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主に映画の感想文を書いています

ベル・オブ・ニューヨーク(1952)

フレッド・アステアとヴェラ=エレンがパートナーを組んだ作品。

あらすじ

救世軍的な組織で働く堅実な女性と、生活習慣を改めて彼女に近づこうとするプレイボーイのお話。

雑感

先日観た「ヨランダと盗賊(1945)」もアステアが自伝でほとんど触れなかった作品ですが、本作もやはりアステアの黒歴史らしく、自伝での扱いは「これについてはあまり語らないほうがいいだろうと思う。(中略)というわけで失敗。以上。」というもの。撮影は楽しかったみたいですけどね。

もともとは「ヨランダ」の直後あたりに企画されていて、コケたことでもう潮時と思ったアステアが一回蹴ってます。んでそこから「イースター・パレード(1948)」とか手応えバッチリなやつを挟んでからの、満を持しての、やっぱりコケるという(笑) かわいそすぎる。ミュージカル映画人気が冷めてきていた、とアステアは書いていますが、本作の翌年はあの「バンド・ワゴン(1953)」ですから分からないものです!

本作のウリは合成による空中ダンス。恋をすると浮き上がっちゃうという超ファンタジーな設定になっております。しかしアステアの言うところによれば、本作の失敗要因はそのファンタジー要素だそう。「ヨランダ」同様、アステアとファンタジーは相性が悪い模様です。浮き上がっていって凱旋門のてっぺんで踊るのとか、絵の中に入っていくのとかおもしろいんですけど、全く同じようなことをディズニーがやると名作「メリー・ポピンズ(1964)」が生まれるわけで、餅は餅屋ということなのでしょうか。

ちなみにこの前の年には「巴里のアメリカ人(1951)」、そして同じ年には「雨に唄えば(1952)」。パッとしないアステア作品の裏でジーン・ケリーが大活躍。ジーン・ケリーといえば、本作の大太鼓担当アリス・ピアースさんは「踊る大紐育(1949)」にも出てましたね。あの濃すぎるキャラは忘れられない。

ストーリーに特筆するようなところはないけれど、一応フォローしておくと意外に音楽はいいし、黎明期なりの試みも感じられる作品でした。

(2018年188本目)