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動画配信サービスで観れる大林宣彦監督作品21本をリストアップ&簡単に紹介します

動画配信サービスで観れる大林宣彦監督作品21本をリストアップ&簡単に紹介します

4月に亡くなった映画作家大林宣彦監督。その訃報に触れるまで大林作品をひとつも観たことのなかったわたしですが、軽い気持ちで手を出してみたところ自分でも驚くほど魅了され、気付けば動画配信サービスで取り扱いのある作品を手当たり次第に全て鑑賞していました。

せっかくなのでこの記事では、各動画配信サービスごとの品揃えをリストアップします。また併せて、配信されている全21作品の簡単な紹介もしていきます。きっとわたしのような人は沢山いるはず。大林作品の世界へ一歩踏み込むお手伝いができれば幸いです。

動画配信サービスで観れる大林作品リスト

配信されている大林作品一覧

注意点など
  • 2020年6月21日時点での配信状況です。
  • 現在Netflixでは大林作品の取り扱いがありません。
    【2020.08追記】『時をかける少女』のみ配信が始まっていました。
  • タイトル横の番号は公開順の通し番号です。抜けている場合は「配信されていない(と思われる)作品」です。なお43が最新で、近日公開予定の遺作『海辺の映画館─キネマの玉手箱』が44となります。
  • 二重丸は各サービスの見放題プラン該当作品。価格表記のあるものは基本料金にプラスして課金が必要な作品です。「一箇所でしか配信されていない作品」には色付けしてあります。
  • 右側の3サービスは利用したことがありません。いずれもFilmarksの動画配信案内に表示されるサービスということで参考までに「取り扱いの有無のみ」調べて掲載しています。前述の色付けにも反映されていません。
  • レイアウトを手っ取り早く保ちたかったため、テキストではなく画像での掲載となりました。何らかの理由で見れない場合、同内容のスプレッドシートをご参照ください。

配信されていない作品

全作品数が43本、配信されている作品数が21本。ということはそうです、配信されていない作品のほうが多い(22本)のです。そしておそらく多くの方がぶち当たることでしょう、よりによって超代表作と言われる『転校生』の配信がどこにもないのです。『転校生 -さよなら あなた-』はセルフリメイクの別作品ですのでご注意を。

Wikipediaのフィルモグラフィを参照してみると、90年代前後の作品は殆ど配信されていないことが分かります。おすすめ作品として挙がることの多い『ふたり』『はるか、ノスタルジィ』などを観る手段がフィジカル以外ないのは悲しいですね。今後増えてくれることを願っています。
【2020.08追記】『ふたり』の配信がPrimeVideoとiTunesStoreで始まりました! これで22本になります。また、PrimeVideoとU-NEXTではドキュメント作品『大林宣彦&恭子の成城物語』の配信も始まりました。

さて、それでは作品の紹介に入りましょう。私見に基づく「こんな順番で観たらいいかも」の並びにしてありますので参考にしていただければと思います。タイトル横の【雑感】はより詳細な感想記事へのリンクです。

目次
  1. 入門編におすすめの作品
  2. 比較的クセのない作品
  3. 優先順位は低めだけど……な作品
  4. 心して観たい戦争三部作
  5. 意外とこれは必見です(番外編)
  6. 無理して観なくてもいい作品
  7. おわりに


入門編におすすめの作品

やはり初期の名作から入るのが、合う合わないは別として間違いないのではないでしょうか。僭越ながらわたしの観た順番でまずは3本、ご紹介します。

「HOUSE/ハウス(1977)」 【雑感】

映画監督デビュー作にして、大林作品との相性を判断するリトマス試験紙のような作品だと思っています。この映画を観て思わず笑ってしまったら「合う」。顔をしかめてしまったら「合わない」。まずはこれから試してみてはいかがでしょう。
出演:池上季実子大場久美子南田洋子 ほか
可愛い女の子たちが「家」に食べられちゃうアイドルホラー。え、意味が分からない? 観たらもっと分からなくなります。

時をかける少女(1983)」 【雑感】

おそらく一番有名なタイトル。ただし、細田守監督のアニメ版みたいなお話を期待していると面食らうこと必至です。かなり変な映画ですが、最後まで観ればきっと大林作品の魅力に触れることができるはず。
出演:原田知世高柳良一尾美としのり ほか
気付いたら同じ一日をループしていた女の子の物語。この映画と原田知世さんに人生を狂わされた人は多いと聞きます。ユーミンの手がけた名曲が主題歌です。

