ちょっと前に観た「ブエノスアイレス恋愛事情(2011)」で主人公たちが観ていた映画。ニューヨーク機運が高まってきたので鑑賞。
いやあ、映画っていいものですね。ここんとこゲームオブスローンズでだいぶ精神を消耗していて、今は映画とかあんま摂取したくない、みたいに思ってたんですけど。やっぱり映画は楽しい。
ウディ・アレンの作品は「アニー・ホール(1977)」と飛んで「ブルージャスミン(2013)」しか観ていなかったものの、なんとなく肌に合うなという感触があって、やはり今回も肌に合う映画でした。会話がおもしろいから見てるだけで楽しい。
彼にとって、NYはガーシュウィンの曲だった。
冒頭、いきなり「ラプソディ・イン・ブルー」が鳴り響き、次々と映し出されるニューヨークの名所、名所、名所。敢えて白黒で製作され、敢えてガーシュウィンの楽曲のみが使われた本作。もう、掴みが最高。最初の5分で完全に満足しました。1930〜50年代あたりの映画が大好きなので、白黒かつガーシュウィン、そしてニューヨークときたら、もう一定水準以上の満足が得られるわけでございます。ずるいのです。
ときに強いコントラストで演出される映像は、「ゴッド・ファーザー」シリーズや「大統領の陰謀(1976)」などでも同じく陰影を象徴的に使ったカメラマン、ゴードン・ウィリスによるものだそう。真っ黒で見えなくても、仕様です。
とにかくニューヨークの名所が山ほど登場するので、一度でも行ったことがあれば胸の高鳴り必至。橋好きにもたまりません。キービジュアルにもなっているクイーンズボロ橋でのシーンは、ヴェラザノ・ナローズ橋をフィーチャーした「サタデー・ナイト・フィーバー(1977)」の名シーンにも匹敵しますね。
真っ黒で見えなかった推定プラネタリウムのシーンは、セントラルパークと思わしき公園から直結だったので自然史博物館あたりなのかなと予想していたところ、そのようでした。ヘイデン・プラネタリウム。前回訪れた際は博物館の裏通りしか見ずに終わったため、次回はちゃんとチェックしてみます。
ああ、ニューヨーク、行きたい。一年後くらいに行けたらいいな。と画策中。
好きです、おっさん。
「アニー・ホール」にも登場し、おそらく他の作品にも登場しているのであろう、ウディ・アレン自らが演じる不細工インテリおっさん主人公。なんともいえぬ良さがあるんですよね。今回なんて42歳のおっさんが17歳の子と付き合ってるんですよ。しかもゾッコン惚れられて。まあ、なんかこういうおっさん好きな若い子もいるよね、分からなくはないわ、くらいの気分で見れるっちゃ見れるのでウディ・アレンすごい。
でも考えてみたらガーシュウィンの曲がリアルタイムに使われていた頃は、そんな歳の差カップルがなんのツッコミもなく物語の中に存在していた時代でした。それこそ「巴里のアメリカ人(1951)」のジーン・ケリーとレスリー・キャロンだって同じく20歳差だし。歳の差カップル設定はあの時代へのオマージュもあるのかも。
公私ともにパートナーだったダイアン・キートンの溢れる魅力はもちろんですが、おっさんウディ・アレンの元妻役として登場するメリル・ストリープもまたすごい。
一体これまでに何人殺してきたんだ…って感じの顔立ちがやばいです。ていうかエンドロールまでメリル・ストリープだと気付かなかった。若い頃の彼女をまだよく知らないからな。奇しくも同時期のメリル・ストリープ主演作をもう一本借りてあるので、近々観てみます。
ちょっと意外な結末と、おっさんのしょうもない話を名作たらしめてしまう「少しは人を信じなきゃ」の名台詞。軽〜い気持ちで観るのに最適の、よい映画でした。「ブエノスアイレス恋愛事情」で嗚咽しながら観てたのがこれ???と思わなくもないけど、境遇と合致しちゃったら嗚咽するのかもね。
(2019年48本目)
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