353log

主に映画の感想文を書いています

サンライズ瀬戸で行くノープラン旅行記【③松山の夜を味わい尽くす】

サンライズ瀬戸の話は初回で終わったタイトル詐欺な旅行記サンライズ瀬戸に乗りたい(ただしその先は決めてない)」その3。前回、高松から松山、さらに愛媛の端っこ八幡浜港までやってきて、おもむろに『すずめの戸締まり』聖地巡礼を始めた353。九州までフェリーに乗りたい気持ちをぐっと抑え、本日の寝床・松山まで再び戻ります。

サンライズ瀬戸の乗車記はこちら。

▲映画『すずめの戸締まり』聖地巡礼・四国編はこちら。


2月2日(木)pm:松山の夜を味わい尽くす

16:19、松山駅に到着。いくら愛媛に「自動改札がない」と言えども松山駅くらいにはあるのでは、などと思っていたがやはり本当に存在せず、広めの有人改札で切符を手渡しながらあらためて驚く。

駅を出ると路面電車が見えた。ああそうだ、この街は路面電車が走ってるんじゃん、と胸高鳴る。ていうか、手元の乗り換え案内をよく見ると、わたしが乗るべきなのはまさにあの路面電車だ。知らんかった。

1両編成、レトロみ溢れるオレンジの路面電車が、信号を挟んだ先に停まっている。
おー、路面電車だ。と興奮しているときの写真。

路面電車の停留所へ着くと、どうやら結構本数も少ないことがわかった。さっき写真なんて撮ってる場合じゃなかった。おまけに、これは四国じゅうずっとそうだけど、交通系ICカードが全く普及していないので何につけても現金である。うまく乗れるかしら、ちゃんと両替できるかしら。まるで海外旅行のごとく、いちいち緊張する。旅っぽい。いいですね。

時刻表。10時〜19時の間は1時間に4本。出勤時間帯は6本ある。
1時間に4本もあるのだから少なくもないのだが、逃した直後の15分待ちは感覚的に痛い。

停留所から見た松山の街。道路に線路がある光景は、独特でよい。
路面電車の街、いいなあ。

乗るべき路面電車、到着。先程のレトロからは一転、スタイリッシュな黒いボディ。
これに乗ります。

乗るべき路面電車、到着。幸い停留所の乗客たちはお仲間も多かったようで、みんなそこそこ不慣れな感じで両替に勤しんでいた。しばし揺られ、「大街道(おおかいどう)」駅で下車。なぜかクリスマス感の残る巨大ツリーが華やかな中心街に、ほっとする。都会っ子だから、なんだかんだ賑わっている場所が落ち着くのである。

全体的に都会的なデザイン。入り口には青色LEDのツリーが光る。
大街道商店街の入口。少し後の時間帯に撮ったもの。

オレンジのレトロな路面電車と、海外っぽいネオン看板が、ちょうどそれっぽい雰囲気を出している。
同じ場所の反対側。こちらはなんとなくヨーロッパっぽさが漂う。ヨーロッパ行ったことないけど。

白と木目が基調の、ナチュラルテイストなお部屋。
本日のお宿!

まずは、大街道商店街の中にあるホテルへチェックイン。とても綺麗なホテルで、とても気分が上がる。時間はまだ17時台。瀕死だったカメラを充電しつつ、このあとの予定を検討。結果、こうなった。

  • 旅行支援クーポンで、いいものを食べる。
  • 近くのミニシアターで映画を観る。
  • ホテルの温泉に浸かって、就寝。

潤を追ってご報告していきます。


①旅行支援クーポンで、いいものを食べる。

クーポンは2,000円ぶんも貰えた。滞在中に使わないといけないが、お土産購入に充てるのもなんだかな。わたしは食への興味が薄いため、旅先でもコンビニ飯で済ませがちである。よし、今回は月並みに旅行っぽいものを食べよう。

検索した結果「かどやの鯛めし」が定番らしいので、早速向かう。意外と空いており、待ち時間ゼロでカウンターへ通してもらえた。平日だからかなと思ったが、出る頃には何人も並んでいたので、どうやらいい時間に入れたらしい。

