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自主映画時代の大林宣彦監督作より「絵の中の少女(1958)」ほか雑感

商業映画デビュー以前の大林宣彦監督作品を集めたDVD大林宣彦 青春回顧録 DVD SPECIAL EDITION』を購入、まずはDISC1に収められている8mm作品6本から観ました。

なお制作年に関してパッケージ上とその他資料で違いがあったため、ここでは著書等にフィルモグラフィーとして記載されている制作年&順序で表記します。

この時代の作品は壁に映して観ていたはずなのでプロジェクターで鑑賞しましたが、とてもいい感じでした。

『だんだんこ(1957/11min)』

ほぼ同時期のフランス映画『赤い風船(1956)』を思わせるような作品。あちらが風船ならこちらはボールが主役のちょっとしたファンタジーで、「ボールの主観」という実験的な映像表現なども見ることができます。

『絵の中の少女(1958/30min)』

「今観てみると『廃市(1983)』に構造がそっくりですね」とは監督談。確かに間違いなく映画『廃市』の原型という印象を受ける作品でした(もちろん真の原型は福永武彦さんの同名小説であり、既に同作への心酔具合が伺える作品と言える)。恭子夫人が主演、大林監督も出演しています。8mm作品のなかでは最も長尺ですが非常に完成度が高く、オープニングから引き込まれてしまう「まごう事なき“映画”」です。ただならぬ才能を感じます。

『木曜日(1960/18min)』

当時出てきたヌーベルヴァーグ的な仕上がりを意識した作品。「未完成」をあえて作品に取り込む手法は、のちの『北京的西瓜(1989)』などにも繋がっていくといいます。作風としてはこのなかで最も鬱々としており、大林監督がこの方向へ行かなかったことに感謝するのみ。

中山道(1961/16min)』

ありとあらゆる風景をコラージュした作品。コマ撮りでもくもくと姿を変えていく入道雲、やたら躍動的に撮られた引き戸、サブリミナル的表現も含んだ執拗なカット割りなど、これをひとつひとつ手作業で編集しているのだよなと考えると気の遠くなるような一本です。

『形見(1962/17min)』

大林映画には墓石がしょっちゅう登場しますが、これは「大林宣彦×墓」の記念すべき一本目、かもしれません。本作で見られる「墓石に血が滴る」なんていう表現は晩年まで使われていましたからね。予想外の特撮(操演)も見どころです。

尾道(1963/17min)』

1950〜60年代に撮りためていたという尾道の情景をまとめた、今となっては資料価値も高い作品。瓦屋根の間を走り抜けていく蒸気機関車(小津映画で見られるようなまさにあれ)、大林映画おなじみの連絡船、水の都といった風情に溢れた海辺のあれこれ。大林宣彦史上いちばん尾道を美しく撮っている映画かもしれません。

これらはいずれもサイレント映画のていで音声がなく、劇伴は既存のクラシック曲や監督自身の作曲によるピアノ演奏が使われていたそうです。残念ながらそのテープは現存せず。しかしピアノ演奏に関しては、なんとこの『青春回顧録』リリースに際して監督自ら30〜40年ぶりに弾き直した録り下ろしの劇伴が新たに付けられています。これがなんとも饒舌な演奏で、すごい。

また、作品毎に監督の解説が収録されており、こちらも聞きごたえたっぷりです。大林作品はこの解説のおしゃべりがいいんですよねえ。少しずつソフト買い集めたいなあ。

(2020年142〜147本目/DVD購入鑑賞)

大林宣彦青春回顧録 DVD SPECIAL EDITION

大林宣彦青春回顧録 DVD SPECIAL EDITION

  • 発売日: 2001/05/23
  • メディア: DVD
16mm編のDISC2はまた後日。かの名高い『ドラキュラ』などを観るのが楽しみです。

→観ました。ドラキュラすごかった……。