ウディ・アレン監督の40本目となる作品「人生万歳!」。これ、めちゃくちゃ好きなウディ・アレンでした。
あらすじ
いかにもウディ・アレン的な主人公(物理学者・人間嫌い)のもとに、到底ウディ・アレンの世界にはそぐわないような天真爛漫の家出娘が転がり込んでくるお話。
ウディ・アレンから頭髪を抜いて自信を足した主人公
今回「いかにもウディ・アレン的な主人公」を演じるのはウディ・アレンではなく、しかし限りなくウディ・アレン寄りのハゲたおっさん。ラリー・デヴィッドさんというこの方、コメディアンらしいんですけど非常にいい塩梅のクソオヤジです。いつもの「ボヤき」も、彼が言うと強い。負けてない。
劇中で彼だけは「アニー・ホール(1977)」を思わせる「第四の壁破り」*1でひたすらこっちに話しかけてくるんですが、それもやはり「ちょっとカメラこっち来い、あのな」という強さ。物理学者だから「第四の壁」を理解してる、っていう裏設定があるとかないとか。
家出娘の名前「メロディ」をメラニーと聞き違え、スカーレットのほうが好きだと言ったついでにアシュレを痛烈disる「風と共に去りぬ」ネタも好きです。
私なりの「ピグマリオン」だ
ウディ・アレンの世界といえばインテリ女子なわけですが、今回出てくるこの子は所謂マリリン・モンロー(のキャラ)的なIQ低めの天然娘 *2。そんな彼女がいつの間にかウディ・アレン的思考に染まって、かつてオードリー・ヘプバーンが演じたような“学びたてのインテリ女子”になっていきます。
劇中で主人公が言うように、「ピグマリオン=マイ・フェア・レディ」的とも言える本作の展開。ヒギンズ教授とイライザ、到底釣り合わないと思われた二人は、なんだかんだ長いあいだ同じ屋根の下で暮らし続け、そして…。
や、そんなロマンチックな話じゃないですけどね。“イライザ”のみならず次々と転がり込んでくる新キャラたちに抱腹絶倒でございました。でもそうか、「ピグマリオン」でも父親が転がり込んできて新たな人生歩みだすんだよな。結構通じてるな…。
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素晴らしき哉、人生!
「強いクソオヤジ×明るい天然娘」のおかげで本作、すごくカラッとしています。めっちゃブラックコメディなんですが思わず声出して笑っちゃうようなギャグ多数。こんなに明るいウディ・アレン映画もなかなか珍しいのでは、と思います。
原題(Whatever Works=うまくいくならなんでもあり)の直訳ではない「人生万歳!」という邦題は、劇中に出てくる名作映画「素晴らしき哉、人生!(1946)」のイメージで付けられたのかもしれません。実際に本作、しれっとホリデームービー風に終わるのが憎たらしいところです。と言いつつ終わる直前に主人公が自殺未遂起こしてるんですけど、着地は明るいのです(ダブルミーニング)。
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本国公開は6月なくせに日本では12月公開ということで、しっかりリアルタイムなホリデームービーとしての楽しみ方もできたんですね。羨ましい。これは映画館で観たい映画。
ちなみに久しぶりのニューヨーク撮影だった本作。自由の女神からユニクロ(!)、そしてニューイヤーズ・イブまで、街を知り尽くしたウディ・アレンならではのニューヨーク映画になっております。時期的にユニクロは五番街の店じゃなくてソーホーの模様。
書きたいことは尽きませんが、このへんで。ウディ・アレン映画っぽさを存分に味わえて、かつ後味爽やかという奇特な作品です。とてもおすすめです!
(2019年116本目)
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*1:本作の脚本は「アニー・ホール」と同じ70年代に書かれたものが元になっているそう。「第四の壁破り」も初稿からあった設定なのか、それとも今回新たにセルフオマージュ的な入れ方をしたのか、そのあたりは気になるところ。
*2:演じるエヴァン・レイチェル・ウッドさんは真逆なイメージの方で驚き。女優さんってすごい。