さびしんぼう(1985)」 【雑感】

わたしはこれが決定打でした。不思議な魅力が心に残る映画。ちなみに、『転校生』『時をかける少女』そして本作で「尾道三部作」と一般的に括られます。大林作品を象徴する舞台、広島県尾道市を味わうのにも最適な一本です。
出演:富田靖子尾美としのり藤田弓子 ほか
ショパンの「別れの曲」を口ずさみながら展開していく、SF=少し・不思議な物語。ヒロインの富田靖子さんは一人二役(最終的には四役!)を演じます。


比較的クセのない作品

大林監督の作風に対する免疫がなくても観やすいと思われる作品をいくつか挙げてみます。先に挙げた3本ではなく、このへんからじんわり入っていくのもありかもしれません。

「廃市(1984)」 【雑感】

「はいし」と読みます。大林組が2週間の夏休みを活用して自主製作で撮った映画だそうですが(休みとは)、クセのなさではトップクラス。すごく好きな一本です。大林作品合わないな、と思った方にもこれだけは観てほしいです。
出演:小林聡美山下規介尾美としのり ほか
“日本のベニス”こと福岡県柳川市を舞台に、水の音とともに流れていく静かな物語。聡明で快活なヒロインを演じる小林聡美さんがそれはそれは魅力的。

天国にいちばん近い島1984)」 【雑感】

時をかける少女』に引き続いての原田知世さん主演作。黄金期ハリウッド映画を思わせるロマンチックな音楽、海外ロケの開放的な空気感。ひとり旅がお好きな方なら、きっと気に入る一本です。
出演:原田知世高柳良一峰岸徹 ほか
思いつきで単身ニューカレドニアへ旅立った少女の行き当たりばったりな旅行記原田知世さんによる主題歌も素敵。

異人たちとの夏(1988)」 【雑感】

ずばり泣ける映画です。先に挙げた作品は若者たちが主役でしたが、こちらは大人のお話。夏の夜によく冷えた缶ビールと甘さ控えめのバニラアイスを用意して観てください。すき焼きの準備もしておくとモアベター
出演:風間杜夫片岡鶴太郎秋吉久美子名取裕子 ほか
幼い頃に事故で亡くしたはずの両親とうっかり再会してしまい、いけないと思いつつも幸せの沼にずぶずぶはまっていく大きな子供の物語。お盆のファンタジー

青春デンデケデケデケ(1992)」 【雑感】

大林作品に通底している死の匂いみたいなものが一切ない、珍しく普通に「いい映画」。とても誠実な作りの音楽映画で、とりあえず刺激の少ない作品から始めてみたい方には最適です。※2020年8月にBlu-rayで発売予定!
出演:林泰文浅野忠信 ほか
ベンチャーズに「電気的啓示」を受けた男子高校生たちがバンド活動に青春を捧げるお話。デビューしたての浅野忠信さんが薄幸美少年なギタリストを演じています。

「理由(2004)」 【雑感】

2000年代以降の作品は総じてクセが強いため、「慣らし」としてこれから入るのがおすすめです。後期作品特有の味気ない奇抜さみたいなものを存分に体験できて、かつ物語自体の難解さはミステリー的なそれに収まっているのがおすすめポイント。
出演:岸部一徳 ほか総勢107名
宮部みゆきさんのミステリー小説を映画化したもの。なんといっても出演者の多さが見どころ! ビッグネームがチョイ役でどんどん登場します。


優先順位は低めだけど……な作品

キャリア終盤の三部作はもちろん観ていただきたいのですが、その前にもう少しいろいろ観ておくと「好き」が極まることでしょう。
※年代順に紹介しているため、おすすめ順とはやや異なります。

ねらわれた学園(1981)」 【雑感】

薬師丸ひろ子さんが主演した唯一の大林作品。初見時のわたしは「ジェネリック時かけ』みたいな映画」という感想を残していました。都庁建設前の新宿副都心をロケ地にしているところなど、特撮ヒーローものっぽさもある楽しい一本です。
出演:薬師丸ひろ子高柳良一 ほか
あたしたちの学校が謎の転校生に乗っ取られちゃう! 守らなきゃ!っていう話。何気にユーミンの「守ってあげたい」が主題歌。

「女ざかり(1994)」 【雑感】

吉永小百合さんが主演の作品! といってもきっとタイトルから想像するようなものとは違い、ひたすら食べて喋って怪事件に巻き込まれたりする変な映画です。『花筐/HANAGATAMI』より先に観ておくと、ちょっと楽しいかもしれません。
出演:吉永小百合三國連太郎津川雅彦 ほか
新聞社の論説委員に抜擢されたヒロインが意気揚々と社説を書いたら大問題に発展しちゃって……というお話。キャストの平均年齢はダントツ高め。

