映画「津波そして桜(2011)」感想|震災当時訪日していたイギリス人監督によるドキュメンタリー
東日本大震災から10年。「アジアンドキュメンタリーズ」にて、2011年製作の短編ドキュメンタリー映画『津波そして桜』を観ました。
これは震災のタイミングで偶然日本を訪れていたイギリス人のルーシー・ウォーカー監督による作品。監督はもともと「桜」に個人的な思い入れ*1があり、日本にいたのも桜を撮るためだったそう。その意味では全く予定外の映像を収めることになってしまったわけですが、しかし結果的にやはり「桜」と強く結びついた作品に仕上がっていました。
桜にまつわる被災地の人々の言葉で特に印象深かったのは「リズムを崩さずになんとか前を向いて前を向いて引っ張ってくれるのが桜」というもの。確かに、こちらがどんな状況であろうとおかまいなしに春は巡ってくるし桜は綺麗に花を咲かせる。人間よりもよっぽど上の存在なんだなっていうのはなんとなくわかる気がします。
なお映画冒頭では津波に飲み込まれていく街の映像が4分ほど長回しで出てきます。どんなパニック映画よりも恐ろしい悪夢の実録で、数秒見ただけでも動悸がしてくるショッキングさです。その映像を経て今度はいきなり桜の話になるものですからギャップありすぎではと思ったのですが、観終わってからもう一度冒頭に戻ってみると既にそこには桜の樹がどんと構えていてハッとさせられたりもしました。
(2021年45本目/アジアンドキュメンタリーズ) アジアンドキュメンタリーズはドキュメンタリー専門の配信サービスです。よく「アトロク」でも紹介されており気になっていたのですが、このタイミングで加入してみました。本作は約40分と短く、単品購入でも視聴できます。