353log

主に映画の感想文を書いています

8 1/2(1963)

8   1/2 [Blu-ray]

8 1/2 [Blu-ray]

わたし史上最も眠気を誘う監督、フェデリコ・フェリーニ作品。「はっか にぶんのいち」と読みます。帯分数を「か」で繋げていた頃があったんですね。タイトルに深い意味はなく、フェリーニの撮った作品数が本作を入れて8.5本(共同監督作が0.5)になるというそれだけのことだそうです。

一応あらすじ

映画監督グイドは新作映画に向けての構想を練っていた。既にキャストが集められ、巨額予算のセットも建設中だったが、肝心のグイドにはまだ新作の全貌が見えかねていた。制作会見がセッティングされたある日、グイドの現実逃避は極限に達する。

とでもしておきましょうか。正直よくわかんないんですけど。

観たきっかけ

映画評論家町山智浩さんの記事「町山智浩の「一度は観ておけ映画」シリーズ - 映画評論家町山智浩アメリカ日記」を見たのがきっかけです。要は、よく「難解」と言われる類の映画というのは「そのスタイルの元祖」があるんだよ〜という話。その「元祖」を知ることで「ああ、これって○○みたいな映画なんだな」というシンプルな落としどころを見出せるんですよ、っていう。

で、この「8 1/2」はどうかかというと、「現実と妄想が交錯する系」の元祖と言われているようです。よくありますよね、例えば難解映画の代表「マルホランド・ドライブ(2001)」とか、ライトなタッチですけど最近観たばかりの「セブン・サイコパス(2012)」なども「ざっくり8 1/2みたいな筋の映画」と表現することが可能になるわけです。便利ですね。町山さんによれば「風立ちぬ(2013)」もまさに宮崎駿版「8 1/2」なのだとか。言い方を変えれば、世の中に溢れている「現実逃避」系映画のルーツのひとつなのでしょう。

難しいこと抜きの雑感

フォーリング・ダウン(1993)」を連想するような渋滞のオープニングがとにかく「怖い」です。ホラーですってこれ。まわりの視線、ちょいちょい静止する画面、曇った窓ガラスを指が這う音、突然の「十字架」飛翔、風船的アングル、なんだこりゃ…ですが、まあ、映画監督としての周囲からの圧力、現実逃避、現実に引き戻される様、などを表現したシーン、だと思われます。辛うじて理解できたのはここまでです(笑)

場面は一転、かなりハイキーな映像に。まぶしっ。白黒映画でこんなに「明るい」「眩しい」と思ったことないです。なんだってこんな露出オーバーな。しかも音楽が「ワルキューレの騎行」。まただいぶ衝撃的な使い方しますね。「2001年宇宙の旅(1968)」の先駆け的なとこじゃないでしょうか。関係ないですけど昔あったスクリーンセーバーの「フライング・トースター」にこの曲使われてた記憶がすごいあって、でも見つからない…。求ム情報。


んで妄想か現実かさっぱりわからん映像が延々続きます。マルチェロ・マストロヤンニ(唯一観たことあったフェリーニ作品「ジンジャーとフレッド」のフレッドと同一人物とは…)演じる主人公グイドは、今ならコリン・ファースとか、日本人だったら三船敏郎みたいな雰囲気で、要は「黒ぶちメガネがめっちゃ似合う!」オシャレさん。彼の奥さん役もまた超絶ベストメガネドレッサーでして、とても60年代とは思えない「メガネ萌え映画」です。ファッションの周期が70年とか言いますが50年程度しかまだ経っていないので、これは一体どういうことか。このメガネだけで一見の価値あると思います。


かっ飛ばして衝撃のラスト。突然の巨大セットで既に衝撃なんですが(こういうの好き)、問題はそのあとですね。総まとめ台詞「人生は祭りだ。ともに生きよう」からの、文字どおり「大団円」。グランド・フィナーレ。こーれは、映画!!っていう感じします。こういう奇妙な体験をできるのが映画の醍醐味だと思うわけです。意味は分からなくても「うわ奇妙!」これだけでもう撮れ高OK。

このシーンを見て真っ先に思い浮かんだのはティム・バートン監督作品「ビッグ・フィッシュ(2003)」。現実と妄想の交錯からの大団円。あとで町山さんの解説を聴いていたら「これまさに『ビッグ・フィッシュ』ですよ!」と興奮気味に述べてらっしゃって、やった当たった!とガッツポーズ(笑) 先日「ジュマンジ」新作に「大長編ドラえもんみたい」という感想を書いていたら後日宇多丸さんがまさに同じことを言っていてそちらもガッツポーズだったんですけど、こういう自己満な経験によって映画オタクの沼へと沈んでいくんですねっていう。はい。

解説すら起きていられない

本作鑑賞後、町山さんの音声解説で復習しました。

動画はサンプルで、フルバージョンは音声のみの有料コンテンツとなってます。以前「惑星ソラリス」鑑賞後に初めて購入し聴いてみたんですが、難解映画について60分もの時間語りまくってくれるというのは、知識欲を満たすという意味で200円の価値があるなと思いました。ご興味ありましたらぜひ。

と言いつつ、じつはわたし、この解説を聴き終わるまでに4日ほどかかりました。というのも、寝る前に聴いていたら4日連続寝落ちてしまいまして(笑) 解説すら眠いのか!という。無事完走したのちも、昨晩なかなか寝付けなくて試しにこれ聴いてみたところスッと寝付けまして。不眠気味の方へも、200円の価値はあると思います。


以上「8 1/2」でした。君はフェリーニに恋できるか! わたしはまだできていない!(「フェリーニに恋して」気になってるんですけどね〜)

(2018年76本目)