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主に映画の感想文を書いています

シカゴ(2002)

特に理由もなく未見だったタイプの有名なミュージカル作品。先日テレビで振付師ボブ・フォッシーと「シカゴ」の名前を見たのがきっかけで鑑賞。ボブ・フォッシーって「スイート・チャリティー(1969)」とかもやってるんですね。

あらすじ

キャバレーで踊る人気ダンサーのヴェルマと、ヴェルマのようなダンサーを夢見るロキシー。それぞれに男女の愛憎から人を殺めてしまった彼女たちは、皮肉にも刑務所で知り合う。袖の下に応じてくれる女性看守とガメツい敏腕弁護士を利用し合い、刑務所内の成り上がりバトルを繰り広げるヴェルマとロキシー。最終的にふたりは絞首刑を免れて釈放され、「人を殺めた過去のある魅惑的な二人組」としてステージで大成功を得る。

監獄妄想ミュージカル

非常に好みの作品でした。こういうショウビズものって前年の「ムーラン・ルージュ(2001)」みたいに暗くなってしまいがちであんまり好かなかったのですが、先日鑑賞した「バーレスク(2010)」が素直にハッピーエンドな作品だったのでそういうのもあるのねと思っていたところです。本作もテイストとしては「バーレスク」側、むしろもっと底抜けに明るいくらいの妄想炸裂ミュージカルでした。

同年代の妄想ミュージカルといえば、2000年にも印象的な作品がございます。そう、ビョークでダークなやつですね。本作、ダンサー・イン・ザ・ダーク」を極限まで明るくしたらこうなるみたいな作品だなと。殺人を犯してしまったヒロイン、ショウに憧れるヒロイン、生活音から生み出されるビートと妄想のミュージカルナンバー、刑務所、法廷、絞首刑、などなど。同じような要素を使いつつ、よくまあここまで正反対な作品が作れるな?!と感動しました。映画ってすごい(笑)

ミュージカルを逆手に取った、クラシックなミュージカル

ミュージカルといえば「すぐ歌い出す」のが特徴なわけですが、本作はその特徴を逆手に取って、ひとつひとつ「演目」として見せているのが非常に面白いです。今にも歌い出しそう…な状況になるとどこかからアナウンスが聞こえてきて、その「ナンバー」が始まります。それは時にたわいもないこと。「それでは聴いてください、『記帳しようと思ってたのに通帳忘れてきちゃった』」みたいなレベルの。

かといって奇抜なわけでもなく、カラッとしたストーリー展開もあわせて非常にクラシックなミュージカル映画の空気感もあるんですよね。この「シカゴ」という作品は歴史が古く、1920年代にはブロードウェイで上演されていたそうなので、そのあたりの雰囲気もきっと受け継いでいるのでしょう。また、1942年にはジンジャー・ロジャース主演の「ロキシー・ハート」という作品も公開されています(興味ある…)。そのへんはこちらの記事が詳しく、たいへん興味深かったです。 余談ですがラストシーンでバンドのドラマーが叩いてるドラムセット、木魚やらなんやら付いたまさにあの当時の(クラシックなミュージカル映画でよく見る)セッティングだったので興奮しちゃいました。

Stompin at the Savoy

Stompin at the Savoy

こういうやつ。

魅力的なキャラクター

レニー・ゼルウィガー演じるロキシー・ハートは、ちょっとおつむの弱そうなブロンド娘。そう、まさにマリリン・モンロー的キャラクターです。このどこか憎めない、愛らしい感じを武器にして裁判を有利に進めようぜというお話なのですが、うむ、確かにこれはもし自分が12人の男たちだったらなびいていたかもしれない。常に顔のパーツをどこか歪ませたような「ぶちゃいく顔」のロキシー、とても好きなキャラクターでした。

対するブラック・ビューティー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ演じるヴェルマ・ケリー。こちらもまた間違いなく好きなタイプでございます。途中までロキシーなぞ目もくれない圧倒的優位だった彼女が、戦況の悪化を感じて捨て身で食らいついていくところは気持ちいい! 普通ああいうところってもう少し意地を張るもんだと思うんですが、ヴェルマは賢明な人なのでしょうね。

イエス・キリストがシカゴに住んでいて私に5,000ドル払っていたら死刑にはならなかった」と真顔で言ってのける敏腕弁護士ビリー(リチャード・ギア)もまた最高です。あやつり人形のナンバーが印象的。「この世はサーカスみたいなもの。ショウビジネスだと思え」という台詞は素直に刺さってくるものがありました。最近どこかでお会いしましたっけ…?とモヤモヤしてた収賄ママは「ヘアスプレー(2007)」のママ(トラボルタじゃないほう)だったと分かり、すっきり。

というわけで、だいぶ期待以上のストライクな作品でした。唯一、あの「オール・ザット・ジャズ=なんでもあり!」な流れのなかで絞首刑にされちゃったひと可哀想…。そこだけが少々ひっかかってます(笑)

(2018年139本目)