シェイプ・オブ・ウォーター〈オリジナル無修正版〉(2017)
記憶が正しければ公開時は字幕のみだったはずですが吹替版も入ってます。字幕は文字色が黄色ではなくなり、イライザの手話字幕も手の位置ではなく普通の下部に出ます。特に違和感はありません。参考までに。
あらすじや基本的な感想は公開当時の記事(ここからの数ヶ月間で沼ってることがよくわかる…)に書いていますので割愛し、新たに感じたことや特典映像(計1時間ほど収録)で知ったことなどを書いていきますね。
待望の再鑑賞をしてみて
劇場鑑賞後、だいぶいろんな関連作品をチェックし再鑑賞への準備を整えていました。こういう場合、満を持しての再鑑賞は意外と「あれ?」な印象になることもあるのですが、本作は初見時と同じように入り込めて、同じような余韻と共に観終わることができました。美化された記憶ではなく、本当に「好きな映画」だったようです。よかった! というわけで以下の感想はベースにまず「あ〜〜やっぱめっちゃよかったわ〜〜」がございます。めっちゃ好きな映画の二度目を観た感想、書きます。
オープニング
完全に心掴まれたオープニング。何度観てもやはり素晴らしい。水の底からアパートの廊下へ入り込んでいく一番冒頭は記憶に残っていなかったので、すごいおとぎ話っぽい!と今更な感想。「ハンサムな王子の時代が終わりに近づいたころ」というジャイルズのナレーション、最初に観たときはよくわかってなかったな。「人間に戻らない『美女と野獣』が作りたい」というコンセプトを冒頭からしっかり打ち出しているんですね。
このシーンは「ドライ・フォー・ウェット」という技法で撮影されていて、ざっくり言うと浮いてるのはCGじゃありません。かといって水中でもありません。スモークや照明で部屋の中を演出し、家具やイライザを上から糸で操演。それに視覚効果で水中っぽさを加えて仕上げ。特撮ですね、すごいですね。テーマ的に水中撮影が肝になるだろうと考え、研究をしたのだそうです。オープニングとラストシーンの撮影光景が特典映像で少し観れます。
グッモーニン、ボルチモア(21:00)
イライザって遅刻癖があるわりに優雅な朝(もとい夜)を過ごしているようにも見えて、何時に起きてんのかなと注目して観てみたところ、出勤3時間前に起きてました。はえーな! 21時に起きて、23時までは自宅orジャイルズの部屋にいる模様。朝風呂入って弁当とジャイルズの夜食作って靴も磨いて、とやはりかなり充実の時間を過ごしてるんですね。見倣いたい。
映画館の上に部屋があるのは知ってましたが、ほんとに真上、それも床下から光が漏れてくるほどとは知りませんでした。バスルーム事件のときに大家さんがブチ切れてましたけど、そもそもそんなスノコみたいな床板なら普通に生活してても漏水するでしょ! 大家さんがいけないと思うよ!
イライザとジャイルズの部屋はもともと大部屋だったのを2部屋に改築してあり、右脳と左脳、ふたりでひとつ的な裏設定があるそうです。あと、イライザの部屋にあると噂だった「北斎の『富嶽三十六景』を一度描いてから全部塗りつぶした」とかいうキチガイじみた壁の件、特典映像で位置は確認できたものの、サブリミナルが過ぎる! 曰く、最も有名な「水の形」の絵だそうです。見えねえけど!
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ほかに「ヘアスプレー」と通じるなあと思ったのは、イライザとジャイルズが「助けないなら私たちも人間じゃない!」と口論になるシーン。当初「わかるけど、リスクが大きすぎるよ」と強奪プランに非協力的だったジャイルズの姿は、「ヘアスプレー」にてヒロインのボーイフレンドが同じ理由でデモ行進に加わらない(けど考え直して戻ってくる)くだりを連想させます。
1960年代アメリカのこと
先日の「ヘアスプレー」感想に書いたのと同じく、やはり「ドリーム(2016)」の鑑賞は大きい。差別的なことはもちろん、宇宙開発競争の時代というものに対する理解が(少なくとも未見時のゼロよりは)深まったことでかなり分かりやすくなりますね。「裏切りのサーカス(2011)」などのスパイ映画を観たことも大きくて、ホフステトラーがどういう「スパイ」なのかというのもすんなり理解できました。
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不思議な生きもの
特典映像ではダグ・ジョーンズ演じる「不思議な生きもの」について、デザインから撮影まで多めの尺で扱われています。改めて、あの着ぐるみ状態であれだけの感情表現をしてみせたダグ・ジョーンズさんめっちゃすげえなと思いました。特に「お前は神なのか」のところでその立ち姿が放つ神々しさ。そこまで「逆襲」をとっておいたことによるカタルシスも伴い、まごうことなき名シーンです。なお後半で頻発する発光のギミックはLEDや視覚効果ではなく、なんとブラックライトを利用しているのだとか。
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ミュージカルシーン
「艦隊を追って(1936)」などをオマージュした終盤のミュージカルシーン。実際の撮影現場では、後ろの電球が青色をしており印象的でした。白黒映画時代のセットの色なんてなかなか知ることができませんけど(白黒だからといって必ずしも無彩色ではなかったはず)、「青のほうがそれっぽく見える」とかあったんでしょうね〜。
このシーンについては監督曰く、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが一世を風靡していたミュージカル映画黄金時代の美学と、クレーンカメラによるダイナミックなカメラワークができるようになったスタンリー・ドーネン監督(「雨に唄えば」など)の時代の美学を合体させたような作りなのだとか。
そういえば訴訟問題の報じられた「デリカテッセン(1991)」の件、確かにあのソファーのシーン、似てると思いました。テレビの位置、男女の配置、ゆる〜いニュアンスのダンス、「似てる!」と言われても仕方ないかも。 …でもやっぱりそれ以上にバスルーム事件が漏水も含めてそっくりで笑っちゃいます。無意識だとしたら相当好きなのかな、って感じですね。
デルトロ監督のパワーワード
特典映像のなかで印象的だった監督の言葉をいくつか。まずは深イイのから。
「音楽は映画を世間に出すためのドレスだ。」
いいですね。こんなこと言ってもらえたらアレクサンドル・デスプラさん報われますね。音楽制作の初期段階で「水のお話だからフルートの編成を多めにしたい」と提案していたそうで、デスプラさんの優秀な「デザイナー」っぷりが伺えます。
「しかめっ面のモンスターを絶対にデザインするな。それで終わってしまう。」
これからモンスター映画を作ろうとする人たちへのメッセージ。「長所を考えてデザインする」ことが大事なのだそう。デルトロ監督のモンスター愛がこれでもかと伝わってくるくだりだったので、ぜひ特典映像ご覧いただきたいです。
「人々の本質に響く映画だ。観る者の本質によるがね。」
うっひょ〜〜〜!!!
というわけで、ちょいちょい追記したりするかもですがとりあえずこんなところで。あ、早速追記したい。そうそう、エンドロールが「You’ll Never Know」1曲でスマートに終わるのって素晴らしくないですか。エンドロールで3曲くらいクロスフェードするありがちなやつ、最後の最後で構成が雑だな〜とか思ってしまうことがあるので、こう、後味残したままきれいに終わってくれる感じ、すごく好きです。
(2018年112本目)*1
*1:無修正版だからカウントし直していいよね(セコい)