八甲田山と聞いても酒か演歌かくらいに思っていた、そんなわたしが鑑賞してまいりました、そう映画です「八甲田山」。1977年に公開された作品ですが、今回は4Kデジタルリマスター版として「午前十時の映画祭10 FINAL」にて2019年7月現在上映されております。
どういう映画かといいますと、1902年の日本で実際に起こった「八甲田雪中行軍遭難事件」をベースに描かれた実話もの。これ「遭難」と聞くと無事生還しそうなイメージも受けますが、この事件の恐ろしいところは「210名中199名が死亡した」という事実。ほぼ全滅ですよ。
時代的には日露戦争の直前で、超ざっくり言うと「来たる戦において雪の中でロシア人と互角にやるにはうちら雪耐性がなくて不利だからさ、真冬の八甲田山越えでもやって経験積もうぜ!」っつう思いつきから生まれた、青森の軍隊による「雪中行軍」のお話。つまり戦争ではなく、戦争に向けた訓練。それで精鋭200人失ってるわけ。とんでもない事故です。
なぜそんな悲惨な結果を招いてしまったかというのは、まず第一に雪山という「白い地獄」への危険認識が足りなかった、そうでなくとも抗いきれなかったから。それに加え、被害を最小限に食い止めるための指示系統が乱れるといった人為的問題。指揮には口を出さないという約束でついてきた上司たちが結局いつの間にか仕切り出して…みたいな地獄絵図。
部隊は2つに分けられ、八甲田山を両側から攻めて途中ですれ違おうじゃないかというプランになります。Twitterに流れてくる本作のいろんな感想を見て、てっきり「いい隊長とダメな隊長」の話かと思ってたんですが、実際観てみるとどちらも人間的に素晴らしい隊長さんなわけです。大きく違うのは、片方の隊には前述の通り「上司がついてきちゃった」こと。そして中間管理職の隊長が、上司の無茶振りや理不尽にぐぬぬと耐え、意見を飲み込み、その場その場で上司をなんとか「立て」ながら行軍していこうとすること。最終的にそれが部隊の明暗をはっきり分けることになります。
大人なら少なからず思い当たるところのある映画ですね。今日わたしも出勤早々「うわ今日めっちゃ八甲田山だわ」と思ったものです。それぞれの八甲田山と重ねながら鑑賞いたしましょう。
でもやはりそれ以上に、雪山の恐ろしさというのがこれでもかと分かる映像作品になっておりまして。免許更新のビデオみたいにみんな一度は観ておかないといけないんじゃないかと思いました。登山口でこれ流れてたら嫌ですけど、いやしかし、これを観ずに山と接するなかれです。
キャストもすごい
高倉健、北大路欣也、加山雄三、三國連太郎。え待って、アベンジャーズなの、っていう感。
一応メインキャストは、それぞれの隊長である高倉健さんと北大路欣也さんです。高倉健さんはわかるんですが、若かりし北大路欣也さんのイケメンなこと! あんなシュッとしたイケメンだったのか…! 確かに目元の迫力はそのままだけど、しばらく分からなかった…! このお二方のお芝居が素晴らしいです。そして泣けます。
先日おこなわれたトークショーの映像が上がっており、いろいろと興味深いお話が聞けます。
あとはこの、道中で案内役をつとめる村娘がなんと秋吉久美子さん。か、かわいい。
わたし的「あの人の昔めっちゃイケてたランキング」では今のところ「狂った果実(1956)」の岡田真澄が暫定トップですが、それを揺るがすような「かっこいい…」「かわいい…」発見がこの時代では沢山できて、いいですね。
ぜひ映画館で
この4Kデジタルリマスター版は「撮影監督の木村大作氏が自ら手がけたもの」ということで、ただ綺麗になっているわけではなく、当時の技術では妥協せざるを得なかった部分を限りなく理想の姿《決定打》に近付ける、修復以上の「ヴァージョンアップ」がおこなわれているそうです。
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169分と長尺の映画ではありますが、実際に真冬の八甲田で生死の境を彷徨いながら3年間もかけて撮影されたという映像の力は並じゃありません。一度見始めたらもう、足を組み替え腕を組み替え、時にはうわ〜〜〜〜と口を手で覆いながら最後まで釘付けとなること必至。是非ともこの上映期間中に映画館にて、逃げられない環境で、少しくらいはトイレも我慢しながら、冷房が効きすぎていたら4DXだと思って*1、「体感」されることをお勧めいたします。
ちなみに、観終わって最初に思ったことは「温かいおうどんが食べたい…」でした。
(2019年57本目/劇場鑑賞)
TOHOシネマズ南大沢にて鑑賞。ここのプレミアスクリーンが満席状態なの、初めて見ました。若い人も結構いたような。午前十時広報部のマメな宣伝が効いているのか、宣伝なんてなくてもみんな待ちわびていたのか。いい景色でした。劇場内が明らかに弱冷房だったのは意図的な気がする(笑)
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