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あらすじ
ある街にカリガリという博士がやってくる。博士は街のお祭りにて「夢遊病者」を売り物にした見世物小屋を開いた。その夢遊病者は全てを予言できるという“うたい”だ。ひとりの男が「私は何歳まで生きられる?」と問うと夢遊病者は答えた。「お前の寿命は明日の朝までだ」。
翌朝、その男が殺されたという報が入る。怪しんでカリガリ博士の家を見張っていた警察が慌てて「夢遊病者の寝床」を開けると、そこに入っていたのは人形だった。博士は夢遊病者を使って殺人を愉しんでいたのだ。最終的に夢遊病者は逃走中に息絶え、博士も精神病院に収監されて幕引きとなる。
殺された男の友人がここまでの経緯を話し終えて席を立つ。
というのはネタバレしてないあらすじです。
元祖探訪
町山智浩さんの「一度は観てくれ映画」シリーズとして取り上げられていた本作。このシリーズでは他に「8 1/2(1963)」「ミツバチのささやき(1973)」などが紹介されており、いずれも今年鑑賞しました。「こういう系の映画」には当然だけど「元祖」があるんだよ、っていう、分かっちゃいても観るにはちょいと腰が重いような作品をあらためてプッシュしてくれる企画です。
200円ほどで有料音声解説もありますのでご興味ある方はぜひ。わたしはこれを聴きながら寝たせいか、とびっきりの悪夢を見ました。
で、この「カリガリ博士」っていうガリガリ君みたいな作品はどういう「元祖」なのか。なにせ映画史的にも古い映画ですから多くの面で影響を与えているようなのですが、特に本作でウリとされる部分は「どんでん返し」です。上に書いたあらすじ、そこまででも十分凝ったストーリーだなと思うんですけど(しかもサイレント映画なので、よくこの複雑な展開を表現できてるなと驚きました)、じつはここから先がどんでん返しになっていて、経緯を話していた語り部の男は精神病院に収監されており、院長がカリガリ博士であるという言わば「衝撃のラスト」で終わるんです。
じつはここまでの話ぜんぶ妄想だったんだよ〜ん、みたいな映画ってよくありますよね。妄想でなくとも、完全にひっくり返してく系の映画、ありますよね。ぱっと思いついたのだと古くはビリー・ワイルダー監督の「情婦(1957)」とか、「ユージュアル・サスペクツ(1995)」とか「サイド・エフェクト(2013)」とか、どれも妄想ではないな…まあとにかくそれ系の「ラスト何分、あなたは騙される」系のやつの元祖っていうことになるそうです。
もちろん、あくまで歴史上の元祖であって、必ずしも昨今のどんでん返し系作品が本作から影響を受けているとは限らない。これは音楽でもなんでもそうですが、間接的に「影響を受けた作品から影響を受けている」というケースも多くある、ということですね。
大きな影響を与えた他の点としては、妄想シーンで使われる「ファンタジックに全てがひん曲がった非現実的なセット(ディズニーランドのトゥーンタウンぽい)」であるとか、チェザーレと名付けられた夢遊病者の奇抜かつスタイリッシュなルックスだとか、もちろん撮影技法だとか、いろいろあるようです。
シザーハンズ [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
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洗練といえば。DVDの特典映像で冒頭に淀川長治さんの解説が付いてるのですけど、ドイツ映画である本作に関して、いかに当時のドイツ文化が高い水準を持っていたかという熱弁をされています。この時代に生まれ育ったマレーネ・ディートリヒ(「情婦」など)はそりゃ名女優になるよ!的な。そしてこの洗練されたドイツ文化を全部壊したのがヒトラーなんだ、と。そのへんは全く知らないので、そろそろヒトラー系題材の作品にも手を出さないとなと思っているところです。ちょうど「シャイニング」のホロコーストメタファー説なんてのも見たところだし…。
サイレント映画、さすがにちょっと抵抗あるなーなんて躊躇してましたが、しばらく観てたらわりと慣れちゃいますし、オーバーアクションな演技で結構わかりやすいですし(むしろ「死のショック」なんかはトーキーよりも真に迫ってる感じがしましたね。心の中をそのまま出してる感じ)、なんといってもパブリックドメインなのでYouTubeなどで合法的にフル視聴できます。日本語字幕付きのもあります。尺も1時間程度です。ぜひ、どーぞ!
というわけで、今年の目標は200本鑑賞ですが、100本まで到達しました。感想も100本ぶん書いたということか…。一度まとめ記事でも書こうと思います。
(2018年100本目)