「ウエストワールド」シーズン2・3を観て思ったこと｜難しげの難しさと映画の強み

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PrimeVideoで配信中のHBO製作ドラマ『ウエストワールド』、シーズン2と3を一気見しました。なお現在最新シーズンとなる3のみ、スターチャンネルEXへの加入が必要です。

西部開拓時代のアメリカを模したテーマパーク「ウエストワールド」で人間そっくりのキャストを演じていたアンドロイドたちが自我に目覚めて反乱を起こし始める、といった筋のファーストシーズンは、『攻殻機動隊』的な近未来SFでありながらその舞台は西部劇の世界、という絶妙なバランス感がたまらない傑作でした。感想は別途書いています。

とにかく好みだったので続くシーズン2・3も早速視聴したのですが、ううん、そう行ってしまったか、という感じでした。シーズン1の評価を下げる気は全くありませんが、続く物語としてちょっと勿体ないかなあ、と思ってしまったのが正直なところです。

というわけで以下、お好きな方はごめんなさい、な感想になってます。ストーリーにはほぼ触れていません。

難しげって難しい

今回ううんポイントになってしまったのは「広げすぎ・複雑化しすぎ・裏がありすぎ」。ファーストシーズン（以降s1）のラストが衝撃のどんでん返しだっただけに、懸念していたところではあります。ただs1の場合はそこが最初で最後の大トリックであり、かつ視聴者側にもネタをずっと見せ続けた状態での種明かしでしたから、納得の「してやられた感」が大いに満足度を高めてくれたわけです。

s1が「構成的なトリック」だったのに対し、s2以降は「物語内のトリック」みたいなものが中心になってきます。いわば精神世界もの、この目で見ているものが実在しているのか分からない、というタイプのやつです。これって視聴者側、納得しにくいのですよね。ハッと気付くと目の前の景色が壁紙のように剥がされていく。そうだったのか！とは、なかなか思えない。それが繰り返されるならなおのこと、全てがオオカミ少年に見えてしまう。

「難しげ」なエンタメ作品って、あくまで「げ」であって、視聴者側がある程度は状況を把握できていることが大事なのだと思います。もしくは非常に混沌としていてもそれが短時間でパッケージとして終わるもの。本作が影響を受けていると思われる『攻殻機動隊』も様々なシリーズがありますが、トータル尺の長いテレビシリーズであっても基本的に一話完結スタイルを取っていて、視聴者は毎回仕切り直せる。「難しげ」は用法用量を守って少量ずつ楽しめるほうがわたしは好きです。

※単純な好みの話をすると、「目の前の景色が壁紙のように剥がされていく」タイプのトリックとわたしは非常に相性が悪い。あんまり他の作品を出したくもないが、映画だと『スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム（2019）』などがそうで、感想を読み返すとやはり「オオカミ少年」というワードを出していた。最低条件として物理的に存在していてほしいのである。じゃないと「ああ、そうすか……」になってしまうんである。

普通に面白いところもあるんですけどね。s2序盤の「開発者と行く園内ツアー」なんていい発想だなあと思ったし、チグハグだけどそれなりに出来のいい「SW」とか、途中までは全然よかった。デロリスたちが汽車に乗ってそのまま人間世界へ出てカルチャーショック受けてくれればよかったのにと、『魔法にかけられて（2007）』的展開を期待していたのがいけなかったのかもしれませんね(笑)

まだまだ映画は強い

海外ドラマってよく「映画を超えたスケール」みたいな言われ方をしますし、そんな作品を観るたび「もはや映画とは」なんてことを実際思ったりもしていましたが、皮肉にも今回「物語を2時間でまとめてくれる映画の価値」が分かったような気がしています。もちろん映画にも完璧じゃない続編・シリーズものはありますが、その点映画の強みはパッケージの単位が小さいことじゃないかと。ドラマシリーズは全シーズン通しての評価がそのタイトルの評価になってしまう。映画ならその1本だけ好きだったり好きじゃなかったりすればいい。派生作品へのダメージが少ない。映画って、強い！

……ってのと同時に、同じHBO製作というところで、シーズン8まで展開しつつ世界観を極端に変えることなく大どんでん返しもせず最後まで走り抜けた『ゲーム・オブ・スローンズ』すごいんだなやっぱり、なんてことも思いました（カメオ出演は気付かなかった！）。『ウエストワールド』なんてs3にしてもう完全に別世界ですから。あの未来感、嫌いじゃないんだけどさ。アクションばっきばきのドロレスも好きなんだけどさ。