Netflixドキュメンタリー「13th -憲法修正第13条-(2016)」雑感
Netflixで配信されているドキュメンタリー『13th -憲法修正第13条-』を観ました。2016年公開の作品ですが、Black Lives Matter運動の活発化により再び注目されているようです。
アメリカはその人口に対して受刑者数が異常に多い、という統計から始まる本作。やっぱり犯罪大国だから……と思いきや、そう単純な話ではなさそうでした。
タイトルになっている「アメリカ合衆国憲法修正第13条」は奴隷制を廃止する憲法ですが、短い条文のなかにじつは堂々と抜け穴が設けられていました。
第1項 奴隷制および本人の意に反する苦役は、適正な手続を経て有罪とされた当事者に対する刑罰の場合を除き、合衆国内またはその管轄に服するいかなる地においても、存在してはならない。
第2項 連邦議会は、適切な立法により、この修正条項を実施する権限を有する。
早い話が「奴隷制はもう禁止だよ。あ、でも犯罪者の場合は別ね」ということ。そこから改めて冒頭の「受刑者数が異常に多い」を振り返ってみると、「嘘でしょ……」ってなりました。ある意味ものすごくシンプルな話で、しかし盲点、まさかそんな、です。続きは是非ご自身の目で。
現在高まっているBlack Lives Matter運動にはどんな文脈があるのか、どんな歴史の積み重ねで今に至っているのかという、日本人には感覚的に分かりづらい部分を学ぶのにとても適した作品だと思います。勉強になりました。
映画の力
KKKを復活させたと言われている映画『國民の創生(1915)』が本編中で何度か出てきます。未見ながら冗談抜きで危険な映画というイメージがあったのですが、本作の流れで観るとそのイメージはさらに強まりました。多分もう観ることはないだろうなとも……。
これは映画が確実に「力」を持っていることの大きな証明なわけで、その力の使い方には慎重を期す必要があると改めて感じさせられます。世相の反映が食傷気味に思えることもありますが、社会のあるべきかたちを描き、実現を後押ししていくことが映画の使命なのだとすれば、食傷気味などとも言っていられない状況のようです。
(2020年92本目/Netflix)