353log

主に映画の感想文を書いています

メリー・ポピンズ リターンズ(2018)|やっと会えたねエミリー・ポピンズ

f:id:threefivethree:20190203150836j:plain 名作ミュージカル映画メリー・ポピンズ(1964)の半世紀以上ぶりとなる続編。前作は最近までちゃんと観たことがなく、「午前十時の映画祭」のスクリーン鑑賞が初見という幸せな体験をさせてもらいました。 どちらかというと併せて観たウォルト・ディズニーの約束(2013)をすごく気に入り、ことあるごとに当ブログの中でもそのタイトルを出しています。 邦題からはピンときませんがこれは映画「メリー・ポピンズ」制作秘話の映画であり、ウォルト・ディズニーの伝記映画であり、原作「メアリー・ポピンズ」著者トラヴァースの物語でもあるという盛り沢山な作品。今回「リターンズ」の予習もしくは復習として前作をご覧になる場合は、併せてのご鑑賞を強く強くおすすめいたします。

思い入れは吹雪とともにやってきた

続編、もちろん楽しみではありましたが、より特別に楽しみになる出来事が起きました。それは、昨年11月に決行した初めてのニューヨークひとり旅(旅行記連載中。落ち着いて書ける時間がなくてまだ微妙に終わってませんが……)。

f:id:threefivethree:20181125082943j:plainf:id:threefivethree:20181216180938j:plainf:id:threefivethree:20181125041341j:plain

米国では昨年12月の公開だった「リターンズ」。訪米した11月下旬はちょうどプロモーションの時期で、タイムズスクエアのサイネージ、雑誌の表紙、タクシーの広告と、ニューヨーク中がエミリー・ブラントのポピンズに溢れていたのです。実質、わたしの初NY旅はポピンズに見守られていたと言えるでしょう。

初めてマンハッタンに降り立った瞬間、突然の吹雪に歓迎されたわたし。そういえばポピンズは嵐とともにやってくるんだったよなあと思い出し、もしかしてあれは……、なーんてことを思ってみたり。そんなわけでだいぶ思い入れ深く楽しみな作品となったのでした。

以下、音楽関連のネタバレ要素はありますがストーリー上のネタバレはこれといってありません。というかストーリーにほぼ触れてません。

やっと会えたねエミリー・ポピンズ

2/1、公開初日のレイトショーで待望の鑑賞。始まるまで、というかエミリー・ブラントの二代目ポピンズがスクリーンに登場するまでえらく緊張。観劇で推しの登場シーンを今か今かと待つ気分でした。だってそれこそ上の写真の「VOGUE」とか、額に入れて部屋に飾ってますから。憧れのエミリー・ポピンズですから。緊張しないほうがおかしい。

f:id:threefivethree:20181216181318j:plain

VOGUEでもフィーチャーされていたリン=マニュエル・ミランダ演じるジャック(前作でディック・ヴァン・ダイクが演じたバートの見習い、だそうな。ぶっちゃけバートだと思って観てました笑)のナンバー「(Underneath the) Lovely London Sky/愛しのロンドンの空」から幕開け。これがニクくてですね。真っ先に「あっ、あの曲!」って思ったんですけど、いやいや、新曲なんですよ。

(Underneath the) Lovely London Sky

(Underneath the) Lovely London Sky

どういうことかっていうと、この曲のフレーズはずっと予告編やテレビCMで使われておりまして。知らず知らずのうちに染み込んでるんですね。そのフレーズにいきなり歌詞がついて歌われるもんだから、「この曲知ってる!」っていう、スタンダードナンバーを初めて元の映画で聴いたときのような感覚になってしまったわけです。狙ってかどうか知りませんが、これうまいなあと。

ついでに言うとこの曲の冒頭、ストリングスのトレモロだけ聴いたら完全に前作の序曲ですからね。ハッとしてからの、なんだ違う曲かとちょっとがっかりしてからの、いや知ってる曲だ!と思ったら新曲、っていう。耳馴染みのある新曲ってすごい。

さてさて、そこから今度はタイトルバックで本作の「序曲」がぶっ込まれるわけですけど、それがものすごい往年の名作感ある音質で、泣きました。ちょっと音割れしてて、べったりとモノラルで、油絵タッチのアニメーションがスクリーンいっぱいに広がってて。本日公開の新作映画見てるんだよな???と一瞬疑いたくなるような、「午前十時の映画祭」感でした。

Overture

Overture

正直ここがピークと言っても間違いではないかもしれないし、それでもいい。映画でもコンサートでも、「エモっ………」ていう瞬間が、目頭に訴えかけてくるような瞬間が一度でもあれば満足だと思うわけです。

で、まあ、やっとエミリー・ポピンズのお出まし。凧かよ!ってのと、前作のちょっとチープな合成感をそのまま残してるのがなんともシュールさ増し増し。ご挨拶代わりのお風呂シーンはやっぱりうきうきしちゃいます。CMでも使われてたあのシーン、撮影方法が話題になってたせいで(落ちた)(落ちた)って感じでしたけど(笑)

f:id:threefivethree:20190203163959j:plain:right:w180子役たち、可愛かったなあ。女の子もいいけど、特に末っ子が、めっちゃ悪い顔するんですよね。将来有望、もしくは真っ暗かも(なんてことを)。ジョエル・ドーソン(Joel Dawson)くん、覚えとこう。

全体的に、数ある「前作のあのシーン」にそれぞれ対応してるようなシーンが多くて、お風呂シーンはもちろん「お砂糖ひとさじで」のシーンだし、器の中に入るシーンは絵の中に入るシーンだし(陶器の足音がすごい好き)、「ノートルダムの鐘(1996)」を観た直後でタイムリーだった〝トプシー・ターヴィー〟なシーンは笑って浮いちゃうシーンだし、点灯人たちのシーンは煙突掃除人たちのシーンだし、といった具合。

