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主に映画の感想文を書いています

サンライズ瀬戸で行くノープラン旅行記【①あこがれのサンライズ瀬戸/高松の文化に触れる】

17年勤めた職場を辞めました。普段なら夢のまた夢みたいな時間の使い方ができるため、何はともあれ旅をすることに。

というわけで、このたび決行してきたひとつめの旅はサンライズ瀬戸に乗りたい(ただしその先は決めてない)」です。いつも旅行記は溜めてしまう傾向にあるので(尾道もめっちゃ途中だし……)、帰りの新幹線で早速書き始めます。お仕事する人向けの「S Work車両」だからパチパチ言わせても大丈夫。なはず。

ちなみに今回の旅の節操なさを先に書いておくと、東京から寝台列車で香川・高松へ行き、さらに愛媛・八幡浜まで行ってから松山に戻って宿泊し、翌日は松山空港から伊丹空港まで飛んで神戸をぶらぶらし、ほぼ和歌山な大阪の友人宅に泊まって帰ってくる、です。3泊4日、おおむね前の晩に次の日の予定を考えるスタイルで動きました。ではいってみましょう。

2月1日(水)pm:サンライズ瀬戸に乗る

最終出勤の翌日夜、飛び跳ねる気持ちで東京を旅立つ。

サンライズ瀬戸は21:25東京駅入線。日中にいろいろ予定を済ませ、少し早めに行動開始。せっかくの夜行なら、出発の前に映画を観るやつ、したい。なのでTOHOシネマズ日比谷シャンテにて、16:30〜19:25回のモリコーネ 映画が恋した作曲家』を鑑賞。すっごく良かった。ボロ泣きした。

東京駅まで徒歩で向かう道すがら、東京国際フォーラムにて、おそらく2018年NY旅ぶりと思われるシェイクシャックを食べる。お高い。が、高揚する。東京駅前では、何組ものカップルがウェディングフォトを撮影していた。少し暖かい日だったとはいえ、ご苦労なことである。

東京駅・丸の内駅舎
いつ何度来ても観光客気分を味わえてしまう東京駅・丸の内駅舎。

サンライズ瀬戸乗車にあたり、東京駅構内で車内用の買い出し。ペットボトルの水を2本、缶コーヒー2本、パン2つ、普段は買わない駅弁も買って、オールフリーも1本買った。最終的にパン以外はほぼ消費したのでまあまあ的確な買い出しだった。特に水は2本必要。乾燥するし、歯磨き用にもあったほうがいい。

始発 寝台特急サンライズ瀬戸 21:50 高松行き
駅ホーム、電光掲示板に高まる。

21:25。9番線に「サンライズ瀬戸・出雲」入線(岡山で切り離して分岐するため、東京駅時点ではこの名前である)。だいぶ前からカメラを構えていたが、入ってくる方向を勘違いして早速なにも撮れなかった。入線してからも妙に気持ちが落ち着かず、上手くない写真ばっかり量産した。大人になってから初の寝台列車だし、浮つきもやむない。子供の頃は何回かブルートレインに乗せてもらったことがあるのだけど。

クリーム色と赤紫のツートンカラー、やや丸みを帯びた車両。ヘッドライトも丸い。
これは停車後に撮った先頭車。

ここからしばらく写真コーナーとなることをお許しいただきたく。

客車側面、行き先表示の窓。
1号車寄り半分は高松行きなので表示も「サンライズ瀬戸」単独になっている。

列車側面、乗車口。
「B寝台」の文字がめちゃくちゃときめく。

車内の様子
乗車すると、二階建て特急車両でお馴染みの上下階行き階段がある。ただし座席ではなく個室のドアが連なっている。ときめく。

角部屋。閉まった引き戸。
わたしの部屋は、1号車1番。運転席の真後ろ。階でいうと下でも上でもなく、乗車口の階。各車両の端っこにある、のかな、多分。

部屋の前に付いている昔の携帯みたいなオートロック。
鍵は暗証番号式のオートロックが付いている。カプセルホテルよりよっぽどホテル。

部屋の内部。診療所のベッドくらいの細い寝台と、かなり大きな窓、壁には洋服掛け、寝台の脇にはバッグなどを置けるスペースがある。

入ってすぐの壁には細い鏡があり、寝台に少し重なるかたちで小さなテーブルが付いている。
シングルの室内はこんな感じ。この階だけは窓が湾曲していないためか、だいぶ狭く感じる。が、寝そべってしまえば案外快適。枕、掛け布団のほか、寝巻きも用意されている。

