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ロドリゲス×タランティーノ「フロム・ダスク・ティル・ドーン(1996)」雑感

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こちらの記事(コメント欄)で教えていただいてから半年ほど経ってしまいましたが、監督ロバート・ロドリゲス、脚本クエンティン・タランティーノの映画フロム・ダスク・ティル・ドーンをようやく観ました。めちゃくちゃ楽しかった〜〜。遅ればせながら、ありがとうございました!

タイトルの『フロム・ダスク・ティル・ドーン(From Dusk Till Dawn)』、英語の弱いわたし的には「フロムしか知らない」って感じで意味さっぱりだったんですけども(笑)、「夕暮れから夜明けまで」という意味だそうでございます。これが映画のタイトルとしてはどういう意味を持つのか。ややネタバレ的に言ってしまうと、マイフェイバリット『暗くなるまで待って(1967)』と同じようなニュアンスだったんですな。ニクい。

あらすじ

強盗殺人で指名手配中の兄弟セスとリッチージョージ・クルーニークエンティン・タランティーノは、モーテルで出会った旅人のジェイコブハーヴェイ・カイテルを脅迫してメキシコへの国境越えに加担させる。ジェイコブはかつて牧師だったが、妻を不慮の事故で亡くしたことで信心も失い、残された子供らとキャンピングカーで流浪の旅をしているところだった。

ジェイコブたちのファインプレーにより、厳戒態勢の国境を突破できた一行。取引相手と落ち合うため、指定された酒場で朝まで時間を潰すことにしたのだが……。

雑感

やーこれは、ネタバレ厳禁なのではないだろうか! というわけで、以降かなり初見の楽しみを削ぐようなネタバレに溢れてますのでこれから観ようという方は鑑賞後にお読みいただくほうがいいと思います。ロドリゲス×タランティーノなので楽しいことは保証します!

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ではストーリーを追いながらいろいろツっこんでいきましょう。

まずはアバンタイトル。セスとリッチーの“ゲッコー兄弟”が絶賛逃走中。アメリカとメキシコの国境へ向かう道中コンビニみたいな店に立ち寄り、いかにもタランティーノ的な一触即発バイオレンスでご挨拶。タランティーノ自ら演じる弟のリッチーは、スコセッシ作品におけるジョー・ペシ的なタチの悪い暴発ちゃん。ジョージ・クルーニー演じるクールな兄のセスがたしなめようとも、勝手な被害妄想ですぐ引き金引いちゃいます。「目立たないって言葉の意味、分かるか?」とお説教を受ける彼の後ろで豪快に爆発する店。うける。地図を買いたかっただけなのに。

そしてタイトル。ここでダーンと出る「QUENTIN TARANTINO」の文字を見て、もはやタランティーノって名前が出るだけでめちゃめちゃ面白そうなのズルいなと感嘆。「面白い」の代名詞、クエンティン・タランティーノ。ちなみに彼もここでは負傷し、手のひらに風穴が開いている。「めちゃ痛えよ」と酒飲みながらダクトテープぐるぐる。そんなどころじゃなく痛いはずだが。

さて、タランティーノ映画風に言うとチャプター2。トランクに詰め込んでた人質と一緒にモーテルへ。騒がなけりゃ生きて帰れるからな、と念押しし、兄セスは買い出しへ。帰ってきてみると人質がいない。どうしたリッチー。え? 殺しちゃった? だからお前さ……。

ここでもう一組の家族が登場。キャンピングカーであてどなく旅するフラー家の父子たち。たまには本物のベッドで寝たい、とモーテルへ入ってみたらいきなり脅迫されて国境越えの加担をする羽目に。可哀想。しかしもともと妻を亡くして諦観気味の精神状態だったパパはしぶしぶ協力。どうにか国境を突破し、無事メキシコ入り。

チャプター3。夜明けには解放してやるよ、と言われ、強盗兄弟が取引相手と落ち合う予定の店「オッパイ ツイスター」へ。は?

ちなみにここでオパツイの看板に「OPEN DUSK TILL DAWN(夕暮れから夜明けまで営業)」の文字。なるほど! これが主戦場か! そんなわけで流れ者たち、酒場へ無事到着。状況整いました。

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チャプター4。入店時に「トラック野郎以外お断りだバーカ!」と煽られセス兄プッチン、しかしパパが割って入り、私の車はキャンピングカーだ。あれを運転するには大型免許がいるのだ。だから私はトラック野郎だ。こいつらは私の連れだ。と理路整然に鎮火。この後のトンデモ展開と比べると、妙に細やかな脚本。

元牧師とその未成年の子供たちが連れてこられたのはよりにもよってストリップクラブ的なお店。テーブルの上で半裸のおねーさんが踊りくねっている不道徳の極みだが、諦観の極みも極みなのでパパは何も考えないことにした。依然イラついているセス兄に、何をイラついているんだ。警察からこんだけ追われてるのにお前らは国境を見事突破したんだぞ。勝ってんだぞ。喜べ。と諭すパパ。

