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主に映画の感想文を書いています

映画「アンモナイトの目覚め(2020)」感想|同性愛というだけで類似作品になってしまうのだろうか、と自問自答ぶつぶつ。

映画「アンモナイトの目覚め」ポスター現在公開中の映画アンモナイトの目覚め』を観ました。『21ブリッジ』を観るつもりで映画館へ向かっていたのだけど到着がだいぶレイトなショーになってしまったのでしっぽりしてそうな本作に変えたというどうでもいい経緯あり。

さてこの映画、うつ病を患った上流階級の女性と古生物学者の女性が心を通わせていく物語で、主演はケイト・ウィンスレットシアーシャ・ローナン1800年代前半を生きた実在の古生物学者メアリー・アニングをケイト・ウィンスレットが演じています。非常に重要な発見をした学者でありながら女性という理由で論文などの出版が許されず、彼女についての記録は少ないそうです。

対してシアーシャ・ローナン演じるシャーロットはフィクションの人物。メアリーは生涯独身だったようですが、男性社会で抑圧されてきたメアリーがもし誰かを愛したとしたらそれは女性であった可能性も十分にある、と自身も同性のパートナーを持つフランシス・リー監督は考え、シャーロットというキャラクターを創作したそうです(参考:映画公式サイトのプロダクションノート「思いがけない誕生秘話」)。

ちなみにわたしの場合この予備知識は知らずに鑑賞。てっきり100%フィクションだと思い込んでいたので、主人公が実在の人物かつ実名だったことを鑑賞後に知って驚きました。

それからこちらはうっすら噂に聞いていた件ですけども、なるほど確かに『燃ゆる女の肖像(2019)』と似ている。『燃ゆる〜』を先に観ていたため、少なからず「後発の類似作品」と見てしまったことは否めませんでした。キャストの知名度では本作のほうが断然メジャーなだけに、いかんせんタイミングが惜しいです(ただ、それ以外の「(わずかに)超えられなさ」も正直あるとは感じましたが)。

しかし、今書きながら思いましたけどあれですね。シチュエーションや映像の質感などトータルで似ているとはいえ、「類似作品」扱いされる最たるポイントが「女性同士の恋物語」だとするとそれってどうなんだという気もしてきました。異性愛だったら単なるロマンス要素としてスルーされるところを、同性愛ってだけで一気に記憶のデータベースが『噂の二人(1961)』まで遡って「類似作品」にカテゴライズしてしまう感じ。『82年生まれ、キム・ジヨン』最後の一行みたいな、「そういうこと」なんだなと気付かされちゃう感じ。ううむ、ふくざつ。

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オードリー・ヘプバーンシャーリー・マクレーンのW主演で1960年代に同性愛を扱った作品『噂の二人』。


まあここはともかく、メアリー・アニングという“Hidden Figures”を知れてよかったとポジティブに考えておくことにします。

(2021年62本目/劇場鑑賞) 最後に2点。エンドクレジットのカリグラフィがおそらく手書きで素敵だった! もいっちょ、メアリーのお母さんがいつも磨いてる置物から『女王陛下のお気に入り(2018)』のウサギを連想した(なんだっけ〜〜って思い出せずモヤモヤしてる人がきっといるはず!)。