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主に映画の感想文を書いています

「リモート映画」2本と、Netflix「ROMA/ローマ」製作ドキュメンタリーの雑感

書きそびれそうだった短尺作品3本の感想です。まずはリモート映画『第七銀河交流』『カメラを止めるな!リモート大作戦!』、それからドキュメント『ROMA/ローマ 完成までの道』について書いています。

リモート映画を観てみた

新型コロナウイルスの影響で多く作られ始めた「リモート映画」。2本ほど観てみました。どちらも30分弱の作品です。

『第七銀河交流』 岩切一空監督

こちらは、ラジオ番組「アフター6ジャンクション」のリモート映画特集で取り上げられていたもの。監督ご本人と女優さん2名の計3名によるリモート製作映画です。物語の背景は新型コロナウイルスに脅かされる現代の日本。すっかり怯えきってしまい風呂場で生活している映画監督の話と、「暇でしょ、今からそっち行くよ」とボイスチャットを繋げたまま一方的に“女友達”の家へ向かってくるストーカー男のホラー、ふたつの話が並行して進みます。

「コロナを経た作品の在り方」みたいなものに辟易している映画監督、「おうちが外になってしまった」と嘆く女の子など、リモートというポジティブな製作手法を用いながら、あえてネガティブな(でもみんな、少なからず感じてはいるであろう)コロナ期の気持ちを表現しているところが特徴的な作品だと思いました。ホラー描写の部分はエンタメ性も高く単純に面白かったのでもっと広げたものを観てみたい! あと女優さんがすごく可愛い!

「痛い」描写が少しあるので、苦手な方はご注意を。

(2020年93本目/YouTube

カメラを止めるな!リモート大作戦!』上田慎一郎監督

あの大ヒット作『カメラを止めるな!(2017)』のスピンオフ的なリモート映画。いつか観よう〜と思いながら先延ばしになっていたので、この流れで観ました。

お話は『カメラを止めるな!』同様、濱津隆之さん演じる監督が「番組ひとつ作ってもらえませんか、リモートで」と急な依頼を受けるところから始まります。そこで声をかけていくのがお馴染みの『カメ止め』面子。これはもう何より『カメ止め』で作り上げられたキャラクターたちの魅力を再確認する作品になっていると思いました。あの人たちがやいのやいの騒いでたら何やっても楽しい!

また、相変わらず本物の親子に見える監督一家が最後ビデオチャット越しに語らうシーンなどでは不覚にも涙。続くエンドロールでもついつい涙。このへんの塩梅も『カメ止め』と共通しているので、お好きだった方は是非どうぞ。

今回の「カメラを止めるな!」って、そういうことだよねとしみじみ。「ミニシアター・エイド」のリターン「サンクス・シアター」にメイキングが入っているそうなので、観てみようかなと思っています。

(2020年98本目/YouTube

『ROMA/ローマ 完成までの道』

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Netflixで配信されている、同じくNetflix映画『ROMA/ローマ(2018)』のメイキング・ドキュメンタリー。『ROMA/ローマ』自体そこまで思い入れのある映画というわけではありませんでしたが、モノクロ映画なので製作舞台裏は面白いんじゃないかなと思い観てみることにしました。

期待通り、完成版では見れない「カラーの世界」をたくさん見ることができるのは単純に面白い! また、一見なんでもないようなのにやたら印象に残り、かつ美しい「タイル、水、泡」なオープニングシークエンスはやはり非常に念入りな撮影をしており、これが見れただけでも満足度は高いです。

完成した映画からは比較的「素朴」な印象を受けるのに対し、撮影ではかなり大規模なオープンセットが作られていたり綿密なエキストラ指導が行われていたりと、観て受ける印象と製作過程がこんなに違う場合もあるんだなあと、は〜すごいわと思って観てました。病院のシーンでは画期的(スレスレとも言える…)な演出法に固唾を呑みました。「その日、監督が不機嫌だった理由」のくだりなども大変興味深かったです。70分ほどの作品なので、映画をご覧になった方は是非あわせてどうぞ。

