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主に映画のあらすじと(まとまりのない)感想文

その土曜日、7時58分(2007)

十二人の怒れる男(1957)」のシドニー・ルメット監督作品。原題は「Before the Devil Knows You're Dead」、劇中の言葉で訳すと「早く天国に行けますように。死んだことが悪魔に知られる前に」。

あらすじ

お互い金に困っていた兄弟アンディとハンクは、限りなくローリスクな大金入手の手段として「両親の経営する宝石店で穏便に強盗する」というプランを立てるが、実行担当の弟が日和ったことで作戦は失敗。それどころか手違いで母親の命を奪ってしまう。想定外の事態に困惑する兄弟と、次第に事の真相を察していく父親。「金が欲しい」というただそれだけの動機から崩壊していく一家を描いた物語。

雑感

先日鑑賞した「十二人の怒れる男」はシドニー・ルメット監督の映画デビュー作でしたが、今度はいきなり遺作でした…(知らなかった)。84歳の時に撮った作品だそうで、じいちゃんすげえな…!!と思うも、それを言ったらクリント・イーストウッド御大だって87歳で「15時17分、パリ行き(2018)」を撮ってるぞ!っていう(笑) タイトル、似てますよね。真っ先に連想しました。イーストウッド、どうか長生きしておくれ。

さて、デブ男がスパンスパーンッとバックしてる(車ではない)シーンから始まるなんとも掴みのいい本作。序盤、おマヌケに失敗する強盗のくだりを見せられている時点ではまだなんのことやらです。でもそのうち、いろんなアングルから時間軸を行ったり来たりする手法でだんだん状況がつかめてきます。今回はなにも事前情報を入れずに観たので、結末がどう転ぶのかも分からず、気付けば画面に釘付けです。

キリキリキリ…と音を立てて昇っていたジェットコースターが下り坂に差し掛かるのは、母親の葬儀のシーンでしょうかね。ここで一命を取り留めるかそうでないかというのは大きな別れ道です。もしも取り留めていたら、いろんなことを隠し通して、ぎりぎりどうにか立て直せていたかもしれません。でも事実、殺すつもりのなかった母親を殺してしまった。これはもう取り返しがつかないわけで、一気に地獄へと急降下。ただただ悲惨な家庭崩壊の始まりです。

本作すごくキャストが良くて、なかでもお兄さん役のフィリップ・シーモア・ホフマンが素晴らしかったなあと思います。常に日和まくりの弟(イーサン・ホーク)に頭を抱えながらもフウッと一息ついて「兄ちゃんに任せとけ」のスタンスを取ってるのが、泣けるんだよなあ。つってもバリバリの犯罪者なんですけど。そこに感情移入できちゃうのが本作の魅力かも。あとはあの「勢いに任せない破壊行動」のシーンが最高に怖くて。理性を保ちながら家中のものを淡々と破壊していく感じ、あれはヤバい。ちなみにこの方46歳で亡くなっているのがまたなんとも悲しい…。

お父さん役のアルバート・フィニーもね、最終的に主人公へと格上げされるのが、騙し絵見てるような気持ちにさせられます。むしろイーサン・ホークどこへやらって感じですよ。これは「TAMAFLE BOOK 『ザ・シネマハスラー』」で読んでゾゾッとしたんですが、最後の心電図シーンから読み取れるお父さんのバックボーン、っていう。いやいやいや、名作っすねこれは…。該当の評はこちらの動画などでも聴けますのでぜひゾゾッとしてみてください。

ところでアルバート・フィニーって「いつも2人で(1967)」でヘプバーンの旦那やってた人なんですね。全然気付かなかった。あちらも時間軸を行ったり来たり系の作品だったような。あと、「シェイプ・オブ・ウォーター(2018)」で大活躍のマイケル・シャノンっぽい人が出てるなーマイケル・シャノンかなー?と思ったらマイケル・シャノンでした。やっぱりいい顔してんな。

「死んだことが悪魔に知られる前に」という原題がかなり粋だったので、「その土曜日、7時58分」とかいう邦題はシャレているようでいて全然シャレてねえな!って思っちゃうんですけどまあ、運命の分かれ道になった時間ということで。金はなくとも悪事にだけは手を染めるまい、と身を引き締められる作品でございました。

(2018年161本目)