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海外ドラマ「SMASH」シーズン1 雑感/スピルバーグ製作総指揮〈マリリン・モンローの人生を題材にしたミュージカル〉の製作舞台裏を描くドラマ

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珍しく長いタイトルを付けてみましたが。これくらい書かないと全く引っかかってこない気がする、このSMASHという作品。

ニューヨーク・ブロードウェイを舞台にしたショウビズ界の物語、かつ安定と信頼のマーク・シャイマン(「ヘアスプレー」「メリー・ポピンズ リターンズ」etc...)が音楽担当ということで以前からプッシュされておりまして、ようやく観ることができました。製作総指揮スティーヴン・スピルバーグ、というのもポイントですね。

どんなドラマか

ブロードウェイにおける新作ミュージカルの企画立ち上げから実現までを、制作側と出演者側両方の視点からリアルにじっくりと描いたドラマです。非常に好みどストライク!

ストライクな要素としてはまず、繰り返しになりますがブロードウェイミュージカルの製作舞台裏を描いた内幕ものドラマであること。それから、劇中で製作されているのがマリリン・モンローの人生を題材にしたミュージカルであること。加えてもちろん、ニューヨークものであること。

さらには、端役まで魅力的なキャストの面々。このミュージカルを実際に観てみたい!と思わせる良質な劇中歌の数々。さまざまな「好き!」が合わさって「超好き!」な、1シーズン15話ノンストップでいける作品でございました。

内幕ものとしての面白さ

1950年代くらいまでは特にバックステージものの映画が非常に多く、わたしの好きなフレッド・アステアの作品なども大半がそうであると言えます。今でも例えば「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットしたように、ショウビジネスの表と裏、光と影、みたいな話は単純に面白いんですよね。

本作を一言であらわすならWikipediaに書いてある『製作』の項目を実写化したやつ」かなと(一言じゃない)。Wikipediaの「製作」んとこって大抵、完成に至るまでの紆余曲折が書いてありますよね。映画の場合なら、途中で監督が変わったり、パイロット版に出ていた役者が継続起用されたり、かたや降板したり。その紆余曲折を実際にじっくり見せてくれるのが「SMASH」というドラマです。

また、ミュージカルという舞台作品の製作過程についても、「RENT」などでよく聞く「ワークショップ」ってどういうものなのかとか、プロデューサー、演出家、脚本家、作曲家といった各ポジションの仕事、出演するキャストの選び方、そしてやはり紆余曲折、等々とにかく勉強になり、かつ面白い! セットも何もないスタジオでの日々を経て、断片的な楽曲や演出の試行錯誤を経て地方でのプレビュー公演に至る道のりは感動的です。

以前アニメの「アラジン」を観たとき、特典映像にブロードウェイ版のメイキングが入っていました。企画当初は非現実的と言われたり、プレビュー公演でかなり手直しをしたりと、今や泣く子も黙る大人気ミュージカルである「アラジン」もこんなに産みの苦しみ、紆余曲折があったのだなあと意外に思ったのを覚えています。ラーメンズ小林賢太郎氏もひたすらひたすら悩んで考えてこねくり回すと言っていましたし、その道は避けて通れないのでしょうね。

そういえばアステアの自伝でも、キャリア前半のブロードウェイ時代には「演っては直し、演っては直し」な試行錯誤の日々が書かれていました。

この「SMASH」を観ていて何度も連想したのが、1953年公開「バンド・ワゴン」という大好きな映画です。先に挙げたフレッド・アステア主演のバックステージものですが、集団芸術としてのミュージカル作品を作り上げていく「製作の過程」に(当時の同じような映画よりも)比重を置いており、本作に近いところが多いです。

「バンド・ワゴン」の好きなシーンで、プレビューが散々だった日にキャストたちがホテルの一室に会してヤケ酒パーティーをするというのがあるんですが、本作にもまさに同じようなシーンがあって。みんなライバル同士ではあるけれど、時々ちょっと共鳴して休戦する感じ、それがどちらの作品にも共通していて。こういうところがわたしのストライクゾーンなのかなと。

男女の脚本&ソングライターコンビが出てくるのも共通点です。ソングライターコンビもので有名な「ワーズ&ミュージック(1948)」や「土曜は貴方に(1950)」などはいずれも男同士ですし、男女ってちょっと珍しいかも。