「SADA〜戯作・阿部定の生涯(1998)」 【雑感】

黒木瞳さんが昭和のマッドヒロイン「阿部定」を演じた作品。こちらも『花筐/HANAGATAMI』に通じる昭和モダンな世界観の、コケティッシュな一本です。主題歌が妙に耳に残る……。サバダバダ……。
出演:黒木瞳片岡鶴太郎 ほか
昭和の怪事件「阿部定事件」を描いた物語。黒木瞳さんのエロスを堪能せよ。

「転校生 -さよなら あなた-(2007)」 【雑感】

『転校生』のセルフリメイク。配信のみで追っていく場合、これをいつ観るべきか、っていうか観ちゃっていいのか、というのは大きな悩みどころとなりますが、個人的経験から言えばオリジナル未見のまま観て大丈夫です。ただし、ある程度“免疫”をつけてからのほうが吉。
出演:蓮佛美沙子森田直幸 ほか
男女入れ替わり物語。小林聡美×尾美としのりコンビのオリジナル版(1982年)は、新海誠監督の『君の名は。』などにも大きな影響を与えました。このリメイク版では後半の展開が異なります。

その日のまえに(2008)」 【雑感】

泣けると評判の同名小説を映画化したもので、大林作品にしては珍しく正攻法でウェットに泣かされます。とはいえ後期作品のためクセはかなり強め。主要配信サービスだとHuluでしか配信されていないこともあり、わたしは最後に観ました。
出演:永作博美南原清隆 ほか
永作博美さん演じる余命わずかの主人公が、来たる「その日」に向けて着々と支度をしていく物語。遺される夫をナンチャンが好演。


心して観たい戦争三部作

キャリア最終期の骨太な作品たち。直接的に戦争をテーマにしていることから「戦争三部作」と呼ばれますが、大林作品の根底には最初から常に「戦争」が流れているので、あくまで便宜上の呼称です。いずれも3時間近い長尺。心してどうぞ(真面目一辺倒な映画ではないのでご安心を)。

「この空の花 長岡花火物語(2012)」 【雑感】

大林監督のフィルモグラフィーにおいて最も強烈なパワーを持った作品かもしれません。初のオールデジタル製作ということで奇抜に奇抜を重ねた演出・編集の数々、しかしなぜかボロボロ涙が出てくる大団円。ものすごい体験ができます。
出演:松雪泰子高嶋政宏猪俣南 ほか
広島・長崎に先立って空襲の被害を受けた新潟県長岡市を舞台に、太平洋戦争の知られざる側面を学び、平和な未来を強く願う物語。一輪車に乗ったセーラー服ヒロイン、猪俣南さんの怪演が至高。

野のなななのか(2014)」 【雑感】

「戦争三部作」のなかでは最もシンプルに美しい映画、そして個人的にいちばん好きな作品です。読みづらい「なななのか」というタイトルは「七×七日=四十九日」のこと。この時期は生と死の境界が曖昧なのだそうで、つまりそういうお話になっています。
出演:品川徹常盤貴子安達祐実/寺島咲/山崎紘菜 ほか
北海道では玉音放送以降もしばらく戦争が続いていた……というお勉強要素を背景に展開する、生も死も時系列も入り乱れた物語。常盤貴子さんと安達祐実さんのWミューズが最強に眼福です。

「花筐/HANAGATAMI(2017)」 【雑感】

じつはデビュー作『HOUSE/ハウス』よりも前から温められていたという作品が、現時点での最新作。本作のクランクイン直前に大林監督は肺がんのステージ4、余命半年と宣告されます。少なからず「遺作」と意識して撮ったであろう映画が放つ執念のようなものは強烈です。
出演:窪塚俊介矢作穂香山崎紘菜常盤貴子 ほか
太平洋戦争前夜の昭和モダンな世界で繰り広げられる純文学的物語。TOHOシネマズの幕間でおなじみ山崎紘菜さんがこの三部作から次作まで全て出演しています。最後のミューズだったのかも。


意外とこれは必見です

ちょいと一本だけ、番外編。

金田一耕助の冒険(1979)」 【雑感】

明らかにキワモノっぽいのに各種配信サービスで取り扱いのある、つい警戒してしまう一本。ところがどっこい、すっかり大林ファンを自認してきた頃に観るとこれは最高の(セルフ)ファンムービーかもしれません。大林作品にしては珍しく、パロディやオマージュに満ちた映画です。
出演:古田一行/田中邦衛/熊谷美由紀(松田美由紀) ほか
古田一行さん主演の金田一耕助シリーズ番外編として作られていますが、過去作未見でも楽しめました。特筆すべきは若き松田美由紀さんの可愛さ! 必見!


