ノープラン旅行記「サンライズ瀬戸に乗りたい(ただしその先は決めてない)」その2。あこがれの夜行列車「サンライズ瀬戸」で高松までやってきた353は、アーケード街を愛でながら香川唯一のミニシアター「ホール・ソレイユ」さんを見学。ノープランとはいえ時間が危うくなってきたので駅まで戻り、今度は愛媛に向かいます。
▲その1はこちらから。サンライズ瀬戸の乗車記はこの記事のみです。
2月2日(木)am:愛媛の端っこまで移動する
9:42。高松駅から予讃線「特急いしづち」に飛び乗り、まずは松山まで2時間半の列車旅。サンライズに揺られまくったばかりだし2時間半は長いかなと思ったのだけど、案外まったく苦ではなかった。べつに車窓がおもしろいとかでもない。寝てたわけでもないし、音楽やラジオや本なんかで時間を潰していたわけでもない(むしろ旅行中、そういうのは一切摂取しなかった)。なぜだか分からないが、ひたすら穏やかな2時間半だった。これが退職パワーか。
退職パワーにより、あっという間に松山駅へ到着。ここで「特急 宇和海」に乗り換え、なのだが、アナウンスされた「お乗り換えの方は、降りられたホームの先頭車寄りに〜」の意味がわからず少し彷徨う。ん? ん?? 宇和海どこだ???
答えはこう。いしづち先頭車から目と鼻の先に宇和海が停まっていた。なるほど、なるほど……。そういうホームの共有方法があるのね……。
2両編成の宇和海に乗り込もうとしたとき、ホームのだいぶ先に「見覚えのある車両」がいたので思わず駆け寄り、写真を撮った。
これ、じつは映画『すずめの戸締まり(2022)』に登場する車両「キハ54形」なのである。そして、偶然そんな場所に来るはずはない。今回の旅、後付けの裏テーマは『すずめの戸締まり』聖地探訪。行けるところまで、行ってみよう。
2月2日(木)pm:『すずめの戸締まり』聖地探訪・四国編
もともとそういうつもりだったわけではない。ただ、ざっくりとした旅程を考えていく初期段階で「これは『すずめ』だろうな」と思った。
新海誠監督最新作『すずめの戸締まり』は、九州・宮崎あたりから始まって、フェリー、鉄道、車などさまざまな交通機関を使いながら東北へと向かっていくロードムービーだ。
※詳しくは、僭越ながら「まっぷるトラベルガイド」さんに聖地巡礼ガイドを書いています。実際にこの目で確認したのは都内の聖地だけなのに、とやや後ろめたい気持ちだったことも動機。
物語の流れに沿うならば、大分の臼杵港からフェリーに乗って愛媛の八幡浜港へ行き、そこから徳島まで移動して大鳴門橋&明石海峡大橋にて神戸へ入り——といったルートになるのだが、いかんせん大前提が「サンライズ瀬戸」なのでその旅程は組めない。高松スタートで「聖地」へ赴く場合、愛媛まで行くか、徳島まで行くか、の2択となる。
徳島ルートは、車がないと厳しい。年季の入った純金免許所持者のわたしには、レンタカーなどという選択肢はほぼグレーアウトだ。よって、愛媛ルートに決めた。とりあえず、愛媛の端っこ、八幡浜港まで行く。
ところで、「特急宇和海」はすごかった。次から次へとトンネルへ入っては出、入っては出、ジェットコースターのように轟音爆速で駆け抜けていく。勾配もすごいらしく、飛行機かというレベルで耳が詰まる。調べてみたところ、この区間は最大120km/hくらいで走るんだそうだ。いや、納得かもしれない。とても2両編成のローカル線から想像できるようなスピードではなかった。まじやばい。おすすめです。
目的地の「八幡浜駅」の手前には劇中で「ダイジン」がバズっていた「伊予大洲駅」もあるが、本数の少ない路線で途中下車をする勇気はないので通過するのみとする。
宇和海に50分揺られ、13:14「八幡浜駅」へ到着。映画を観た当時はさすがに四国まで聖地巡礼は無理かなと思っていたので、実際その地へ降り立てたことがしみじみ嬉しい。道は繋がっているのだな。
ここからはしばし写真にてご案内。
そろそろ本文が喋るべきか。そう、本当は大分・臼杵まで行くことも考えた。それこそ時間的にはこの便に乗れば余裕で行けた。九州入りしてしまえば、映画序盤「廃墟の温泉街」のモデルとなった由布院の「湯平温泉」に泊まったりすることもできる。どうせなら! ……しかし、その旅程を組むには日数が足りなかった。またいつか、ご縁があらんことを。
さて、この八幡浜港フェリーターミナルには非常に凝ったフォトスポットもある。
四国まで来てしまえば鉄道のみで比較的手軽に来れる場所だと思うので、『すずめの戸締まり』が心に刺さった人は是非とも訪れてもらいたい。
そうこうしているうちに「おれんじ四国」は出港。嗚呼、フェリーまで乗れたら「コンプリート」って感じだったんだけどな。踏ん切れなかった自分がちょいと悔しい。
帰りはちょうどバスがあったので数分揺られて楽ちんに八幡浜駅到着。ホームを見ると「あいつ」が停まっていたので、慌てて改札をくぐる。
これは幸運。「八幡浜駅ホームとキハ54」の写真が撮れる! と思った直後に「こいつ」は発車。おお、なんと、わずかに間に合わなかった。
と思ったら、その裏にもう一両、キハ54がいた。なんかレアリティ下がってきたな。いや、でもアンパンマン列車とかいろいろいる中で、水色ラインのキハ54とこんなに会えるのはきっとそれなりに幸運なはず。
ほどなくして到着した「特急宇和海」で、本日の寝床・松山へ戻る。ちなみに宇和海はキハ54じゃないので、これほど撮っておきながらキハ54には今回一度も乗っていない。劇中で登場する「車内」はキハ54なのだから、乗っておけばよかったな。そんで伊予大洲まで行って特急を待つルートにでもすればよかった。なーんて、今更後悔している。
以上、これにて『すずめの戸締まり』聖地探訪・四国編は終了。次回、松山の夜と朝、そして脈絡なく関西へ。
▲四国編の描かれ方は、このあたりで一部確認できます。