お店の入り口。階段で地下へ降りていく。
味わいというよりは都会的なお店。

注文したのは「宇和島づくし鯛めし膳」、お値段2,200円。それにノンアルコールビールをつけて、実際のお会計は700円ほど。旅行支援、すばらしや。ありがたや。

所狭しといろんなものが乗った豪華なお膳です(説明の少なさは食への興味の薄さゆえです)
どどん。

なかなか豪華なお膳だったので時間がかかるかと思いきや、おそらくはルーツが「火を使わない漁師飯」だからなのであろう、松屋くらいのスピードで出てきたから驚いた。感想は、誰かが食べログ的なところに書いていたけれど「高級な卵かけご飯」といった感じ。わたしなどが食べれる機会をいただけて感謝。

②近くのミニシアターで映画を観る。

「松山で松屋食べたの?!」と呆れられるパターンを無事回避したので、余生は好きなように過ごす。今朝、高松で行った「ホール・ソレイユ」さんがとても素敵だった。やはり松山でも何かしら映画館へ行きたい。

もともとはシネコンシネマサンシャイン衣山」で、いっそアバターとかスラムダンクとか観ちゃおうかと思っていた。だがこれ、路面電車のダイヤ感もあるのだろう、片道30分以上かかるらしく、うーん、それはちょっとなと、寝台列車に9時間半揺られてきた男は(一体どの口で)渋った。

古めのビルに「大街道シネマサンシャイン」の看板。しかし1階は「まちコミュスポット」である。絶対違う。
ちなみにこれは大街道商店街にある「大街道シネマサンシャイン」なのだが、どう見ても営業中には思えない。というか確か、ここはもうなくなっているはず。はて。

「IMAX」「アバター」など、商店街の小さなビルに似つかわしくない(と言うのも偏見だが)ワードが並ぶポスター。
話は前後するが、このあと行くシネマルナティックの方に伺ったところ、ここはシネマサンシャインの持ちビルで、閉館した今も「シネマサンシャイン衣山」などの宣伝を出しているらしい。そういうことか。

もう一つの選択肢は、ホテルからほど近い場所にある「シネマルナティック」というミニシアター。ただこちらはこちらで、なんかディープすぎる気がして、行ける時間の上映作も全然興味ないしなーと、やはり渋っていた。無理に観なくてもいいかなあ。

でも「興味ない」ほどあてにならないものもない。大変申し訳ないのだが現時点では「全然興味ない」と思っている新作日本映画『終末の探偵』について、一応Filmarksのレビューをチラ見してみることに。すると驚きのワードが目に入った。

「町田が舞台」

まちだが?! ぶたい?!

何を隠そう、わたくし353は町田生まれ町田育ち、今も大体町田あたりに住んでいる町田の子だ。町田を舞台にした映画『まほろ駅前多田便利軒』は3回観に行った。そんな子が、松山で、町田の映画を、観るの、激アツ、ていうか、観ない選択肢、ないじゃん。シアター一期一会 夜の部、決定です!(※シアター一期一会はTBSラジオ「アフター6ジャンクション」にて毎週水曜日に放送されている、映画館にまつわる思い出話の投稿コーナーです)

というわけで前口上が長くなりすぎたけれど、勇んで「シネマルナティック」さんへ向かった。その前にちょっとアーケードも愛でた。なかなかいいですよ、ここも。

目一杯明るいアーケード暗めの天井に、びかーっ!と白ライトのラインが走るアーケード

分度器型の巨大な入口アーチが、道路に対して斜めに配置されている。
アーケード一期一会である。

さて「シネマルナティック」さん、まず、外観が、かなり、ディープ。

演芸場の「のぼり」が必要以上にディープさを演出してくれちゃっている。
思わず、怯む。

前情報がなければ、失礼ながらわたしはここに足を踏み入れようとは思わないだろう。演芸場の圧がすごいし、隣に本格的な韓国屋台があるのもすごい(むしろこっちは行きたい)。

なんか、祠の前に作品案内の看板が立っている。
作品案内すら緊張する。

「チケットは4Fで」と書かれたシネマローズの看板と、その奥に韓国屋台のテント。
4階にあるらしい「湊町シネマローズ」は成人映画専門の、本当に限りなくディープなところっぽい。調べてもなかなかぎょっとするようなものしか出てこない。

薄暗い階段に「シネマルナティックは2Fです」の貼り紙
そうは言われても怖い。

が、素敵な映画館であることを知っているので怯まず入る。怯んだけど。

レコード屋の名店みたいな香りがする。
シネマルナティック入口。これは間違いなくいい映画館!

