新型コロナウイルスの影響で映画館へ行けなくなって約3ヶ月。この週末、じつに90日ぶりの再会を果たしてきました。と言っても初めましてのところへ行ったのですが。
記念すべき映画館通い再開の場に選んだのは、池袋にある名画座「新文芸坐」さん。理由は単純、大林宣彦監督の追悼特集をやっていたから! しかも大好きな『さびしんぼう(1985)』と、配信がないため未見だった『野ゆき山ゆき海べゆき(1986)』の2本立て! 行くっきゃない!
6/17(水)~20(土)は<追悼・大林宣彦 ~永遠の魔法~①>
— 新文芸坐 (@shin_bungeiza) June 16, 2020
第一回目は
「野ゆき山ゆき海べゆき〈カラー版〉」
「さびしんぼう」
の2本立て。
毎月監督作品を上映していきます。
※「野ゆき山ゆき海べゆき」の画像が白黒ですが、上映はカラー版です pic.twitter.com/XAB0nmB5ir
初めての新文芸坐さん
勝手にミニシアター的な小さい劇場をイメージしていたのですが、1スクリーンながら普通に大きな劇場で驚きました(通常時の定員は264名。シネコンのそこそこ大きいスクリーンくらい)。狭い箱だとちょっとこわいなあ、と思っていたので一気に安心しました。
気になる新型コロナウイルスへの感染対策は、かなり入念におこなわれていた印象です。各種並び列のソーシャルディスタンス、入場時の検温・消毒、マスク着用の義務付け、そしてもちろん劇場内の座席も昨今お馴染みの1席空けとなっていました。
~ご入場時のおねがい~
— 新文芸坐 (@shin_bungeiza) June 8, 2020
①チケットはそのままお入れください
②入場時の消毒にご協力下さい
③入場時の検温にご協力下さい
④マスクは必ず着用してください pic.twitter.com/TA6v0xeXmI
新文芸坐さんは「2本立て」の映画館。1本ぶんの料金で2本観れます。1本ぶんといっても1,450円! お安い! 飲み物がおかわり自由のドリンクバー式になっているのも嬉しい!
世代的に2本立ては初体験。事前予約もなし、かつ自由席、ということで結構どきどきしていましたが、席さえ確保できてしまえばあとは普段通りの感覚でした。2本目までの休憩時間に席を立てるよう、席確保用の「貴重品ではない何か」を持っていると良さそうです。
再開一発目「さびしんぼう」
2作品が交互に繰り返し上映される形式の2本立て、どちらから始めても大丈夫なので、思い入れのある『さびしんぼう』から観ることにしました。参考までに、9:45からの初回で『さびしんぼう』、休憩を挟んで12:00から『野ゆき〜』です。初回で既に結構な大入りでしたが、『野ゆき〜』から入ってくる人も多く、最終的にますますの大入りになりました。もはや「満員御礼」というワードにネガティブなイメージすら受ける昨今、とはいえ大林監督追悼特集が満員御礼だったのは嬉しいです。
大林監督が亡くなってから2ヶ月ほどで一気に20作以上を観てきたわたし。『さびしんぼう』を観たのは3本目、まだまだ大林ワールドをよく知らない頃でしたが、たいそう心を震わされ、自分のなかで殿堂入りしていました。果たして2度目の鑑賞はどういう印象を受けるのだろう……。その結果はこちら。
2度目の、スクリーンでは初の「さびしんぼう」。やっぱめちゃくちゃヘンテコな映画だな、本当にこんなんで感動したんかいな前回、と自分を疑いながら観てたけど結局最後には目頭が熱かった。はー、すごい。
— 353 (@threefivethree) June 20, 2020
大林映画って本編3分の2くらいは失笑モノで駄作と紙一重なのに残り3分の1は圧倒的名作感でねじ伏せてくるの一体なんなんだ…。20本以上観てきて、未だ驚くわ。
— 353 (@threefivethree) June 20, 2020
要は、記憶していた以上にヘンテコな映画だったと。「名作」イコール「完璧な映画」という思い込みがありますが、大林作品の場合はそういう意味での「完璧な映画」ってもしかしたら皆無に近いのではないかと思いました。主に2つめのツイートで書いているとおりです。決して完璧とは言いがたいのに、なのにどこかで完全敗北してしまう。「負けました。わたしはこの記憶を美化しておきます」そんなふうに平伏してしまう映画、それが大林映画……。
以下、2度目の鑑賞で思ったこと気付いたことなど箇条書き(初見時の感想はこちら)。
初見時から思っていたけどやはりあのズームレンズは性的メタファーにしか見えない。尾美としのりが勝手にやってるだけかもしれないが。
大林作品に通底する「肉体は滅びても〜」が本作ではショパンにかかっているのだと初めて気付き、驚いた。マジか!と叫びたくなった。
長々と見せられるお某タマのくだり、家の小さな画面で観ているぶんにはそこまで気にならなかったけどスクリーンでしっかり見せられると失笑レベルが段違い。こんな映画を……俺は……好きだというのか……???
樹木希林と小林聡美の強烈すぎる親子が台風のように通り過ぎていくシーン、めちゃくちゃ面白いなと思った。あんな短い時間でよくまあこれだけの爪痕を残せるものだ。適時インサートされるおばあちゃんのかるたも最高。
初見時と全く変わらぬ違和感を抱いたのは、お父さんとのお風呂シーン。あそこだけキャラ違いすぎだろ!
大画面でまじまじ見ると、白塗りさびしんぼうのタレ目メイクは藤田弓子の目尻の感じと寄せてるのかなあと思った。けっこう似ている。
今このタイミングで「おっ!」となったのは、パンツ丸見え先生が生徒に『若草物語』を紹介するところ。そうだそういえば出てきてたわ。『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』そろそろ観に行かないとですね。
劇場内は気軽に笑いの起こる雰囲気で、とても楽しく鑑賞できました。90日ぶりの映画館ということ自体には意外と感慨深くならなかったのですが、初めてスクリーンでどーんと見る「A MOVIE」の白枠および文字にはちょっと震えました。「A MOVIE」から始められてよかったです。
あとそうそう、『さびしんぼう』を観終えてトイレに並んでいるとき(なおディスタンスばっちりです)、初見と思われる20代前半くらいの若い男子二人が「マジで面白かった……」「あんな映画作れなくない?!」「作れない!!」って大興奮してるのが聞こえて嬉しくなりました。いやほんと、マジですごいよね大林宣彦。
2本目『野ゆき山ゆき海べゆき』の感想はまた別記事で。
(2020年96本目/劇場鑑賞)久しぶりに劇場鑑賞って書けた!
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