2019年の映画始めは全く知らない作品にしました。今年もお世話になる「午前十時の映画祭」にて、ポスターの不思議なビジュアルに惹かれてチョイス。
どんな映画か説明するのはなかなか難しい本作。一応ジャンルはコメディらしいですが、腹を抱えて笑うようなコメディではなく、品があって静かで圧のない、クスッとできる程度のお話。そして後味はややファンタジー。
ざっくり言うなら
姿は紳士、中身は子供。
世間離れした庭師が大統領候補にされてしまう不思議な喜劇。
あらすじ
身寄りがなく、後見人の主人のもと中年までの長い人生を屋敷から一切出ずに過ごしてきた男チャンス(ピーター・セラーズ)。読み書きもできず、外の世界はお気に入りのテレビで知るのみ。主人のお下がりである仕立ての良いスーツを着て庭仕事に精を出すのが彼の楽しみだ。しかし主人が死去したことにより、彼は長年住んだ屋敷から出なければならなくなる。
そんなチャンスに新たな居場所を与えたのは、財界の大物ベンジャミンとその妻エヴァ(シャーリー・マクレーン)。ひょんなことから彼らの大邸宅に住まうこととなるが、その落ち着いた物腰と品格のある身なり、深みのある(ように思える)物言いなどから次第に大物財界人だと誤解されてゆき、大統領と会談するまでになった。
大好きなテレビにも出演してすっかり人気者となったチャンス、改めチャンシー・ガーディナー。この名前は、「ガーデナー(庭師)のチャンス」と言ったのを聞き間違えられただけの名前だ。本名ではないから世間や政界がいくら調べても彼の素性は出てこない。結局彼は正体不明のままついに大統領候補へと上り詰める。
身なりは大事
じんわりおもしろい、いい映画でした。なんとなく勘で今年の一本目に選んで正解でした。
チャンスが大統領から経済の冬について問われ、「春の前には必ず冬があります」とただ庭いじりの話を返しただけのところからあれよあれよと高尚な勘違いをされ続けていく流れはすごく上品なコメディ。悪人はおらず、ありがちな「ボロが出る」展開もなく、年相応の教養がないチャンスを滑稽に見せる手段は決して取らない作りがとても好きです。
とはいえ貧相な身なりをしていたらこの展開にはならないでしょうから、身なりと振る舞いは大事ですね。育ってきた環境や学歴に関係なく、身なりは年相応にしておかないといけないなと。そんな感想??って感じですが。ダブルスーツのチャンス格好良かったです。
シャーリー・マクレーンを銀幕で
本作、シャーリー・マクレーンが紅一点的に登場します。当時45歳ぐらいでしょうか。とろんとした目元は若い頃からそのままに魅力的でした。
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ツァラトゥストラ
戯曲「ツァラトゥストラはかく語りき」をベースにした話だそうで、というかシュトラウスの同名曲しか知らなくて、「ツァラトゥストラ〜」が戯曲だったことを初めて知りました。曲のほうも「2001年宇宙の旅(1968)」よろしく序盤で流れます。初めて外の世界を見たチャンスと、グルーヴィーにアレンジされた同曲。絶妙なマッチ感です。ワシントンD.C.までの一本道、中央分離帯を歩くチャンスを望遠で捉えたシーンが印象的。
映画の基礎教養ツートップといえばシェイクスピアなどに代表される戯曲と、それから聖書。久しぶりに町山さんの解説動画を見ていたら、とっておきの聖書ネタで会場を大いに盛り上げていました。
「だから○○なんですよ」で湧く終盤の町山ワールドは流石の一言です(笑)
狙わないほど愛される
自然体の人を見るにつけ羨んでしまう狙いまくりのわたしですが、チャンスはまさに自然体の人。何も狙っていないから周りに愛されてどんどん上り詰めていく。笑わせようとしていないから観客はクスッとしてしまう。原題の「BEING THERE」は「そこにいるだけで」っていう意味になるんでしょうか。理想的かつ程遠くて、とても新年の抱負にはできません。
というわけで新年初映画、良いスタートを切ることができました。今年もたくさん観てたくさん書いていこうと思います。
(2019年1本目/劇場鑑賞)
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*1:ヘプバーンとダブル主演の「噂の二人」、同性愛を題材にしたダークな作品なのですがおすすめです。