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映画「フレンズ〜ポールとミシェル(1971)」感想| B'z「FRIENDS」シリーズの命名由来となったらしい作品

突然ですが、B'zのミニアルバム『FRIENDS III』が昨日12/8にリリースとなりました。1992年と1996年にリリースされた『FRIENDS』および『FRIENDS II』という作品がありまして、今作はなんとその25年ぶりの続編になります。

こちら、冬にぴったりな切なめラブソングばかりを煮詰めたコンセプトアルバムのシリーズで(豆:B'zのバラードでもひときわメジャーな楽曲『いつかのメリークリスマス』はシングル曲ではなく『FRIENDS』収録のアルバム曲です)、特に『FRIENDS II』にはわたし強い思い入れがあるのですが、……といった話はまた別の機会にするとして、強い思い入れがあるわりには何故このシリーズが『FRIENDS』と命名されたのか、その由来は知らなかったしあまり気にしたこともありませんでした。

が、今回『FRIENDS III』のリリースにあたってインタビュー等で「その由来」が繰り返し語られていたんです。ずばり、映画『フレンズ〜ポールとミシェル』から、とのこと。出典として、雑誌『音楽と人』2022年1月号より一部引用しておきましょう。

──ではここで〈FRIENDS〉のコンセプトを振り返ってみますけど、この企画は当初、松本さんが、映画のサントラのようなアルバムを創ってみようと考えたことから始まっているんですよね?
松本(孝弘)「そうですね。どうしてそう思ったんだろうな(笑)。ただタイトルの『FRIENDS』は、映画の『フレンズ〜ポールとミシェル』から取ったんですよ


(『音楽と人』2022年1月号 p9より)
稲葉(浩志)「僕の印象ですけど、最初の『FRIENDS』は、松本孝弘という人のロマンチックな部分が凝縮していると思うんです。それがコンセプトになってる」
──『フレンズ〜ポールとミシェル』が好きって、ロマンチスト以外の何物でもないです。
松本「はははは」
──稲葉さんはその映画、観ましたか?
松本「たぶん当時観たと思うよ」
稲葉「そうですね。松本さんとは、映画の話を事あるごとによくしてますからね。B'zで曲を作る時、よく映画のストーリーからイメージしたりするんですよ。例えば〈LOVE PHANTOM〉の時は〈ドラキュラ〉とか〈インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア〉とか」
松本「ああ、観たねえ」

(『音楽と人』2022年1月号 p11より抜粋)

インタビュアーは編集長の金光裕史氏。ふたつめの抜粋は個人的に好きだった稲葉さんの発言を載せたいだけの引用でした(松本孝弘という人のロマンチックな部分……)。


さて、というわけで、つまりわたしはこの映画『フレンズ〜ポールとミシェル』を観たことがなかった、それどころか20年来のファンなのに知りもしなかったと。これは観なきゃだめじゃんと。そういう事情で、本題が遅くなりましたが『フレンズ〜ポールとミシェル』を鑑賞しました。DVDが安かったので買いました。

B'z「FRIENDS」「FRIENDS II」と、映画「フレンズ」のDVD。
〜B'z「FRIENDS」「FRIENDS II」を添えて〜


主人公は14歳の少女と15歳の少女。そう、ポールとミシェルです。それぞれ家庭の問題を抱えていた子ども二人が偶然出会い、「ちょっと家出」のつもりがなんと家庭を築いちゃったよっていうお話。

前半はあらあらまあまあ微笑ましい小さな恋の物語が繰り広げられるのですが、途中から「えっ、そこに比重置くんすか」みたいな展開になってきて、最終的にはものすごい二次創作の余地を残してジ・エンド。素朴な皮を被っているだけに、いろいろ「えっ」の多い作品でした。

特筆ポイント、まずはアニセー・アルヴィナさん演じるミシェルですかね。赤毛のアンみたいなおさげ髪で登場しておいて、気付けばラックススーパーリッチのアン・ハサウェイみたいになってて、また赤毛なほうのアンに戻ったり、とにかく少女と大人の間をめちゃくちゃ揺れ動くんですよね。サバイバルのスキルも高いし何事にも物怖じしないし、その年齢でそんな…出しちゃっていいんですか…っていう背徳感まで含め、強烈なヒロインでしたね。

そしてそのミシェル14歳に起こる「妊娠出産」というヘヴィなイベント。およびそれがかなりクローズアップされていること。奇妙なバランス感覚の映画だな……と。妊娠がわかる少し前のシーンから彼女が赤ちゃん人形を抱えて寝ている「えっ」や、出産シーンにおいてリアル赤ちゃんとドール赤ちゃんが共存している「えっ」も、とにかく途中からいろんなことが奇妙で。

あとほら、映画『白い馬(1952)』を連想させる「白い馬」とかも美しいけど妙だよなんか……って思ったら、あらびっくり、本作と『白い馬』ってどちらも舞台がアルルのカマルグじゃないですか! 白い馬を見たらカマルグだと思えってことか。


さておき、なんですかね、多分この「妙」な印象はおそらく主人公たちの年齢が低いことから来てるんだろうと思うんですけど。大人だったら変な話ではないものな。ちなみに『未成年』って曲もB'zにあります。

線をひかれた ここからキミ入れないと笑われて
満たないことははがゆいこと 完全になりたい


B'z 未成年 歌詞 - 歌ネット

映画観たあとだとなんだかポール目線の曲に聞こえてきちゃうな。まだ早いと怒鳴られたんだよな彼も。


お話の掴み的にはNetflixのドラマシリーズ『このサイテーな世界の終わり』などと非常に近いので、ティーンの逃避行ものがお好きな方はぜひ。ミシェルの姉さん女房っぷり(歳下なのに)がわたしは刺さりました。で、なんだっけ、そう、25年ぶりとなるシリーズ最新作、B'z『FRIENDS III』もぜひどうぞ。

(2021年210本目/DVD購入)