市松模様の床と、パンフなどの並んだ黒いカウンター、奥の棚にはおそらくパンフなど無数の資料が保管されている。
カウンターも素敵。ここでいっぱい立ち話させてもらいました。

入ってしまえば安心。朝の「ホール・ソレイユ」さん同様、スタッフの方が気さくに対応してくださった。写真を撮らせてもらっていたところ、今お客さんいないのでシアター内もどうぞ〜とも言っていただいたり。

ビロード張りの座席が雰囲気ある
160席のシアター。後ろから見るとまあ普通なのだが——

家庭的な小さな座布団が全ての座席に乗っている! 壮観。
なんと全座席に座布団!

平日だし、独り占め観賞の可能性もあるかなと思っていたが、上映時刻の頃には2〜3人増えていた。「たまには日本映画でも観ようかと思って」なんて言いながら入ってくる常連さんらしき方も。まちの映画館、という感じがしてとてもよい。

さて、ブラックの缶コーヒーを片手に観た『終末の探偵』は予想以上に「町田の映画」で、めちゃくちゃ楽しんだ。出てくる場所出てくる場所、九割がたは一発見ただけで特定できる。おいおいそんなとこにヤクザ闊歩させないでくれと笑ってしまうようなシーンも多々。あんのかなあ、町田にも、あんな裏社会。

壁の映画ポスター
『終末の探偵』ポスター。奥には『フォーエバー・チャップリン』や『チョコレートな人々』などお馴染みの作品も並ぶ。

意外だったのは、メインストーリーが「行方不明になったクルド人の女性を探す」というものだったこと。武イリヤさん演じる「フィリピン人の両親を強制送還させられた過去のあるヒロイン」がすごくよくて、『マイスモールランド(2022)』を観た人には状況の切実さがわかりやすい作品だったと思う。『ベイビーわるきゅーれ(2021)』のアクション監督・園村健介さんによるアクションシーンもかなり見応えあり。ちなみに髙石あかりさんが出ている。

町田のこと抜きにしても十分おもしろい映画だったわ、と大満足で席を立ち、スタッフの方とまたしばらくお話して、朝に引き続きほっこり気分でおいとま。「高松のアーケードえげつないですよね!」なんて話もできたので、「予習」の甲斐あり。やっぱりえげつなかったらしい。

奥まった場所にある自販機と、その手前になぜか映写機。
ありがとうございました!


③ホテルの温泉に浸かって、就寝。

歩いて数分のホテルに戻り、最上階の温泉へ。だいぶ脚を酷使したので、大きな風呂に浸かれるのは本当にありがたい。しかも露天風呂なんていつぶりかな。隙間から松山城が見えたし、天を見上げたら月がいた。さらに、風呂を出たらヤクルト的飲料とアイスのサービスまであった。幸せだ。

幸せはまだ続く。このホテルは「夜鳴きそば」が名物らしく、どういうことかというと、21:30以降は食堂で「無料のラーメン」が食べれる。なんてこったい。おまけに、疲れた身体にしみわたるおいしさ。はー。至れり尽くせりだなあ。

あおさ、ネギ、メンマの乗った、少し脂多めの醤油ラーメン。
あおさが嬉しい。塩味も絶妙。

部屋に戻り、脚にボルタレンローションをよく塗って、昨晩同様、普段よりも早めに就寝。明日はまあ、8時ぐらいに起きればいいっしょ。おやすみ。「松山の朝と関西」は次回にまわそう。

サンライズ瀬戸で行くノープラン旅行記【②愛媛で『すずめの戸締まり』聖地探訪】

ノープラン旅行記サンライズ瀬戸に乗りたい(ただしその先は決めてない)」その2。あこがれの夜行列車「サンライズ瀬戸」で高松までやってきた353は、アーケード街を愛でながら香川唯一のミニシアター「ホール・ソレイユ」さんを見学。ノープランとはいえ時間が危うくなってきたので駅まで戻り、今度は愛媛に向かいます。

