コーラスライン(1985)|ワンシチュエーションで見せる、ショウビジネスの裏の地味な密室劇
先日の「ニューイヤー・ミュージカル・コンサート2019(感想記事)」きっかけで観ようと思った作品のひとつです。
概要
ニューヨークはブロードウェイ。オーディションのため劇場に集まったダンサーたちの長い一日を描く。
まさかの密室劇
クライスラービルからゆっくりとロックフェラーセンターに、ラジオシティの上空を抜けてブロードウェイへ、なんていう空撮のオープニングで興奮したものの、いざカメラが劇場に入ってしまったらもう最後まで出ません。あっ、もしかしてこのシチュエーションのまま終わる映画なんだ?!と気付いたのはしばらく経ってから。思っていたのとだいぶ違う映画でした。
タイトルになっている「コーラスライン」というのは上の写真でも見えている白い線のことで、メインキャストでない「コーラス」の人たちはこの線から前へ出ちゃいけないのだそう*1。そんなわけでつまり、最悪クレジットもされないようなバックダンサーの座を掴み取るため集まった夢追い人たちの物語なわけです。
はじめはステージ上を埋め尽くすほどだったオーディション参加者が15人ほどに絞られ、選考は進んでいきます。ただし踊るわけでも歌うわけでもなく「君たちの話を聞かせてほしい」と演出家のザックは言います。戸惑いながらも一人ずつ自分の話をしていくという、それだけの映画。完全に密室劇であり会話劇。意外!
初めて顔を合わせた人たちが狭い空間で濃い一日を過ごして再び散っていく密室劇というと、すごく共通性を感じた作品が「十二人の怒れる男(1957)」です。
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展開としては「オーディション開始から結果発表まで」を描いただけという山のなさそうなストーリーですが、一人一人のキャラクターを見てきた後だとラストの結果発表もいろんな感情を抱くことができて、ちゃんとクライマックスになるんですね。ザックの台詞「落とす前に言っておきたい。本当は全員採用したい」が観客の気持ちを代弁しています。
ブロードウェイ・ミュージカルという華々しい世界を題材にしながらもこれほど淡々としたワンシチュエーションの劇に仕上げる斬新さ。おもしろかったです。
ただしキャシーてめえはダメだ
先日のコンサートきっかけで大好きになった曲「What I did for love/愛した日々に悔いはない」。この曲の扱いはだいぶ物足りなくて拍子抜けしました。
もともとブロードウェイ・ミュージカルの作品だったものを映画化した本作。なんでも舞台版と映画版ではこの曲のポジションが全く違うのだそうで、舞台版が「愛した日々=役者になるため懸けてきた人生」なのに対し、映画版は「愛した日々=惚れた腫れたの日々」になっているのだとか。そりゃ、っていうかなんでそんなことを。 舞台版と映画版の違いについて、こちらの記事で詳しく解説されています。
それから、映画版でこの曲を歌うキャシーっていう「元スター」がですね、だいぶ感情移入の難しいキャラクターでして。上の記事にも書かれてますけど、オーディションに遅刻&横入りしようとしてる時点でもう完全にアウトでしょっていう。この人、必要あった???っていう。舞台版では違う人が歌う曲らしいので、なおのこと「てめえ」感が強いのであります。非常に、舞台版が見とうございます。
ちなみに「What I did for love」、iTMSで買った「glee/グリー」版の音源をずっと聴いていてそれがたまらなく好きなのですが(何十回聴いても涙腺が緩む)、じつは最近gleeを観ているので動画はちょっと貼れません。まだそこまで辿り着いていない。ネタバレ見たくない。
iTMS貼っておきます。超おすすめ。One
一般的に有名なナンバーが「One」という曲だそうで、えー知ってるかなと思いながら観ていたら、余裕で知ってました。これか。
イントロめっちゃ知ってる〜〜〜からの歌い出しもめっちゃ知ってる〜〜〜っていう、要はCMとかでお馴染み系。クセになりますね。このフィナーレの前にリハーサルの場面もあって、何度も繰り返しながら仕上がっていく様が感動的でした。全編通してダンスはかなり見応えあります。
「What I did for love」に思い入れがありすぎたせいでそこだけ少々んーーーとなってしまいましたが、それを除けばとてもいい映画でした。あと、練習着のハイレグなレオタード姿&いかにもな80年代のシンセドラムを多用したサウンドトラックに時代を感じる映画でした。
(2019年6本目)
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(追記)観ました。すごく良かったです。
*1:「線をひかれた ここからキミ入れないと」なんていう歌詞が思わず頭に浮かぶB'zファンのわたしです。