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主に映画の感想文を書いています

「王子と踊子(1957)」「マリリン 7日間の恋(2011)」ほか雑感

海外ドラマ「SMASH *1」の影響でマリリン熱が上がってしまったためマリリン週間入りました。50年代のマリリン出演作品、近年の関連作品、最近読んだ本について書く、つもり。

王子と踊子(1957)

王子と踊り子(字幕版)

王子と踊り子(字幕版)

有名どころだと「七年目の浮気(1955)」と「お熱いのがお好き(1959)」の間にあるキャリア後期の作品。舞台劇を映画化したもので、わたしが知っているマリリン作品(前述2作+紳士は金髪がお好き)とは少し雰囲気の違う作品でした。

いかにもマリリン・モンローな出で立ちでこそあるものの、今回のマリリンがお相手するのはとある国の王族たち。おつむの弱い子かと思いきやこの娘なかなか隅に置けんぞ、ということでレヴューの踊り子から一転しイギリス国王の戴冠式へ出席するまでになってしまうような、あれよあれよとマイフェアレディ系ラブコメです。

みんなの期待する「マリリン・モンロー」を提供しつつ、しかし登場人物たちのなかで最も冷静に物事を見て、時には王族相手にアドバイスや手助けもするのが今回のヒロイン。演技力の向上に注力していたという当時のマリリン本人が見え隠れするキャラクターになってます。

ただこれは監督の得手不得手ってとこなんでしょうか、本作のマリリンに上記3作で感じたほどの「圧倒的な可愛さ」はなかったかも。どちらかというとローレンス・オリヴィエ監督自ら演じている摂政大公のトレードマーク「片眼鏡」がセクシーで大変ようござんす。

(2019年72本目)

さてそして、この映画の製作舞台裏を描いた作品が2011年に公開されていました。

マリリン 7日間の恋(2011)

マリリン 7日間の恋 [Blu-ray]

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お芝居に対してものすごく真剣に取り組む反面、不安や自信喪失に押し潰され情緒不安定極まりなかった当時のマリリン。「王子と踊子」の撮影期間中、そんなマリリンの心を支えたのは駆け出しの第三助監督でした。っていうノンフィクションのお話。マリリンのパーソナルな部分、あまり「マリリン・モンロー」ではない部分にスポットを当てた作品です。マリリン役をミシェル・ウィリアムズが、第三助監督のコリン・クラーク役をエディ・レッドメインが演じています。

夫がいるにも関わらず、第三助監督(使いっ走りの下っ端)と親密な関係を持ったマリリン。普通の旦那なら激怒案件なところ、マリリン最後の夫であったアーサー・ミラーは彼女のそういったところに理解?があったらしく、「彼女が男を相手にしたとき、それぞれの状況で、そのときどきの彼女にとっては、大切な意味があったのです」と言っています。本作を観ながら、後述する本の中にそんな発言があったのを思い出しました。

最初これを単発で観ようと思って、そしたら「王子と踊子」という作品の内幕ものであるということを知り、じゃあ二本立てで観ようと。結果、二本立てしておいてよかった! 「王子と踊子」未見でもさほど支障はないかと思うんですが、その「劇中劇」について詳細な説明はないまま進んでいくので意味のわからない台詞が多そうだし、再現されたセットやシーンに面白みを感じられないのはもったいないし、観ておいたほうが数段楽しめるのは確かです。

f:id:threefivethree:20190805204625p:plain:right:w150ミシェル・ウィリアムズのマリリンは正直あんまり似てはいないんですけど、内面という意味ではこんな雰囲気の人だったのかなと次第にしっくりくるようになりました。

エディ・レッドメインはこういう役すごい合いますね。彼女役で出てくるエマ・ワトソンがまた超可愛くてイチオシです。ただ、端役すぎて本当にエマ・ワトソン?と疑っちゃいましたが。当時、ハリポタ以外まったく出てなかったんですね。損な役で可哀想だったのでヒロイン差し置いて写真載せてあげるね。

ローレンス・オリヴィエを演じるケネス・ブラナーは「ローレンス・オリヴィエの再来」と言われているのだとか。それでいうとミシェル・ウィリアムズエディ・レッドメインも調べてみたらそれぞれマリリンやコリンに育ちが似ていて、全体的に内面重視のキャスティングだったのかもしれません。それこそ劇中で度々問題になる「メソッド演技」というやつでしょうか。

風と共に去りぬ(1939)」のヴィヴィアン・リーローレンス・オリヴィエの奥さんだったというのは驚きました(劇中にも地味に登場)。「王子と踊子」の原作である舞台「眠りの森の王子」はこのふたりが主演だったそう。ヴィヴィアン・リーの役どころを映画版ではマリリン・モンローがやる、ってのは話題性があったんじゃないかと思いますが、それにしてはあまりメジャーとは言いがたい作品のように感じます。

キャストは他にも、007シリーズで「M」を演じていた圧倒的存在感のジュディ・デンチローレンス・オリヴィエ賞というのを7度も取っている!)、端役でも見落とすはずのないトビー・ジョーンズキャプテンアメリカでハワード・スタークを演じていた(ああ〜!)ドミニク・クーパー等々、いい俳優揃えました!という感じで画面映えする人たちばかりです。「女王陛下のお気に入り(2018)」のメインロケ地ハットフィールド・ハウスが出てくるのも個人的に楽しいポイント。

束の間の上流階級体験な「王子と踊子」同様、駆け出し第三助監督には夢のような束の間の出来事をやさしく描いた、いい映画でした。

(2019年73本目) Netflixで観れます。

マリリン・モンローという生き方 劣等感を持つ女は美しい(2012)

上記2作を観る前にこの本を読んだのですが、思いのほか映画の感想が長くなっちゃったためこちらについてはまた今度(追記:書きました→「マリリン・モンロー 瞳の中の秘密(2012)」ほか雑感 - 353log)。

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ちなみに本日8月5日はマリリンの命日。この本にも載っているアーサー・ミラーとの写真が、とても幸せそうで好きです。せっかく自分の中でまたマリリンに光が当たったので、もう少しいろいろ観てみたいと思います。「SMASH」のシーズン2もそろそろ届くはず!