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主に映画の感想文を書いています

パリの恋人(1957)

パリの恋人 (字幕版)

パリの恋人 (字幕版)

雨に唄えば(1952)」のスタンリー・ドーネン監督作品。今年の中頃に「午前十時の映画祭」へ通い始めた頃から楽しみにしていました。オードリー・ヘプバーンフレッド・アステアをスクリーンで観れる!!

原題は「Funny Face」。本作の公開から遡ること30年、1927年にフレッド・アステアが姉アデール・アステアと共に出演していたブロードウェイ・ミュージカル「ファニー・フェイス」と同じタイトル。とはいえ同じなのはタイトルと、ガーシュウィンの楽曲だけだそうで。ちなみにガーシュウィンは公開時点で没後20年。名曲「ス・ワンダフル」が印象的に使われています。

なおヒロイン以外の主要登場人物としてファッション雑誌の編集長と専属カメラマンが出てきますが、これは雑誌「VOGUE」の編集長とカメラマンがモデルになっているようです。

あらすじ

ニューヨークの古本屋で働く娘ジョーオードリー・ヘプバーンは、ファッション誌の撮影で店を訪れたカメラマンのディックフレッド・アステアにスカウトされ、憧れのパリ行きを条件にモデルの依頼を請ける。ジョーは共感主義を信奉しており、パリにはその有名な教授がいるのだった。パリへ来たはいいが仕事そっちのけで共感主義者の集まりに入り浸っているジョーに、ディックは頭を抱える。

ジバンシィを纏わないヘプバーン

ヘプバーンの出演作はだいぶ観てきましたが、その中でもずば抜けて可愛いヘプバーンを拝めるのが本作だと思います。映画の前半と後半で衣装デザイナーが分かれており、後半はお馴染みジバンシィ。しかし言ってしまえばこの美しさは見慣れたもの。個人的超おすすめポイントは前半の、ジバンシィを纏わないカジュアルなヘプバーンです*1

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序盤、ニューヨークのグリニッジ・ビレッジ*2で働く本屋の娘、なヘプバーン。珍しくおろした髪に、地味な衣装。なんという可愛さでしょう。初登場シーンでは本屋の移動式はしごでカメラの前に急接近してくるのですが、初見時にそこで受けた衝撃を忘れません。なんだこのくそ可愛いヘプバーンは!!

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パリで楽しそうに街歩きをするニューヨーク娘、なヘプバーン。ここでもまだカジュアルです。このコートの着こなしは、他のどんなドレス姿よりもわたしには眩しい。こんなヘプバーンをもっと見てみたかった…。

そんでまあ、後半からジバンシィが登場しまして、最初はこうだったのが…

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こうなって…

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こうなるという…

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可愛いから美しいまで、ものすごい幅の広さで黄金期ヘプバーンの魅力を堪能できる作品になっております。次から次へジバンシィを着させてポートレート撮影していくくだりなんて、そのフォトセッション混ぜてもらえませんかと懇願したくなるうらやまシーンです。

正直なところヘプバーンは時期によってかなりビジュアルが変わってきてしまうので、観る作品によっては「なんでそんなに人気なのかわからん」という感想を持ちかねない女優さんだと思います。その点で本作はとにかく有無を言わせず「なるほど可愛い」な作品になっており、いまいちヘプバーンの魅力がわからないという人にこそ一度観てみてほしい作品です。

一歩引くアステア

今でこそフレッド・アステア信奉者なわたしですが、初見時はヘプバーン映画として見ていたので本作のアステアは全く印象にありませんでした。今ならアステア映画として見れるかな、と思っていたものの、やはりこれはヘプバーン映画でした。アステアは確実に一歩引いてます。

ただ、いざ踊り出せばそこはアステア。見ながら思わず笑いがこぼれてしまうようなエンターテイナーっぷりを、当時57歳にしてしっかり見せてくれます。コートを闘牛士のケープに見立てたスパニッシュなダンスシーンが一番の見せ所でしょうか。あのステッキさばきならぬ傘さばき(お得意のホールインワン技も披露)は絶品です。

あんまり意識してなかったんですが、これが実質ほぼ最後のミュージカル俳優仕事だったんですね。「フレッド・アステア自伝」によれば、ヘプバーンがミュージカル初挑戦にあたりアステアとの共演を希望したことからの実現だったとか。アステアは、他の仕事を一旦すべて白紙にしたうえでオファーに応じたそうです。

偉大なる美しきオードリー・ヘプバーンと共演できるのは、これが唯一にして最後の機会であるかもしれない。この機会を逃したくはなかった。以上。

(「フレッド・アステア自伝」p408)

ありがとうアステア、ありがとうヘプバーン、ですね。

観ていると明らかにパリの天気が芳しくないなと(好き好んでこのロケーションは選ばないだろうなと)思えるロケシーンが多いのですが、同じくアステア自伝によればやはり撮影期間のパリはずっと天候不良だったそう。美しいお城のシーンも足元はぬかるんで大変だったようで、文句ひとつ言わず頑張っていたヘプバーンも堪らずこんなふうに漏らしていたそうです。

フレッド・アステアと踊れる日を二十年も待っていたのよ。なのにこの仕打ちは何? 泥だなんて!」

(「フレッド・アステア自伝」p410)

20年というと、ヘプバーンは10代の頃に「トップ・ハット(1935)」とか「踊らん哉(1937)」とかそのへんを観ていた感じですかね。

ダンスといえば、本作はヘプバーンのダンスも見ものです。「共感主義者」たちが集う怪しげなカフェでのコンテンポラリーなダンスは、もともとバレリーナだったヘプバーンの技能を大いに生かしたものと言えるでしょう。おもしろいのが、ドラムセットを足で蹴るといった「アステア風」な小ワザも取り入れているところ。ヘプバーンなりのリスペクトかもしれません。

ストーリーは二の次

今回久しぶりに鑑賞してみて、上記の通りもう素晴らしいことだらけなのですが、うん、ストーリーはおもしろくないね!っていう感想に。冒頭の「本屋荒らし」のシーンからしてだいぶ不愉快ですしね、仕事なのに約束を守らず逆ギレしてるヘプバーンもだいぶイラっとしちゃいますしね、こりゃ完全、ストーリーは二の次な映画だわと思った次第です。

まーそのぶんとにかく8割の「ヘプバーン映画」と2割の「アステア映画」を併せ持った映画ですから、観てるだけで楽しめるのは間違いありません。

2019年1月3日まで、毎朝10時、全国の「午前十時の映画祭」指定劇場にて公開中です! オードリー・ヘプバーンフレッド・アステアという世紀のムービースターたちを是非スクリーンでご覧ください!

(2018年241本目 劇場鑑賞)

パリの恋人 [Blu-ray]

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フレッド・アステア自伝 Steps in Time

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*1:担当はイーディス・ヘッド。ヘプバーン映画では「ローマの休日」や、「麗しのサブリナ」の前半部分などを担当しているそう(こちらも後半はジバンシィ。要は、垢抜け担当がジバンシィだったわけですね。)。

*2:行ってみたい…と思っていたら、先日行ってきた「暗くなるまで待って」のロケ地グリニッジ・ビレッジでした。なんと。