ホームの床面と、窓の底辺が同じ高さ。
これは下の階だが、外から見るとこんなふうに見える。油断していると退勤中の皆様に丸見えである。

21:50、寝台特急サンライズ瀬戸・出雲」東京駅発車。平日かつ、青春18きっぷなどのシーズンでもないため、天下のサンライズもそこそこ空室が目立つ。とはいえ夜行列車にロマンを抱く乗客で賑わっていた。小さな子供連れの家族も多かった。

日中そこそこ動いていたり、そもそも緊張していたこともあって(大寒波の影響で数日前までサンライズが何本も運休になっていたりとか、心配が絶えず)、動き出すと結構すぐに眠気がきた。夢の寝台特急でまさか寝落ちるわけにもいかないので、せっかく買った駅弁とオールフリーをとりあえず開ける。まだ横浜とかそのへんである。

小さなテーブルの上に駅弁とオールフリー。さば寿司とだし巻き卵の弁当。
シェイクシャックを食べた後なので、さっぱりめの駅弁にした。オールフリーなのは通常運転。

窓の外に規則正しく並ぶ、発光する飛行物体。実際には車両基地かなんかの電灯。
寝そべって車窓を眺めているときが至福。窓が若干曇っており、光が全部いい感じに拡散されるので、通過する場所によっては『未知との遭遇』みたいなことになる。

「快適なベッド」とは言えないが、電車だと思えば快適だし、何より靴を脱いで脚を伸ばしていられることの快適さは想像以上。で、つまり眠さもひとしおってわけ。

悔いのないよう、ひととおり車内を見学して、歯磨きもして、最低限やるべきことを済ませてから、6:00に目覚ましをかけてなんなら普段よりよっぽど早く就寝モード。結果、ほぼほぼ中途覚醒なく6:00まで爆睡。睡眠が十分にとれたのは有難いことだが、どちらかといえばかなしい。あと2時間も乗れないじゃないか。

まだ暗い早朝。数メートル先を照らす光が、部屋の窓から見える。
目が覚めて外を見てみると、先頭車のヘッドライトから放たれる光がすぐそこに見えた。不思議な感じ。

特急の二階建て車両。
これはおそらく岡山駅。早朝の駅に停まるマリンライナーがなんだかとてもよい。

まだ暗い、早朝の駅。
岡山駅で「サンライズ出雲」と分岐し、それぞれの道をゆく。

瀬戸大橋を渡る頃、数号車離れたラウンジに移動。朝日を狙うも、まだ時間が早かったのかほんのり朱い空が見えるのみで思っていたような画は得られず。部屋に戻って身支度をしていたら、オレンジの光がギラッと差してきた。「今か! ここでか!」と焦りながらいっぱい撮った。時間とか方角とか、なんも調べてなかった。

ほんのり朱い空

窓向きに5つずつ、左右で計10席のカウンターチェアが設けられたラウンジスペース。
朝日が差してくることはなかったラウンジ。部屋の向きによっては部屋から見ればいいので、わざわざラウンジまで来る人は意外と多くなかった。まあ収穫はなくとも、夜明けの海を眺めながら飲む缶コーヒーはオツなものである。

ビルの隙間から朝日が差してきた
部屋に戻ったら、あれっ??

薄暗い空、眩しい朝日、水面に反射する光。
ちょうどよくどっかの水面に反射してくれた朝日。ありがとう。

窓の外にはいわゆる讃岐富士というやつ(と思われるやつ)が見えてきた。このあたり、甘食みたいな丸い山が多くて独特。ぼこぼこ生えてる。大昔の火山活動うんぬんかんぬんらしい。こういうカルチャーショックが旅の醍醐味。

そして7:27、列車はあっさりと高松へ着いてしまう。さよならサンライズ。もっと乗っていたかった。

車内の電光掲示板
高松!

客室の扉が並ぶ通路、好き。
さらば、魅惑的な通路よ。

正直、9時間半も揺られているのはそれなりにきつかろうし、ろくに眠れないのだろうと思っていた。どっこい、一瞬で寝落ちたしいくらでも寝ていられた。鉄道の揺れと音は心地よい。もっと乗っていたかった。しいて言えば乾燥はなかなかのものだったので、肌の弱い方は用心されたし。わたしは夜中に痒さで目覚め、ローションを塗った。