▲その1はこちらから。サンライズ瀬戸の乗車記はこの記事のみです。


2月2日(木)am:愛媛の端っこまで移動する

9:42。高松駅から予讃線「特急いしづち」に飛び乗り、まずは松山まで2時間半の列車旅。サンライズに揺られまくったばかりだし2時間半は長いかなと思ったのだけど、案外まったく苦ではなかった。べつに車窓がおもしろいとかでもない。寝てたわけでもないし、音楽やラジオや本なんかで時間を潰していたわけでもない(むしろ旅行中、そういうのは一切摂取しなかった)。なぜだか分からないが、ひたすら穏やかな2時間半だった。これが退職パワーか。

4列シートの特急車両
特急いしづち自由席。香川と愛媛の境目あたりで、缶コーヒーと、昨晩開けなかったメロンパンなどをむしゃむしゃと食べた。えらく幸せだった。

ヘアライン加工のシルバーな車体に蛍光グリーンやイエローのアクセントが入ったシャープな車両。
途中駅で、かっこいい車両に遭遇。瀬戸内ストリームエクスプレスというらしい。

退職パワーにより、あっという間に松山駅へ到着。ここで「特急 宇和海」に乗り換え、なのだが、アナウンスされた「お乗り換えの方は、降りられたホームの先頭車寄りに〜」の意味がわからず少し彷徨う。ん? ん?? 宇和海どこだ???

いしづちの目と鼻の先に宇和海が停まっている
理解。

答えはこう。いしづち先頭車から目と鼻の先に宇和海が停まっていた。なるほど、なるほど……。そういうホームの共有方法があるのね……。

少し角張ったボディ、縦方向に何本も入るオレンジのライン。
ちなみに、いしづちもデザインは結構かっこいい。

2両編成の宇和海に乗り込もうとしたとき、ホームのだいぶ先に「見覚えのある車両」がいたので思わず駆け寄り、写真を撮った。

映画「すずめの戸締まり」四国編で登場するキハ54形。ステンレスの車体に、水色のライン。かなり薄汚れている。
(一部の方には)おわかりいただけるだろうか。

これ、じつは映画『すずめの戸締まり(2022)』に登場する車両「キハ54形」なのである。そして、偶然そんな場所に来るはずはない。今回の旅、後付けの裏テーマは『すずめの戸締まり』聖地探訪。行けるところまで、行ってみよう。

2月2日(木)pm:『すずめの戸締まり』聖地探訪・四国編

もともとそういうつもりだったわけではない。ただ、ざっくりとした旅程を考えていく初期段階で「これは『すずめ』だろうな」と思った。

新海誠監督最新作『すずめの戸締まり』は、九州・宮崎あたりから始まって、フェリー、鉄道、車などさまざまな交通機関を使いながら東北へと向かっていくロードムービーだ。


※詳しくは、僭越ながら「まっぷるトラベルガイド」さんに聖地巡礼ガイドを書いています。実際にこの目で確認したのは都内の聖地だけなのに、とやや後ろめたい気持ちだったことも動機。


物語の流れに沿うならば、大分の臼杵港からフェリーに乗って愛媛の八幡浜港へ行き、そこから徳島まで移動して大鳴門橋明石海峡大橋にて神戸へ入り——といったルートになるのだが、いかんせん大前提が「サンライズ瀬戸」なのでその旅程は組めない。高松スタートで「聖地」へ赴く場合、愛媛まで行くか、徳島まで行くか、の2択となる。

徳島ルートは、車がないと厳しい。年季の入った純金免許所持者のわたしには、レンタカーなどという選択肢はほぼグレーアウトだ。よって、愛媛ルートに決めた。とりあえず、愛媛の端っこ、八幡浜港まで行く。

