4/23からNetflixにて全世界同時配信となった『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン1を観ました。2002年から2006年にかけて2シーズン+OVAとして放送されたアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)』シリーズの続編にあたる作品です。
巷の評判は見ていませんが、正直わたしはこの『SAC_2045』、なんだこりゃと思っていました。というのも予告編などで公開されていたキャラクターの質感があまりにも3DCG丸出し、まるで再現CGかゲーム画面のようなグラフィックだったからです。
とはいえ“攻殻”好きとして一応チェックはしてみなければ、ぐらいの気持ちで、配信開始後すぐに視聴しました。これが、どっこい良かった。あれま。
この記事はわたしと同じような感じの方に向けて書いてます。大きなネタバレはしていないつもりですが、ざっくりの展開なんかは書いてあります。 ネタバレなしで言えるのは「おすすめです」ということ。おすすめです! 面白いです!
第一段階「オリキャスの圧倒的強み」
まず、観始めて早々に感動したのは「声」でした。本作のウリはこれまでの『S.A.C.』シリーズ同様に神山健治監督が携わっていること、そして声優陣がオリジナルキャストであること。
攻殻といえば押井守監督バージョンからずっと田中敦子さんの素子、大塚明夫さんのバトー、山寺宏一さんのトグサなわけですが、2013年に劇場公開された前日譚シリーズ『攻殻機動隊 ARISE』ではキャストが一新されました。まあこれはこれで素子がマイスイート坂本真綾さんだったりして嬉しかったんですけど、なんとなくあのオリジナルキャストに戻ることはないと思っていたんですよね(というかそもそもS.A.C.シリーズが続くなんて考えてもいない)。
それが今回まさかのオリキャスに戻って、実際に【田中素子×大塚バトー×山寺トグサ】あたりの絡みを聴いたらびっくりするほど感動。このアンサンブル、ずっと聴いていたい…と思いました。声の力ってすごいんですね。そのおかげで、グラフィックのことはさておきエピソードを進めていくことができました。
第二段階「みんな大好き、9課再編成」
S.A.C.シリーズのお家芸といえば「9課再編成」でしょう。栄光のチームが一時は離散するものの、暗黙の了解で再起動するカタルシスはこれまで何度も味わいました。そして今回もそれがあります。
物語が始まった段階では、どうやら少佐以下数名が9課ではない組織で暗躍しており、トグサは寂しくひとりで活動している様子。そんなトグサのもとに荒巻課長から「9課のオリジナルメンバーを集めてくれ」という連絡が入って……というのが序盤の展開。そしてシーズン1の折り返し地点、ついにみんな大好きあの公安9課が再起動します。ここまできたらもう止まれない! 未だ拭えぬグラフィックへの違和感はなんのその、観るしかない! だって面白いから!
S.A.C.ファンなら涙ちょちょぎれなサプライズもこのへんから一気に増えてきます。あ、こんなに地続きな世界観だったんだ! 残しててくれたんだ! と神山監督に感謝すること必至です。
第三段階「まごうことなきS.A.C.」
そうして観進めていくと、シーズン1後半はもう「これS.A.C.だわ……」という言い得ぬ感情に支配されることになります。12話と少なめの構成でありながら、ちゃんと息抜きのエピソードがあったり、刑事サスペンスの枠から外れた不思議なエピソードがあったりと、うまくあらわせないけれど間違いなく「あのS.A.C.」の空気感。
『SSS』からもう15年弱が経つというのに、今これほど同じ雰囲気の作品を作れることに驚きました。すっかり続きが観たくてたまらなくなったところでシーズン2へ続く。いつ頃なんでしょう、楽しみです。
そんなわけで『SAC_2045』、S.A.C.好きの方は間違いなく必見の新シリーズと言えます。グラフィックの違和感というのは主にキャラクターで、妙につるつるした質感と、ぬるっとした動き。そのへんがどうにもまだ慣れませんが、そのほかのグラフィックはかなり手が込んでおり全く文句ありません。少佐のキャラデザもとい新しい義体には意外と慣れます。
ここまで雰囲気が踏襲されていると音楽が菅野よう子でないのがやや残念なところではありますが、King Gnuの常田大希氏が主題歌を手掛けたオープニングはグラフィック含めてかなりクール。初見時の期待値を大いに高めてくれました。
初見時といえば、思わず使いたくなる新たな「攻殻用語」にも注目です。観終わってみると結局「掴み」でしかなかったのがまたニクい。ぶりやがって。
以上、あまり気乗りのしていないS.A.C.好きのみなさま、騙されたと思ってぜひご視聴ください!