(2020年99本目/Netflix

気まぐれ自叙伝 わたしの音楽遍歴【第6章:羨ましがってないで、行けばいいじゃん】

何者でもない「わたし」の音楽遍歴をたどる暇つぶし自叙伝、第6章。

長らく公開延期となっていた映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』をようやく観たところでふと思ったのですが、このタイトル無意識のうちに「わたしの若草物語」から取ってたんですかね(笑) あんたのライフだって読みたい人はいるよ、という劇中の励ましをモチベーションに引き続き少しずつ書いていきたい次第です。

さて、前章ではわたしにとっての「白米と味噌汁」ことB'zとの出会いを書きました。今回はその続編として、初めて行ったライブの記憶などを書いてみようと思います。結構長くなっちゃった。

エレキギター心酔時代

中二でB'zに取り憑かれたわたしは、CDを買い漁り、映像作品も少しずつ観ていった。初めて観たライブビデオ『"BUZZ!!" THE MOVIE』は1995年の超黄金期に開催されたツアーの映像で、今でもよく音楽番組などで紹介されることの多い「LOVE PHANTOMでトラス頂上からダイブする稲葉さん(のスタント)」などが収録されたものだ。

“BUZZ!!” THE MOVIE [DVD]

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  • アーティスト:B’z
  • 発売日: 2001/03/14
  • メディア: DVD

ギターキッズ的にいうと松本さんのピンクなギターに異常なほどの魅力を感じていた。虎杢のメイプル指板も美しい、当時の松本さんを象徴するようなこのギターはその後長期にわたり行方不明となっていたのだが、2018年、30周年のタイミングでまさかの帰還。ライブでも再び姿を見せ、ギターキッズたちに無類の感動を与えた。

1999年に横浜国際総合競技場日産スタジアム)のこけら落とし公演として開催されたライブの映像『once upon a time in 横浜』も数え切れないほど観た。

once upon a time in 横浜 ~B’z LIVE-GYM’99 “Brotherhood”~ [DVD]

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  • アーティスト:B’z
  • 発売日: 2001/03/14
  • メディア: DVD

こちらでもやはり、松本さんの今度はイエローなレスポールに心酔していた。これもまた松本さんを象徴するギターのひとつで、フェラーリの「キャナリーイエロー」と呼ばれるカラーリングを再現したものだ。日本人として初めてギブソン社から発売された誉れ高いシグネチャー・モデルでもある。ギブソン社との契約により次々と新モデルが開発されるため一時期はすっかり使われなくなっていたが、近年また使われているのは嬉しいことだ。

この頃わたしはついにエレキギターを手に入れていた。ZO-3という、その名のとおり「ゾウさん」の形をした、アンプ内臓型のギターだ。正確には同シリーズでマルチエフェクター内臓のめちゃくちゃハイテクなモデルを買ってもらった。当時2ちゃんねるに入り浸っていたわたしは、このZO-3シリーズのスレッドへよく投稿するようになり、詳細は省くがじつはそこから「353」というハンドルネームが生まれた。353の3はZO-3の3なのである。

少々脱線してしまったが、手に入れた当初はガンメタルのような色だったこのギターを、ほどなくしてわたしはキャナリーイエローに「貼り替えた」。父親の仕事がラッピング広告絡みだったため、高品質なフィルムでギターのボディそのものをラッピングすることができたのだ。久々に登場の父親、やはり貢献度が高い。

羨ましがってないで、行けばいいじゃん

B'zを指南してくれた部活の後輩は親子二世代でのファンだったため、ライブへも既に行っていた。わたしは数々のライブビデオに感化され「本物のB'zを観たい」気持ちが日に日に高まっていたが、まだ所謂「ライブ」というものに行ったことがなかったため、実際に行く選択肢は生じにくかった。

2002年の夏、後輩がB'zのライブへ行ってきた。話を聞きいいなあいいなあと羨むわたしに、後輩はズバッと言った。「羨ましがってないで、行けばいいじゃん」。なお参考までに申し上げると部活内ではあまり先輩と思われていなかった。さておき、その言葉でひとつ扉が開いたわたしは、すぐさま人生初のファンクラブへ入会し、翌年には人生初の「ライブ」へ行けることとなるのである。

2003年、12月24日だったか25日だったか

記念すべき初ライブの日付はうっかり記憶が曖昧だ。『いつかのメリークリスマス』が聴けたのでクリスマスだったことは覚えているがどっちだったか定かでない。まあとにかく2003年のクリスマス、これがわたしの人生における初めての所謂「ライブ」体験となった。自分の取ったチケットで、もはや師匠に等しい後輩と一緒に行った。