ところで、「特急宇和海」はすごかった。次から次へとトンネルへ入っては出、入っては出、ジェットコースターのように轟音爆速で駆け抜けていく。勾配もすごいらしく、飛行機かというレベルで耳が詰まる。調べてみたところ、この区間は最大120km/hくらいで走るんだそうだ。いや、納得かもしれない。とても2両編成のローカル線から想像できるようなスピードではなかった。まじやばい。おすすめです。

目的地の「八幡浜駅」の手前には劇中で「ダイジン」がバズっていた「伊予大洲駅」もあるが、本数の少ない路線で途中下車をする勇気はないので通過するのみとする。

運転席の窓から見える連絡通路
先頭車両から見える伊予大洲駅。駅舎が特徴的なので本当はそちらを撮りたかった。

宇和海に50分揺られ、13:14「八幡浜駅」へ到着。映画を観た当時はさすがに四国まで聖地巡礼は無理かなと思っていたので、実際その地へ降り立てたことがしみじみ嬉しい。道は繋がっているのだな。

ここからはしばし写真にてご案内。

八幡浜駅へ降り立つ。こちら側のホームは映画には出てこない。

車体がシルバーではないのと、ヘッドライトの形が違う。
そこに停まっているこいつは、キハ54形ではない。

茶色の歩道橋で繋がれた、2つのホーム。
渡った側のホーム、こちらがお馴染みの角度。草太イスを抱えたスズメは、ここで列車を待つ。

窓口と、人が立てるタイプの有人改札(使われていないっぽい)が並ぶ昔ながらの駅。
改札口。自動改札はない。というか、松山だろうとなんだろうと、愛媛に自動改札はない、らしい。驚いた。

劇中に登場する「イスに変えられた主人公」を模したもの。
振り返ると、草太イスがいる。脚三本でしっかり立っている。

戸締まりしながら歴史の街並みを楽しもう!というチラシ。
「#八幡浜大洲の戸締まり」という町おこしキャンペーンをやっており、街のそこらじゅうに草太イスがいるらしい。

いた。
あっ。

おしゃれな喫茶店?パン屋さん?みたいなところの軒先に置かれたベンチの上、しれっと草太イスが立っている。
駅出たら早速いたわ。

草太イスは背もたれに目がついているのだけど、このJAのビルも窓のところが目っぽい。
なんかJAの建物まで草太に見えてきたよ。

駅舎
そんなJAもある八幡浜駅、も草太に見えてきたな。

道路の行き先標示。直進・八幡浜港。左折・宇和島。右折・三崎港。
バスは時間が微妙なので、25分ほど歩いて八幡浜港まで向かう。こんなところにも三崎港が。

川に飛び出すかたちで設置された駐車スペース
川沿いには、こういう「駐車場」がずっと続いている。「バックに注意!」って立て札がそこらにあるのだけど、いや怖いなこれは。

それなりに幅広い川に沿って、家々が整然と並んでいる。
川沿いに整然と並ぶ家々は、京都・鴨川のミニ版みたいな感じ(と言うほど小さな川でもないが)でなんか独特。

青緑色の囲いが目を引く、造船所のドック。大きなクレーンが2基そびえている。
ひとつ前の写真で奥の方に見えていたクレーンは造船所。劇中にも登場する。

遠くのほう、大きなフェリーの後ろ半分が見えている。
フェリーがちょうど港に入ってくるところだった。赤いゲートのようなものは、かつての船着場。

倉庫の立ち並ぶエリア。すずめに捕まえられた草太イスが「あのなあ……」とボヤく直前の場所。
このあたりで道路側に振り向くと、草太イスがクールに去ろうとしたあの場所。劇中では、ここから八幡浜駅へと瞬間移動する(実際には前述のとおり25分ほど歩く)。

草太イスを釣れたすずめがフェリーを降りてすぐ、途方に暮れながらも仁王立ちしているシーンのロケーション。
そして! こちらが『すずめの戸締まり』トップクラスの聖地であろう「仁王立ちポイント」。ただし、目の前にどーんと建っているはずのフェリーターミナルは老朽化に伴い取り壊され、船着場ごと右側に移動している。かつての光景はGoogleマップアーカイブや、八幡浜市Instagramなどで見ることができる。よく見ると、停まっているトラックが同じだ。けっこう前のはずなのに。

4階建てで、各階にバルコニー(デッキ)が広く設けられた、モダンかつ避難場所として考えられたデザイン。
これが現在のフェリーターミナルである。南海トラフ対策として、津波からの迅速かつ円滑な避難の確保を目的とした設計になっている。

1階の待合ロビー、大きなガラス窓のすぐ向こうに、車両搭乗口の大口を開けたフェリーが停まっている。
ロビーからは、目の前にフェリーが見える!