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「バンド・ワゴン」より、ソングライターコンビの夫婦

わたし右側のオスカー・レヴァントっていう人が好きなので、どことなく雰囲気の似た「SMASH」のトム(クリスチャン・ボール)は真っ先にお気に入りのキャラクターになりました。

ちなみにこのオスカー・レヴァントは「ラプソディ・イン・ブルー」などで有名な作曲家ジョージ・ガーシュウィンの友人で、なんと彼自身もプロのピアニスト。ガーシュウィンの伝記映画「アメリカ交響楽(1945)」では本人役として登場、名作「巴里のアメリカ人(1951)」でもピアニスト役で登場します。

だいぶ話がそれてしまいましたが。MGM黄金期に多く作られたようなショウビズ内幕ものが好きな人は「SMASH」好きだと思いますし、「SMASH」好きな人は逆もしかりです! ぜひお試しください。

ついでに、「コーラスライン」のキャストオーディションをドキュメント作品にした「ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢(2008)」もおすすめです。

SMASH」の序盤、オーディションのくだりはこのドキュメントで見れる光景そのままです。

マリリン・モンローという要素

わたしはマリリン好きだったのですごく入りやすかったですが、もしかすると「マリリン・モンロー、名前しか知らないよ」っていう人からすると入りにくく思える要素かも。

劇中でよく登場するのは「お熱いのがお好き(1959)」と「七年目の浮気(1955)」でしょうか。それと「紳士は金髪がお好き(1953)」の三作品しかわたしも観ていないのですが、十二分にマリリンの魅力は理解できました。

「お熱いの〜」は第1話でカレンたちが“レッスン”してたやつ。「七年目〜」は一番有名なスカートまくれるやつ。「紳士〜」はこれも有名なダイヤモンドのやつ。アンディ・ウォーホルの絵で見るようなケバめのマリリン像とは全く違う、艶やかで魅力的なマリリンをいずれも堪能できます。あとはやっぱりこれかな!*1

これは知らないとなんのことやらなので(笑) あとはWikipediaを一読しておけば大丈夫です。マリリンにしろジュディ・ガーランドにしろ(「虹の彼方へ」始まりなんですよね本作)、ハリウッドの餌食になったような女優たちというのは、あくまで今だからですが不思議な神秘性があって惹かれます。

奇しくも?マリリンの命日はこれを書いている3日後の8月5日。何か彼女についての本でも読んでみようかなという気分です。

魅力的なキャストと楽曲

本作はキャストがほんっと、好き! 隅々までいいキャラクターだらけで人間ドラマも濃く、見始めてしまえばハマれる率かなり高いと思います。

わたしが特に好きだったのは先述の作曲家トム(クリスチャン・ボール)、相方のジュリア(デブラ・メッシング)、それから演出家デレク(ジャック・ダヴェンポート)あたりですかね。デレクは性格云々よりも「エイダン・ギレン(リトルフィンガー@GOT)に似てる!」っていう第一印象で好いてました(笑)

そして改めましてマーク・シャイマンによる珠玉のミュージカルナンバー。すばらしい。すばらしい。ほんっとにこの方のお仕事は間違いない…。必ずサントラを買ってしまう…。

ベタベタにコッテコテなマーク・シャイマンが好きなので、このへんがお好きです。でもサントラだけでは補完できない曲が結構あり残念。米国版AppleMusicだとかなり揃うっぽいんですけどね。

本作のキャストはお芝居もさることながら、ブロードウェイ出身でべらぼうに歌の上手い人たちばかり。それでさらに楽曲もべらぼうに良くて、こんな絶品のミュージカル作品が架空でいいのか?! やってくれよ?! 映画でもいいから?! という思いでいっぱいです。フルでしっかり観たい…。

シーズン2もあるのですが

残念なことにシーズン2で打ち切りということで、少々寂しい気持ちを抱きながら観なければなりません。また、全部見終わった頃に書きます。

なお今回の視聴方法ですが、いきなりDVD買いました。というのも、PrimeVideoにもあるんですけど課金アイテムのためDVD買ったほうが安いという。手元に置いておいて全く損のない作品だと思いますので気になる方はぜひBuy Nowです。

以上、さらっと書くつもりだったのにどこがだよ、っていう「SMASH」シーズン1雑感でした。

*1:貼った動画が消えてて何貼ったか思い出せないんですけど、消去法でいくとHappyBirthday? 合ってる?(2022年のわたしから2019年のわたしへ)