この年は15周年イヤーで、ベストセレクション的アニバーサリーツアーとアルバムツアーの2種が開催された。アニバーサリーツアーのほうは会場の規模が小さく、取れそうなのは渚園でのファイナル公演(野外ライブ)くらいだった。しかしこの渚園静岡県浜松市弁天島にある公園ということで、東京から見るとやや遠征である。当時のわたしには、足が伸びなかった。そんなわけでアルバムツアーのほうを選んだ。

ちなみにわたしが行かなかった渚園ライブは結果的に大変いわくつきの公演となった。どういうことか。平成15年のB'z15周年記念日に台風15号が直撃して中止の危機に瀕した、のである。非常にキャッチーだ。あまりにキャッチーなので、どうにか遂行されたこのライブの映像作品は『Typhoon No.15』というタイトルでリリースされた。

Typhoon No.15 B'z LIVE-GYM The Final Pleasure "IT'S SHOWTIME !!" in 渚園 [DVD]

Typhoon No.15 B'z LIVE-GYM The Final Pleasure "IT'S SHOWTIME !!" in 渚園 [DVD]

  • アーティスト:B’z
  • 発売日: 2004/02/25
  • メディア: DVD

おうちで観るのが最適のライブだった、ということにしておきたい。

さて、そんなわけでわたしが「初めて」に選んだのは同年末のアルバムツアーだった。オープニングからステージ上をバイクが飛び交うという文字通りブッ飛んだ演出で有名、というかそこだけ一人歩きしているようなツアーだ。

稲葉さんのコンディションが良くなかったこともあり(どれだけ良くなかったかというと、テレビ出演で前代未聞の口パクをしたほどだ)あまり語られることのないツアーなのだが、なにぶん全てが初めてな身からしたら特別でしかないステージである。2018年まで続く黄金コンビのリズム隊、シェーン・ガラースとバリー・スパークスが初めてB'zのステージ上でタッグを組んだ記念すべきツアーでもあった。

会場は東京ドーム、座席はスタンドだったと思う。憧れの大スターは米粒ほどでしかないのだが、「本物のB'zと同じ空間にいる」という感慨、興奮、高揚感は、どれを取ってみてもおそらくこの瞬間にしか味わえないものだったろう。今その感覚を覚えているかというと、正直そこまで鮮明には思い出せない。

ただ今でもひとつ覚えている衝撃があって、それは「とにかく音がでかい」ということだった。絶対的に大音量だったのかもしくは増幅された感覚だったのかそのあたりは不明だが、体が振動するほどの轟音だった記憶があるのだ。近年は会場周辺への配慮で控えめな音量になっていることも多く、このときに感じた全身震えるほどの大音量というのはなかなか体験できない。少々物足りなく思う。

セットリスト的なところでは、何より『MOTEL』だ。当時のわたしが「一番好きな曲」としていた曲なのだが、とてもブルージーで渋い曲のため、シングル曲(1994年のリリース)であるにも関わらず演奏される可能性は常時低かった。しかしこのツアーでは演奏されたのである。運命を感じずにいられなかった。嬉しいことにその後は比較的演奏機会が多い。

Motel

Motel

  • B'z
  • ロック
  • ¥255

ギターキッズ的にマニアックなことを言うと、松本さんの「ダブル・カッタウェイ=DC」のシグネチャーモデルが初めてお目見え(発表前)したのもこの公演だった。スクリーンに映し出される見たことのないフォルムのギターに、とてつもなく興奮したものだ。

東京ドーム特有の空気圧により現実世界へ押し戻されてもなお興奮は醒めることなく、距離感こそ変われど本質的な熱情は変わらず今に至る。いわば結婚記念日のような特別な日、それがこの2003年12月24日、だったか25日だったかなのである。ならば覚えておけ。

それから

以降、ライブへ行くというのは当たり前のこととなり、B'zに限らず次々と足を運んだ。翌年には武道館デビューもした。遠征もするようになり、いつしか旅行が趣味となって、海外へもひとりで行けるようになった。あらためて、あのときの「羨ましがってないで、行けばいいじゃん」は人生を広げる一声だったと思う。後輩の名前を出しておこう。くまさん、ありがとう。

次章へ続く。おそらく、洋楽漬けになった順当な話。