ロビーから外に出て撮ったフェリー。
九州(大分・臼杵)と四国(愛媛・八幡浜)を結ぶ「九四オレンジフェリー」の「おれんじ四国」。まさに、すずめたちが飛び乗ってきたフェリー。劇中では夜行便として描かれるが、実際の乗船時間は2時間ほど。

島々が遠くに見える。
4階のデッキからフェリーと八幡浜を眺める。本当はここから臼杵までフェリーの旅をしたかったが、収拾がつかなくなるので今回は諦めた。

そろそろ本文が喋るべきか。そう、本当は大分・臼杵まで行くことも考えた。それこそ時間的にはこの便に乗れば余裕で行けた。九州入りしてしまえば、映画序盤「廃墟の温泉街」のモデルとなった由布院の「湯平温泉」に泊まったりすることもできる。どうせなら! ……しかし、その旅程を組むには日数が足りなかった。またいつか、ご縁があらんことを。

さて、この八幡浜港フェリーターミナルには非常に凝ったフォトスポットもある。

メインビジュアルの「後ろ戸」を完全再現したもの、草太イス、撮影用の照明機材などが並ぶ。
ばっちりセッティングされた撮影コーナー。

写真は、ツタの絡まる取っ手のあたり。扉の白い塗装が、あちらこちらボロボロに剥げている。美術部さんによる見事なエイジング加工。
再現度の高いこの扉は、八幡浜出身の新日本建設社長さんが作って寄贈してくれたものなのだそう。それを地元高校の美術部で塗装するなど、地域住民たちのコラボレーションによって完成。アツい!

ホワイトボードに展開された、扉の制作レポート。
制作過程や当時の新聞記事など、ここでしか見れない展示もいろいろ。

四国まで来てしまえば鉄道のみで比較的手軽に来れる場所だと思うので、『すずめの戸締まり』が心に刺さった人は是非とも訪れてもらいたい。

そうこうしているうちに「おれんじ四国」は出港。嗚呼、フェリーまで乗れたら「コンプリート」って感じだったんだけどな。踏ん切れなかった自分がちょいと悔しい。

船着場を離れ、遠のいていくフェリー。
いってらっしゃい。

帰りはちょうどバスがあったので数分揺られて楽ちんに八幡浜駅到着。ホームを見ると「あいつ」が停まっていたので、慌てて改札をくぐる。

松山駅で見かけた「あいつ」である。
「あいつ」ことキハ54。「#ダイジンといっしょ」でダイジンが降りてた乗降口。

これは幸運。「八幡浜駅ホームとキハ54」の写真が撮れる! と思った直後に「こいつ」は発車。おお、なんと、わずかに間に合わなかった。

遠ざかっていくキハ54。
行ってしまわれた。

と思ったら、その裏にもう一両、キハ54がいた。なんかレアリティ下がってきたな。いや、でもアンパンマン列車とかいろいろいる中で、水色ラインのキハ54とこんなに会えるのはきっとそれなりに幸運なはず。

あんまり上手くはない写真。
どうにか「八幡浜駅ホームとキハ54」を捕獲。遠いし、すごい逆光だけど。

ほどなくして到着した「特急宇和海」で、本日の寝床・松山へ戻る。ちなみに宇和海はキハ54じゃないので、これほど撮っておきながらキハ54には今回一度も乗っていない。劇中で登場する「車内」はキハ54なのだから、乗っておけばよかったな。そんで伊予大洲まで行って特急を待つルートにでもすればよかった。なーんて、今更後悔している。

以上、これにて『すずめの戸締まり』聖地探訪・四国編は終了。次回、松山の夜と朝、そして脈絡なく関西へ。


▲四国編の描かれ方は、このあたりで一部確認できます。