353log

主に映画のあらすじと(まとまりのない)感想文

惑星ソラリス(1972)

惑星ソラリス Blu-ray 新装版

惑星ソラリス Blu-ray 新装版

アンドレイ・タルコフスキー監督作品、初挑戦。

あらすじと感想

惑星「ソラリス」の調査をしているはずの宇宙ステーションから返ってくるのは要領を得ない報告ばかり。いっちょキミが行って状況を確かめてきてくれいと頼まれた心理学者クリスはソラリスへと向かうが、宇宙ステーションにはたったの2人しか残っておらず、おまけに10年前自殺した奥さんがなぜか現れたりしてさあ大変。

先日鑑賞した「ブレードランナー2049(2017)」がタルコフスキー作品へのオマージュだという話を聞いたので(有名どころではクリストファー・ノーラン監督もかなりリスペクトしているようですね)、本当は「サクリファイス(1986)」を観たかったんですが取り急ぎ最寄りTSUTAYAにあったこちらから。

難解なオーラが出ていたため、あらかじめ解説記事などいろいろ読んでおきました。するとどこでも「眠い」というワードが…。正直かなり覚悟したうえでの鑑賞でしたが、覚悟しすぎたのか、それとも比較的こういうテイストの作品に免疫があるのか、さして眠くもなく退屈でもなく「お、もう1時間過ぎたじゃん」という感じで観ることができました。よかった!(と言いつつラスト10分で油断して意識飛ばしました)。


とりあえずオープニングの印象は大事です。……ムム、のっけからキリル文字の圧がすごい…。ひとつとして読めない…。しかし音楽はかなりよい予感。バッハの「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる」というオルガン曲が、とても効果的に使われています。確か3回使われたでしょうか。なかでも「無重力シーン」ではシンセが被さってきてひときわ印象的です(このシーン素晴らしいですね! 宇宙空間における無重力の使い方としてこんなに美しいものは初めて見ました)。

この数年前に公開された「2001年宇宙の旅(1968)」もクラシック音楽が効果的に使われている言うまでもない例ですが、このあたりの選曲センスが後世に与えている影響は計り知れないのだろうなと感じます。…と真っ先に浮かんだのが鷺巣詩郎による「シン・ゴジラ(2016)」の熱放射シーン劇伴だったのはちょっと飛び過ぎでしょうか(笑)

(追記:町山智浩さんの解説を聞いていたら、「インターステラー」の劇伴がパイプオルガン中心なのは確実に本作へのオマージュなのだそうです。そういえばオルガンだった、すっかり忘れてた…)

さて、クレジットが終わってからしばらくはコントラスト低めの淡く美しい映像が続きます。なるほどこの霧がかった淡さは確かに「ブレードランナー2049」のそれですね。水草のシーンが不思議と落ち着きます。この水草だけ流してるチャンネルとかあってもいいかもしれない。タルコフスキー黒澤明監督はお友達らしく、のちに黒澤明がこのあたりのシーンをオマージュしてるそうなのでそちらもチェックしたいところです。

んで、いまいち状況の掴めない来客シーンがまたしばらく。ていうか宇宙行かないんかい。結局、このあと宇宙行くまで40分もかかるのでした。宇宙ステーションというシチュエーションが舞台になっているだけで他に宇宙的な描写はほぼほぼなく、ぶっちゃけ地球でそのまま進行しててもさほど支障なさそうなお話って感じでしたね。宇宙へ行くシーンほんの一瞬ですしね。そこは長回しじゃないんかい。あ、そう、珍シーンとして「首都高の車載動画を延々見せられる」っていう日本人向けサービスがございます。知ってるところ出てくるのはテンション上がるけど、宇宙行く前に延々と日本の高速道路走ってるソ連SF映画ってなんなの。

なんとなくストーリーを追っちゃってますが。宇宙ステーションへ着いたものの人の気配はないわゴミは散乱してるわで「おーい」って感じの主人公クリスさん。このクリスさんがまた地味なんだ。服装ほぼほぼグレーのスウェット(そういや2049のハリソンフォードも…)だし。ドンキ行く格好で宇宙に滞在できる時代なのはいいけどスクリーンの向こうに見てる人がいるの忘れないでください。たまにズボン履き忘れるのも勘弁してください。もうちょっと表情欲しいです。クリスさーん。(ちなみに一回だけフォーマルなシーンがあって、それは恰好良い。ずっとそれ着ててよクリスさん)

自分を入れて3人しかいないはずの閑散としたステーション。しかしちょいちょい「なんかいる」感に襲われるクリスさん。いや明らかになんかいる。そしてしまいにゃよーく知った顔、10年も前に自殺したはずの奥さんが登場。奥さんきれい! よかった! 唯一の娯楽的要素が! タルコフスキーさんも鬼じゃなかった!

クリスさんたちのいる惑星ソラリスには海があります。高度な知的生命体でもあるらしいこの「海」さんは、まわりの人間たちの心を読んで「なんか実体化します! 何が出るかはお楽しみ!」とかいうヒヤヒヤもんのプレイをしてくれます。クリスさんは自分の深層心理をソラちゃんに読まれた結果、「古くに亡くした嫁さん」というのがピックアップ、実体化されてしまったわけです。なるほど、すげーなソラちゃん。

クリスさんも任務を背負って来てる学者さんなわけで、最初は「まぼろし」に抵抗。まず手始めに「乗ってきたロケットに奥さんだけ乗せて発射し宇宙へ葬り去る」とかいう加減知らずの策を実行するも、クリスさんが「想って」しまえばすぐに「奥さん弐号機」が生成されちゃうわけなのでつまりもちろんしれっとお部屋に帰ってきてます。このへんの描き方が密室スリラーって感じでかなり怖かったですねえ。360度ビューみたいなカメラワークの先に奥さん突然座ってたりするんで予想してても怖い。

次第に「もういいや、これ僕の奥さんです! 一緒に暮らすよ!」と開き直るクリスさん(ロケットで妻を打ち上げた人とは思えない)。奥さんは奥さんで自分が「本物」ではないことを自覚しだし、「つらい…」つって自殺したりするんですがなんせソラちゃんの創造物だもんでやっぱり生き返ってきちゃったり。大変だこりゃ。陸にあげられた魚みたいにビッチビチ身体反らせながら「再生」してくる奥さん、すごいシーンです。

まーなんかよくわかんないですけどクリスさんがうなされながら今度はお母さんのこと思い出したりしてたら想いがそっちに負けたのか奥さんは遺書残して今度こそ死んじゃったり、代わりにお母さんとお父さんが出てきたり、クリスさんめっちゃ不安定。ステーションの同僚から「もう地球へ帰ったほうがいい」と言われ、とてもショッキングなラストシーンへと繋がります。うーん、結構好きな後味。


こう追ってみると、特に大したことは起きていないというか、ソラリスに弄ばれてる165分でした。ストーリーがシンプルなぶん、その「…長い!」っていう感じが致命的にお嫌でなければ、そして必要以上に覚悟して臨めば、わりと普通に楽しめる映画だと思います。

(2018年70本目)