが!ここに!」などと感動している気がする安上がりなわたしですが。伏線というほど仰々しくもないけれど、しかし「そうか!」と思わせてくれる伏線回収的な展開が要所要所にあって見事です。試写会での「音ズレ」から吹き替えを発想するところとか、冒頭の嘘っぱちヒストリーから繋がる「雨」と「太陽」であるとか、最後のカタルシスまでをも「吹き替え」で演出するところだとか、とにかく無駄がなくて完成度の高い映画です。

哀れにもヴィラン的役回りにさせられてしまっている金切り女優リナにしたって、ただおつむが弱いわけではなく、出るところではちゃんと弁護士に相談して法的反撃を取ろうとするあたりなど脚本的に好感が持てます。結局最終的にどうなってしまったのか心配ではありますが。心折れずにモデル業でも続けてくれてたらいいのだけど。

なんでもありのミュージカルパート

本編と地続きのナンバーもあれば、回想に妄想、なんでもありでひたすら豪華。地続きのほうではやはりドナルド・オコナーのボードビル芸人っぷりが凄すぎる「笑わせろ」、舞台装置の演出効果に毎回感動させられる「ユー・ワー・メント・フォー・ミー」、ようやくここでジーン・ケリーがしっかりタップを見せる「モーゼズ」、デビー・レイノルズのワンピース姿が可愛い&ソファー芸で一緒に達成感を味わえる「グッド・モーニング」、そして言わずもがな「雨に唄えば」。特筆すべきものしかない…!

それ以外には、嘘っぱちヒストリーで回想するフィドル芸の「フィット・アズ・ア・フィドル」、あまりにも壮大な妄想&シド・チャリシーが美しい「ブロードウェイ・メロディ・バレー」などなど。「ブロードウェイ〜」では先の「舞台装置」が再登場したり(ベールなのかなんなのか、シド・チャリシーからなびく長〜〜い布のコントロールがすごいですよね)、書き割り的美術が前年の「巴里のアメリカ人」や翌年の「バンド・ワゴン」を思わせるテイストだったり。

最も有名なナンバーは「雨に唄えば」ですが、あのシーンがなくても十分満足できる程度には充実の内容となっているので、タイトルナンバーとはいえ「名シーン」って不思議なものだなあと思いました。ポールに掴まり立ちしてるところだってシーンの序盤ですしね。ああいうのは宣伝部が「この画を売ろう!」って決めてるんでしょうか。ちなみにこのシーンでは雨に牛乳を混ぜているそうな。「七人の侍(1954)」の墨汁入り雨シーンよりもきつそう…。まあ「雨の名シーン」はハイリスクハイリターンということで。

映画史の勉強にも

映画業界のトーキー移行に伴う「犠牲者」と「功労者」のお話。バックステージものは数あれど、この内容を扱った映画って少なくともメジャーどころでは本作くらいなんじゃないでしょうか。しいていうと、本作では功労者のほうにスポットが当たってますが、犠牲者のその後を追ってみると「サンセット大通り(1950)」になるのだろうと思います。行き場を失ったかつてのサイレント名優をめぐるお話です。

サンセット大通り [Blu-ray]

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映画における歌唱シーンの吹き替えというのは今でも例えば「グレイテスト・ショーマン(2017)」の一部など普通にあるようですが、「マイ・フェア・レディ(1964)」で吹き替えられてしまったオードリー・ヘプバーンにしても「屈辱だった」と語っているそうですし役者的にはだいぶ複雑でしょうね。とは思いつつも、圧倒的に質の上がった「吹き替えられた声」のバージョンを劇中で見せられると「声って…大事だなあ…」と納得してしまうんですけども。

サイレントの時代って、撮影時に喋りまくれるのが面白いですね(それをうまく使った悪態ラブシーンは傑作)。映像しか撮ってないからセットも同じフロアに複数組んで超至近距離でやってる、っていうのが「なるほどー」って感じでした。トーキー黎明期のガサゴソ感は、当時の作品を観てるとときたま出会います。ただの紙っきれがやたら重厚な音を立てていたり。そういうところで「トーキー初期特有のアレね」と思えるのは完全にこの映画のおかげです。

ちなみに「踊る騎士」っていう映画、アステア作品にもあります。当時のミュージカル映画タイトルには「踊る○○」がやたら多くて、とりあえずなんでも踊ります。 もうだいぶ記憶薄まっちゃいましたけど、5ヶ月前の自分によればおもしろかったみたいですよ(笑) ジョージ・ガーシュウィンの遺作です。本作でのドナルド・オコナー音楽監督なのでガーシュウィン的立ち位置とも言えますね。ジーン・ケリー主演の前年公開作品「巴里のアメリカ人(1951)」にもガーシュウィンの友人でありピアニスト兼俳優であるオスカー・レヴァントが似た立ち回りで出ております。音楽と映画が一心同体だった良き時代です。

ぜひミュージカル映画の入口に

ことあるごとにアピールしておりますが、本作ヒロインのデビー・レイノルズは、「スター・ウォーズ」のレイア姫でおなじみキャリー・フィッシャーの「お母さん」です。残念ながらお母さんのほうが可愛いです。しかもお母さんのほうが1日長生きです…。いまひとつ観るきっかけに欠けている方は、そんなきっかけ、いかがでしょう(笑)

意を決して本作を観れば、いろんなことが一気に済みます。古い映画ってすごいじゃん! この頃のパフォーマンスすごいじゃん! 映画ってこんな歴史があったんだ! ぜーんぶこれ一本で済みます。なんやかんや本作を存外楽しんでしまったならば、次は「バンド・ワゴン(1953)」がおすすめです! 同じ制作時期で、同じようなバックステージもので、本作にちょっと出てくる脚線美のお姉さんシド・チャリシーがヒロインで、そしてなによりジーン・ケリーと二枚看板を背負っていたタップダンス界のスーパースター、フレッド・アステアが観れます。

肉体派なジーン・ケリーとは対照的なアステアの気品あるダンスに惚れ込めたらあとは簡単、40年代でも30年代でも見放題です! どんどん敷居が低くな〜〜る〜〜です。今よりも圧倒的なパフォーマンスの数々がフィルムに収められているこの時代、ぜひ足を踏み入れてみてくださいね!

(2018年156本目 劇場鑑賞)