無理して観なくてもいい作品

でも、ここまで来たらもう全部観たくなっていますよね。下に行くにつれ、「無理しなくていいよ度」高めです。

「姉妹坂(1985)」 【雑感】

本作の撮影が延期になったため、出演者のひとり富田靖子さんの冬休みを使って隙間時間に撮ったのが『さびしんぼう』なのだそうです。名作というのは狙って作れるものではないのですね(含みあり)。前半はB級コメディなのに、終盤へ向けどんどん静かになっていく妙な映画です。
出演:紺野美沙子浅野温子沢口靖子富田靖子尾美としのり ほか
血縁関係のない四姉妹の物語。京都舞台という大林作品には珍しいロケーションと、女性陣の魅力を楽しむ作品。特に沢口靖子さんの美人っぷりにはたまげます。

「彼のオートバイ、彼女の島(1986)」 【雑感】

タイトルからなんとなく察せるとおり、トレンディな内容で時代感じまくり、エバーグリーンとは程遠い作品ですが、見どころ語りどころは案外あります。目の保養にはおすすめできます。
出演:原田貴和子/渡辺典子/竹内力 ほか
彼と彼女とオートバイの三角関係、みたいな物語。原田貴和子さん(原田知世さんの姉!)の美麗ヌード、渡辺典子さんの完璧なお顔立ち、そして何より衝撃的なのは若き日の竹内力さん。

「ふりむけば愛(1978)」 【雑感】

こちらもトレンディすぎて失笑の作品、しかし山口百恵さん主演! 無下にはできない……(してるじゃないか)。百恵さんと三浦友和さんは、じつに共演8作目となる本作でいよいよ結婚を決心したといいます。
出演:山口百恵三浦友和 ほか
サンフランシスコで恋に堕ち、日本でまた会おうねって約束したのに……。という物語。ちゃんとサンフランシスコでロケしてます。

少年ケニヤ1984)」 【雑感】

なんと、アニメです。原作(1950年代に人気を博した冒険絵物語だそうです)がもともと大胆な展開であることに加え、アニメでもひたすら実験的手法を試そうとする大林監督の貪欲さが最悪のマリアージュを見せています。いや、楽しいは楽しいですけどね。
声の出演:原田知世高柳良一 ほか
太平洋戦争勃発のタイミングで運悪くアフリカにいた日本人少年の冒険物語。『時かけ』コンビが声優をしていますが、高柳良一さんの棒読みっぷりが……必聴。

以上、21作品でした!


おわりに

先月の10日に訃報を受けるまで、わたしは大林監督の作品をひとつも観たことがありませんでした。亡くなった2日後に初めて『HOUSE/ハウス』から観始め、そして観続け、2ヶ月ほどかけて、ここに挙げた21作を観終えました。そもそもの作品数が多いというのもありますが、ひとりの監督にここまで心酔したのは初めてじゃないかという気がしています。

わたしにとっての大林監督は、亡くなった日に始まりました。これはまさに大林作品共通のテーマ「たとえ肉体が滅んでも、人はいつまでも誰かの心の中に、その人への想いと共に生き続けている(『HOUSE/ハウス』ラストより)そのものかもしれないと考えると、すごく不思議な気分です。

コロナ禍の緊急事態宣言が明け、大林作品を上映している映画館も多数出てきています。そのあたりとも合わせて、ぜひ大林作品履修、お楽しみください。それから、監督の置き土産『海辺の映画館─キネマの玉手箱』が7月末に公開されます! こちらも楽しみに待ちましょう!

関連リンク
  • 映画秘宝 2020年7月号
    • 巻頭特集「大林宣彦映画入門」。内容はちっとも「入門」じゃない気はしますが、一本観るたびに「何かエピソード書いてないかな」と読み返していました。
  • キネマの玉手箱
    • 亡くなった後に発売となった、大林監督最後の著書。ステージ4の肺がん治療を意外なほど「楽しんでいる」様子から始まり、キャリア総ざらい的な回顧録まで、奇しくも監督の生涯を一望できるお得な一冊。
  • Wikipedia - 大林宣彦
    • 世界中で一番アクセスしてるんじゃないか、ってくらい日々舐め回していました。ちなみに、いちばん内容が濃いのは意外にも『金田一耕助の冒険』のページ。
  • 各種動画配信サービス


※本稿は2020年6月21日に投稿したものですが、状況に応じて追記していく予定です。