…もうね、このパパがかっこいい。だってそりゃハーヴェイ・カイテルだもの。でもなんか、普段はメガネしてて生真面目そうなおっさんなんですよ。それが、大事そうな話をする時だけいちいちメガネ外すの。すると超イケオジなの。ジョージ・クルーニーたじたじ。ちなみにタランティーノはメガネつけると性犯罪者にしか見えないのすごい。

チャプター5。いい感じに(子供たちまで)お酒も入ってきて、ストリップクラブの目玉なショータイム。うむ、確かにこれは…妖艶エロスですな…。と見入っていると、まさかの超展開。おねーちゃん、吸血鬼になる。は?

さあ! もうあとは脈絡のないブッ飛びヴァンパイア映画です! なにこれ! わたしの知ってるヴァンパイアと違うけど、ゾンビにしか見えないけどまあいいや! じつはこのオッパイツイスター、トラック野郎を獲物にしてる吸血鬼酒場だったのでした〜。めくるめくスプラッタ!

ドライバーたちが続々やられてしまうなか、2名ほどの敏腕ドライバーたちが健闘中。なんだか突然仲間が増えたぞ! 間一髪のところを助けてもらった娘ちゃん、名乗ってお礼を言うと、敏腕な彼も爽やかに返します、「俺、セックスマシーン!」。は? ちなみに彼、ノーハンドで股間からマグナム撃てます。何を(中略)分からない。

吸血鬼ということは十字架が効くはず。元牧師パパ、逃げ込んだカウンターの裏で鉄バットとショットガンを発見。組み合わせると、撃てる十字架完成。掲げて威嚇しつつ発砲。曰く「凶暴な神の使徒」、パパお見事!

そういえば弟リッチーは早々にヴァンパイアゾンビの仲間入りをしてしまったので、セス兄と牧師一家の4人はバックヤードへ逃げ込み、ありもので臨戦態勢を整えることに。いつしか本物の仲間意識が芽生える彼ら。あれっ、なんかいい話っぽい。古き良きファミリー映画っぽい。おかしいな!

ここでの創作武器が傑作で、セス兄は削岩機の先っぽに木の杭を装着した電動ヴァンパイア突き。考えたな。娘ちゃんはクロスボウ。正統派だわね。パパは引き続き「撃てる十字架」で、息子ちゃんは……水鉄砲。は? ファミリー映画じゃねえぞ? さすがにそんな舐めくさった装備…え? 聖水? 牧師パパ認定の聖水水鉄砲? アホやな!!(関西では最高の褒め言葉であるらしい)

んでいざ戦闘再開。しかしついにパパと息子ちゃんはヴァンパイアの餌食に…。悲しい…。けど愛ゆえの射殺…。セス兄と娘ちゃんふたりだけになって、もうだめか、もう限界か、そう思ったとき、銃撃戦による壁の穴から朝日が漏れてきた。光に触れ、ダメージをくらう吸血鬼軍団。そうだ!太陽が最大の敵だ! フロム・ダスク・ティル・ドーンよ! そこに、何も知らない取引相手がこんちわーとドアを開けて登場。一気に入り込んだ朝日は店内のミラーボールに反射し、ヴァンパイアどもを蜂の巣に! ミラーボールwww

…いやね、このミラーボールには感動しましたね。ミラーボールで吸血鬼を一網打尽にする、ナイスアイデアすぎませんか。人間は一切ダメージ受けないけど吸血鬼だけ蜂の巣にされんの、痛快すぎる。天才! アイデアの天才!

さ、それで取引も無事終了し(めっちゃいい人たちなのな)、ひとり生き残ってしまった娘ちゃんは若さゆえのノリで極道の妻にでもなろうという気を起こすものの、そこはオトナなセス兄、そんなろくでなしじゃないぜとクールにお断りしてあばよ。どこか吹っ切れた表情の娘ちゃん、無免許のはずだがなぜか颯爽とキャンピングカーを乗りこなして新たな旅へ。からの「って何、そのマヤ文明は」エンド。

そんなわけで、全部おさらいしてしまいましたね。とても楽しかったです。間違いなくB級なのにジョージ・クルーニーのおかげで上質に見える瞬間があるし、なんかいい映画を観た後味すらある。タランティーノが関わっているだけにいつものタランティーノ映画のような気分で観ていると途中で思いっきりひっくり返されるミスリード。かなりサプライズな映画でした!

(2020年56本目/U-NEXT)

フロム・ダスク・ティル・ドーン (字幕版)

フロム・ダスク・ティル・ドーン (字幕版)

  • 発売日: 2016/11/01
  • メディア: Prime Video