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あらすじ
かつて名を馳せた大悪党だが今は真人間としてひっそり暮らしているマニー(クリント・イーストウッド)。彼のもとに見知らぬ若い男がやってきて、カウボーイを殺しに行かないかと誘う。聞くと、カウボーイが町の娼婦に酷い暴行をし、保安官の甘い裁きに納得しない娼婦たちが有り金はたいて懸賞金をかけたのだという。殺しからは手を切ったマニーだったが、幼い子供たちの将来のため話に乗る。
許されざる者とは誰なのか
「許されざる者」というタイトルから想像するストーリー、普通に考えたら「かつては大悪党、今は真人間。しかし改心したとて過去の過ちがなくなるわけではない。必ず清算のときがやってくるのだ」的な感じになると思うんですけども。わたしはそのように想像していました。つまるところ主役のイーストウッドが「許されざる者」なのであろう、ということですね。
しかしいざ観てみるとこれがなかなか不思議な作品で、誰が「許されざる者」なのかはっきりしないのです。というか、誰も彼もが「許されざる者」に見えてきます。「正義が行方不明」とでも言いましょうか。この淡々と立場の変わっていく感じ、「スリー・ビルボード(2018)」にすごく似ている気がします。
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「LOGAN/ローガン」に影響を与えた作品
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「LOGAN」と本作は、どちらもよく似たメタ的構造を持っています。「LOGAN」ではX-MENのコミックが登場し、かつてその「お話のモデル」であったローガンが「本当はコミックみたいにいいもんじゃない」と現実の残酷さを教えようとします。「許されざる者」では伝説的ガンマンの自伝を執筆中の作家が登場し、そのガンマンと旧知の関係である保安官が「俺もその場に居合わせたけど、本当はそんな格好良くないぜ」と〝西部劇〟の種明かしをします。
西部劇の顔としても名を馳せてきたイーストウッドによる、自身のキャリアを否定していくような本作。なるほど「LOGAN」です。西部の劇だけれども西部劇ではない、X-MENのキャラクターが出てきているけれどもX-MENとは言いたくない、思った以上に通じるところがあります。
まあ細かいことは抜きにすると、老いぼれかと思ったら最後に殺人マシーンと化すイーストウッドがやっぱりかっこいい〜〜とか(その前触れとして11年ぶりに酒をあおるシーンもゾクッとします)、イングリッシュ・ボブあんなかっこいいのにあんなしょっぱいのか〜〜とか(あの方ダンブルドア校長だったんですね)、牢で唐突に始まる心理戦がめっちゃおもしろいな!!とか、眩しいくらいの荒野の雪とか、見どころ多数です。個人的にはエピローグがちょっと蛇足に感じてしまいましたが、そう感じずに済む解釈もあるのかもしれません。
見どころ多数と言えど、なかなか地味な映画です。でも観終わってからいろいろ考えていると、観ているときよりも印象深い作品になってくるように思いました。
(2018年138本目)