「思ったより長いな」ってなるアニメーション融合シーンの長さ具合も同じだし(融合クオリティが60年代止まりな感じも同じ)、なんなら「そこそこ」な面白さってとこまで同じ。前作、わたしの感想としては別にそんなすごい面白い!!ってわけじゃないんですよね。そこそこなの。そのそこそこ感まで同じで。

続編なのにひたすら踏襲してる印象を受けて(決して悪い意味じゃないですよ)、完全新作の続編だけど限りなくリメイクっていう、それがおもしろいなあと思いました。

マーク・シャイマンさま、流石のお仕事

「ヘアスプレー(2007)の音楽がすんばらしく良かったことで信頼度高めなマーク・シャイマンさんが今回の音楽担当。そう、シャーマン兄弟の曲続投ではないのです(名前は似てるけど)。

実際どうなんだろう、なんだかんだ前作の曲も使われたりするのかな?なんて思ってましたが、基本的には新曲のみで構成され、かつ、うま〜〜いこと、ニク〜〜いことチラッチラッとさせてくれる塩梅が、最強に愛を感じます。あそこで2ペンスとかさ〜〜泣くじゃん〜〜。なぜかサントラに入ってないけど〜〜。

わたし「ヘアスプレー」で特に好きなのが「(You're) Timeless to Me」や「Welcome to the 60's」で、何が好きってその「往年のミュージカル音楽感」なんです。

いろんな要素が絡まってはいるんですが、なんといってもストリングス! 上の動画でいうと「Timeless〜」なら2:52あたりから、「Welcome〜」なら4:27あたりからのやつですね。こういう「あー、なんか、っぽい!!」なストリングスアレンジがすごく巧いお方だと思ってたんですけどその思いが俄然強まりました。

Nowhere to Go But Up

Nowhere to Go But Up

まさにその同じテイストでアレンジされてるのがこの曲! あまりに平和な映像で気が散って曲をちゃんと聴いてませんでしたが改めてサントラで聴いてみたら「これがマーク・シャイマンか!!!」とめちゃくちゃ膝打ちしました。セリフ寄りの歌わせ方を多用する感じとかもすごく共通点あります。ただちょっと、iTMSの試聴範囲がネタバレだわ。

じつは今回そこまで音楽がストライクだったわけではなくて、でもあの序曲は欲しいわ〜と結局サントラ丸ごとiTMSで買ったんですけど(マーク・シャイマンのサントラ買う率高い…)、繰り返し何度も聴いてたらいや〜、すごくよい。おもちゃ箱ひっくり返し系も超ゴキゲンだし、上述したところの「おそらくシャイマン節」な曲たちも素晴らしい。曲をしっかり入れた上でもう一度観に行ったらまただいぶ違いそうです。

他にも、「Trip a Little Light Fantastic/小さな火を灯せ」はあれですね、「マイ・フェア・レディ(1964)」の「With a Little Bit of Luck」みたいな歌い方!

雨に唄えば(1952)」の「Make 'Em Laugh」を真っ先に思い浮かべるような古き良き「効果音」とかもね、たまらんですね。

あとはやっぱり、エンドクレジット最後の「あの2小節」ですかね。なんて魔法のかかった2小節なんだろうと思いましたね。映画館で観終わったあとにあそこの部分だけ歌ってる人がいて、いいわ〜〜ってなりました。サントラで何度聴いてもニヤけちゃう。

とりあえず、サントラのほうも大変満足度高いですのでぜひiTMSなり盤なりでお買い求めいただければと思います。よってiTMSのリンクばかり執拗に貼りました。1ポチッとマーク・シャイマンしましょう。

その、お話のほうはだいぶツッコミどころも多いといいますか、ヌルい脚本な感は否めないんですけど、細かいことはいいんですよ。この時代によくぞ、よくぞこんな平和な映画を作ってくれたなと。大量の人間が風船でプカプカ浮かんでるだけのシーンに何か深読みをする必要はないんですよ。それって逆に難しいけど、あれを純粋に楽しめる心を持たなきゃとは思いました。

まあ、あとはメリー “BMX” ポピンズ案件に耐えられるかどうか。あれは要審議ですね。笑ってはいけないメリー・ポピンズですよ。ふはっ、てなりましたけどね。

54年ぶりの続編をリアルタイムで観れるなんてすごいラッキーなことだと思うのでぜひ、劇場でゆるりとお楽しみください。今日の新作は半世紀後の名作かもしれません。

(2019年11本目/劇場鑑賞)

メリー・ポピンズ リターンズ(オリジナル・サウンドトラック)(英語盤)

メリー・ポピンズ リターンズ(オリジナル・サウンドトラック)(英語盤)

VOGUEの和訳記事が上がってた!!

【告知】今日すべきことは今日中に

f:id:threefivethree:20190203184104j:plain:right:w180「リターンズ」が2月公開なことを踏まえて「メリー・ポピンズ」の音楽を取り上げることにした、わたくし353所属のアマチュア吹奏楽「町田・相模原イーストメリーウインドオーケストラのコンサートが2/16(土)にございます。

本来ロイヤルドルトン・ミュージックホールで開催すべきでしたが、小田急線「相模大野」駅からすぐの相模女子大学グリーンホールという会場での開催となります。いきものがかりが初めて3人で路上ライブをやった駅、椎名林檎バート・バカラックのコンサートを観にいったホールです。

お近くの方、ご興味持たれた方、入場無料・チケット不要ですのでお気軽にお越しいただけたら嬉しいです。突然の広告記事でした。失礼しました。