駅ホーム。停車中のサンライズと、歩いてゆく車掌さん、もしくは運転手さん。
高松。降りてしまった。

マリンライナーとサンライズを、顔の正面から。
お隣には、さっき岡山にいたやつかもしれないマリンライナーが並んでいる。じゃあねサンライズ

バスターミナルや港など。
だいぶ都会的な建物が立ち並ぶ高松駅前。港のほう、行けなかったな。


2月2日(木)am:高松の文化に触れる

さて、ここから先はノープラン。どう動こうか。まずは駅前で腹ごしらえ。香川といえば、さすがにこれを食べなきゃいかんだろ。目についた昔ながらのうどん屋さん「味庄」へ入る。お出汁を大きなタンクの蛇口から自分で入れるスタイルだった。瞬時に理解し対応できた自分を褒めたい。どうやら「セルフ」と書いてあるうどん屋さんはみんなこうらしい。

カウンターにうどん
肉うどんにした。

店舗外観
のれんに赤提灯、思わず入りたくなる店構えの「味庄」さん。なるほど、しっかり「セルフの店」と書いてある。一見さんにもすごく優しかったです。

身も心も温まったので、高松にはもうちょっと滞在することにした。今回は、行き先に迷ったらまずは「映画館」を選びたい。そんなことを考えていた。なので、歩ける距離にあるらしい「香川唯一のミニシアター」へ行ってみる。

街は歩いてなんぼである。大通りを歩いていたら「兵庫町」というアーケードが見えたので、ここで兵庫?と思いちょっと入ってみたWikipediaによれば町名の由来は「地内に兵器庫(兵庫)があったことによる」そう。今更だけど、「兵庫」って兵器庫の意味なのね)。すると、なにやらここはアーケードがすごそうだと気付く。

何層にも重なった分厚いアーチ
「高松兵庫町商店街」アーケード入口の巨大なアーチ。たまらん。

昨年、神戸の元町商店街に行ってからというもの、アーケード街がやたら好きになってしまったわたし。鼻のひくひくするほうへ突き進むことにする。これがすごかった。高松、アーケードがえげつない。新旧さまざまなアーケードがどこまでも続く。なんだこれは。キョロキョロひたすら撮りまくる不審者になってしまった。しばしアーケード写真集をご覧いただきたい。

モダンなやつ古めで、めっちゃ角ばってかっこいいやつ

商店街の中通勤通学中の人々が歩く

シンプルなやつアーチ状にすらなってない超モダンなやつ
築年齢もデザインも多種多様、アーケードの見本市!

いくつものアーケード街を経て、わかりづらい路地に「ホール・ソレイユ」はあった。なんとも味わいのある、かつディープすぎない魅力的なラインナップ。これはなんと素晴らしい文化の灯火か。

映画館の入る雑居ビル外観味わいのあるフロア案内の看板
カルチャーセンターに挟まれた4階が「ホール・ソレイユ」。高松大映と書かれている地下も、現在は「ソレイユ・2(ツー)」として営業している模様。

ラインナップのポスターが貼られたホワイトボード
ソレイユ魅惑のラインナップ! いや、マジで、魅惑だ。『SHE SAID』も『モリコーネ』も全部ここで観れちゃう。

開き戸のある入口
4階「ホール・ソレイユ」の入口。

まだオープン前だったので4階の入口から中を覗いていると、スタッフの方が開けてくださった。えんじ色で統一されたシアターがものすごく魅力的で、住んでいたら絶対通い詰めるだろうなと思ったし、ノープランのくせに今ここで観ていけないことが悔やまれたし、いつかここで映画を観るためにまた来たいと思った。

客席後方からスクリーンに向かって。壁はクリーム色だが座席も幕も、えんじ色。
写真では伝わらないかもしれないけれど、「総えんじ色」な印象を受ける空間が本当に素敵だった。おまけに、開場中のシアター内からマンシーニの『ひまわり』なんかが流れていたりとムード満点。心底惚れ込んだ。

古い薬局みたいな雰囲気。ガラスケース内にグッズやお菓子などが並ぶ。
一転、味わいのあるような、ないような、な受付も好き。

スタッフの方とお話しながらゆうに30分くらいはいただろうか。地下にあるというもう一つのシアターもぜひ見ていってくださいと言っていただいたが、何気に時間が厳しくなってきていたため今回は4階のみとして、おいとました。ホール・ソレイユさん、本当に素敵な劇場だった。こんなご時世だけれど、どうか、耐え抜いてください。

かなり駆け足で高松駅まで戻り、みどりの窓口で切符を買う。さらば高松。次なる目的地へ向かいます。次回、降って沸いた聖地巡礼の巻。「次回」とか言って安心して、すぐ書かないと絶対溜めるだろ。今すぐ書け、自分よ。

自分、書きました。