ダーティハリー(1971)
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あらすじ
ハリー・キャラハンはサンフランシスコ警察の刑事。「ダーティハリー」といういささか不名誉な呼び名は、汚れ仕事を多く回されるがゆえである。この頃、連続殺人をほのめかす愉快犯「スコルピオン」が警察を騒がせていた。捜査から取引まで、当然のように最前線に立たされるキャラハンだったが、被疑者を守り被害者を守れない「法」への不満が次第に強まっていく。
ゾディアック事件から生まれたヒーロー
この映画を意識したきっかけは、つい最近観たデヴィッド・フィンチャー監督作品「ゾディアック(2007)」。1970年前後に発生して未だ未解決の「ゾディアック事件」をもとにした映画ですが、こちら「ダーティハリー」はまさにその事件が起こっていたさなか、果敢?にもそれをモデルとして作ってしまったフィクション映画です。「ゾディアック」劇中で当時の人たちが「ダーティハリー」を観ているシーンがあるんですけど、それってなかなかにスリリングな映画体験ですよね(笑)
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そして主役、クリント・イーストウッド演じるキャラハン。なるほどこりゃかっこいい。クールな佇まい、骨太なガンアクション、ダーティな決め台詞の数々、多くのフォロワーを生んだのも納得です(特典映像でシュワちゃんが嬉々と熱弁していました)。時に法を冒してでも正義を貫くキャラハンの姿は、のちのヒーロー像に多大な影響を与えたのだそう。
考えさせられる「被疑者の人権」
本作で印象的なのが「被疑者にも人権はある」ことの強調です。被疑者に対して「ミランダ警告」と呼ばれる「被疑者の権利の告知」をしないまま取り調べ等をおこなった場合、その供述や証拠品が「無効」になる、という法律上の決まりがあるのだそう(取り押さえたライフルですら「記念品でしかない」)。そのおかげでスコルピオンは幾度も釈放され、もちろん再犯。対するキャラハンは正義感からの捜査が水の泡になってしまいます。
これは当時のアメリカの社会問題を反映した内容ということになるのでしょう。明らかに犯罪者と思われる人物が手厚く法で守られ、防げたはずの犯罪が繰り返されてしまうもどかしさ。「殺してしまえばいいのに!」。劇中でキャラハンが堪らず声を荒げるシーンがあります。きっと一般市民の総意的な台詞であり、そこからラストシーンへと続く一連のカタルシスが、本作の人気を高めた一因だったに違いありません(批判的な声もあったようなので、それだけタイムリーな話題だったのですよね)。
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映画としてのいろいろ
難しいの抜きの感想としては、まずオープニング! クレジットの裏で「やたらドラムのかっこいい音楽」が流れてるんですけど、「ゾディアック」絶対これオマージュしてると思います。あちらもオープニングクレジットの裏でやたらドラムかっこいいやつ鳴ってるんですよ。そこだけ妙に印象的だったんですよ。断言します、ゾディアックのオープニングは絶対にダーティハリーのオマージュです。カシオミニを賭けてもいい。
映像表現で一箇所すごく印象的だったのは、スタジアムのグラウンドでスコルピオンを踏みつけるキャラハンの画がどんどん空撮で引いていくところ。今ならドローンですが当時はヘリだそうです。なにがおもしろいって、このシーンべつに空撮する必要なくないですか? なにをどう考えたら「よーし、キャラハンがスコルピオンの痛そうな足を踏む、一気に引け!!」ってなるんでしょうか(笑) いまいち分かんないんですけど、わかんないとこも含めて名シーンだと思います。
あとは、結局死んでしまった女の子の全裸遺体とかがなかなか生々しかったですね。エロスではなく、純粋に事件性の強い全裸の感じ。あんなに走り回って、一生懸命吐かせて、それでも被害者は救えなくて、被疑者のほうはなんか法に守られて放免。そりゃマグナムで撃ち殺しますよ、大いに結構ですよ。フィンチャー監督の代表作「セブン(1995)」のラストシーン、ミルズの脳内にはキャラハンも過っていたりして。
続編もあるようですがとりあえず1で終わりにしておきます。バッジ捨てたし。
(2018年96本目)