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映画「ベイビー・ブローカー(2022)」感想|豪華キャストすぎて頭に入ってこない……

是枝裕和監督の最新作『ベイビー・ブローカー』、勇んで初日に鑑賞してまいりました。


映画「ベイビー・ブローカー」ポスター
映画「ベイビー・ブローカー」ポスター


こちら是枝監督初となる韓国製作・全編韓国語の作品で、何よりキャストがとにかく豪華! 日仏合作の前作『真実(2019)』におけるカトリーヌ・ドヌーヴ×ジュリエット・ビノシュ×イーサン・ホークも凄かったですけど、個人的な興味レベルとしては本作のインパクトのほうがより大きかったです(でも『真実』はかなり好きな作品です!)。


主要キャストをひとりずつ挙げていきましょう。まずはソン・ガンホ韓国映画黎明期の『シュリ(1999)』『JSA(2000)』から『パラサイト 半地下の家族(2019)』まで数多くの作品に出演してきたスーパースター。「ソン・ガンホ×是枝裕和」が発表された際は、ついに来たかこのタッグが……!!という感じでした。

そしてペ・ドゥナポン・ジュノ作品からハリウッド作品までキャリアは厚く、是枝監督とも『空気人形(2009)』で監督×主演のタッグを既に組んでいます。インスタ等でも「kore-eda san」とのツーショットをたびたび見かけたり、驚きは全くない組み合わせですが単純に嬉しいリユニオンです。

カン・ドンウォンはじつを言うとそこまで思い入れがなくて、映画も多分『1987、ある闘いの真実(2017)』と『新感染半島(2020)』しか観ていませんでした。名前と顔は馴染みがあるんですけど、意外にも。でも今回でしっかり親しみました!

イ・ジュヨンは大ヒット韓国ドラマ『梨泰院クラス』のヒョニ! 初主演映画の『野球少女(2019)』もたいへん素晴らしい作品でございました(野球は野球だけどスポ根映画ではありません、おすすめ!)。これからのご活躍、ますます期待です。

で、最後に、IUことイ・ジウン! と言いつつ恥ずかしながら発表当時は存じ上げなくて、主演の韓国ドラマ『マイ・ディア・ミスター 〜私のおじさん〜』や『ホテルデルーナ』を後追いして遅ればせながら骨抜きになったあとに「ぎゃー!」と狂喜したパターンです。監督も、コロナ禍に『マイ・ディア・ミスター』を観たことがキャスティングに繋がったのだとか。

あ、ちなみに『マイ・ディア・ミスター』でイ・ジウンと共にW主演を務めるイ・ソンギュンは、『パラサイト 半地下の家族』の乳首時計回りおじさんです。坂の上おじさんと坂の下おじさんを制したイ・ジウンです。

というわけで、つまるところ「超豪華オールスターキャスト夢の競演」なのですね、この映画『ベイビー・ブローカー』は。さてさて、いったいどんなものが見れたのでしょうか。以下、主にキャスト的なネタバレがあります。未見の方はご注意を。

実際に観てみて

正直に申そう。キャストが豪華すぎて物語ぜんっぜん頭に入ってこなかった。いや知ってたけど、知ってるのと見るのとは違うじゃん。いざ観てみたら頭の処理が追いつかなくて。中盤くらいまでずっと雑念まみれでした。はい。

だってさ、同じ画面にソン・ガンホカン・ドンウォンとIU様(敬称略せず)がいてさ、ぺ・ドゥナイ・ジュヨンがバディ組んでてさ、さらに『梨泰院クラス』のスングォンことリュ・ギョンスが、『愛の不時着』の北おばちゃんキム・ソニョンが、『マイ・ディア・ミスター』の末っ子ソン・セビョクが……出過ぎだろ!!なんだこれ、思い出づくりか?!(どっちのか知らんけど!)

韓国のオールスターキャスト映画は決して珍しくないのですけど、あくまで本作は日本の是枝監督が作っている作品なので、どうしても「そうそうたるこのキャストを是枝監督が操っているのか……」という思考が抜けなくてですね。最大のトピックであり最大のノイズ、と少しでも思ってしまったことは否めません。

あと、これは〈日→韓→日〉ゆえのものなのか、日本語字幕の内容がいまひとつすっと入ってこなかったような印象を受けました。本当はどういう意図でどういう台詞を書いたんだろう、それがわからないことのもどかしさ、みたいなのを感じましたね。

まあ中盤を過ぎた頃にはさすがに入り込めていましたし、『万引き家族(2018)』を筆頭とした是枝イズムに溢れる複雑な温かさの作品だったと思いますが、序盤は上述のあたりがちょっと、いつも韓国映画・ドラマを観ているときには感じないような違和感を覚えていました。おそらくこれ韓国エンタメに日頃あまり接していない人のほうが、キャスト的にもストーリー的にもノイズなくすんなりと観れるのかもです。

単純に好きだったところ箇条書き
  • おもいっきりパラサイトな始まり方(撮影、同じ方ですからね)、わくわくさせらる。向こうに高層ビル群がうっすらそびえてるのもよい。そしてソン・ガンホ×神父、間違いない(パク・チャヌクの珍傑作『渇き』をぜひご覧ください)。

  • IU様の推定Fワード10連発シーン、よかった。もっと豪快に悪態ついてくれてもよかった。盗聴要素は『マイ・ディア・ミスター』由来なんだろうなあと勝手に確信しています。

  • 劇中7割エルゴ(的なるもの)抱えてるカン・ドンウォンすき。カン・ドンウォンとIU様、ふっつーに胸キュンラブストーリー成立してしまうね。

  • あんまり他で見ないようなロケーションが多かった。麗水のケーブルカーとか、すごくいい。行ってみたい。望遠撮影でまるで船が浮いてるようだった学校のシーンは、あれどこなんだろう。と調べていたら、ロケ地情報充実していた。

  • KTXのシーンでマブリーが登場することを期待した人はどれぐらいいますか。

  • 最後の最後はかなり可哀想な展開だけど、考え得る限り最良のかたちで事後対応してくれていて嬉しかった。ただ、そこまで風呂にも入ってなかったぺ・ドゥナ様がいきなり波打ち際でキラキラしだすのはちょっとアレだった。

  • 真面目な感想からはひとまず逃げます。


2回目のほうが断然良く感じられる映画だと思うのでもう1回観たいところですが、明日の超豪華舞台挨拶も全落しちゃったしソン・ガンホカン・ドンウォン、イ・ジウン、イ・ジュヨン、是枝監督!! めちゃめちゃ行きたかった……!! まあこの面子じゃそりゃ当たらんわなという感じではございます)、配信までおあずけかもしれません。

(2022年109本目/劇場鑑賞)

ああ、観覧車のシーンえがったのう。