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主に映画の感想文を書いています

シティ・オブ・ゴッド(2002)

シティ・オブ・ゴッド DTSスペシャルエディション (初回限定2枚組) [DVD]

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フェルナンド・メイレレス監督作品。なにかと「トラッシュ! -この街が輝く日まで-(2014)」を連想しながら観ていましたが、なんとフェルナンド・メイレレス監督が製作総指揮に入っておりました。同じ雰囲気になるわけだ!

概要

ファヴェーラと呼ばれるリオデジャネイロのスラム地域において生活に密着したものとなっている薬物や殺人、それら全てひっくるめたギャングの抗争を、事実に基づいて描いた作品。キャストは主にオーディションで選ばれた現地の住民であり、原題の「Cidade de Deus=シダージ・ジ・デウス」とは現存するファヴェーラである。

あらすじはファヴェーラのWiki

と言いたくなってしまいたくなるほど、「Wikiが映画そのまんま」なパターンのやつです。

ファヴェーラ - Wikipedia

こんな世界があることを目の当たりにしてしまった以上、とりあえずWikiくらいは読んでおこうって感じですね。ちなみに本作は、町山智浩さんが「なぜ映画を観るのか?どんな映画を観るべきか?」という話(リンク先は動画です。13:00くらいから)のなかで取り上げていたことから鑑賞しました。

町山さんの語り口から想像するに目を覆いたくなるような作風かと思ったのですが、意外と軽いタッチで描かれていることに驚きました。軽いタッチとは言っても内容は全く軽くないです。ずっと誰かが誰かを殺してるし、殺しの無い時間は5分と続かないし、しかも殺しをやっているのがティーンエイジャーどころか小学生くらいの子供だったりする。事実だけ書くとものすごいショッキングだし、鑑賞しながら「ひでえな」と顔を多少しかめはするも、気付けば「日常的なこと」として慣れてしまっている自分がいる…というスラム暮らしの疑似体験。

ただし、ずっと「慣れっこ」でいれるはずはなく。これはある程度意図的な、疑似体験のための手法だと思っていますが、中盤「ベネの送別会」でフロアに焚かれる閃光、特定の世代にわかりやすく言えば「ポケモンショック」。これ以降ものすごく疲れます。そこまで麻痺していた観客に対し「いやいや、なに麻痺しちゃってんですか」と言わんばかりのお見舞いです。あえて観客を疲れさせた状態で続きを見せる、すごい仕掛けだなあ…。

意外とエンタメ度が高い

とはいえとはいえ、そこから一気に落としていくのかと思えばそういうわけでもありません。一貫して流れているのはブラジル特有なのか謎の軽さ、高揚感、……もしかしてこれっていうのは、観客もヤクやってハイになってる状態で見せられているの…? そういうことなの…?? そこまで疑似体験???

タンボリン(タンバリンに非ず)やクイーカといったブラジルの打楽器が小気味よく鳴り響くなか、謎の高揚感をもたらす冒頭の「鶏料理」シーン。めっちゃ独特だなーーーーと思ったのですがもしかするとそういうことなのかもしれません。きっとあのリズムを耳にした瞬間、スラムの人間になってしまっているのね…。

で、エンタメ度。そう、まずこの冒頭のシーンもそうだし、そのあとのガス車とかいう小さな要素にしてもそう。実録的雰囲気で撮っているのかと思いきやじつは綿密に練られており、前後する時間軸、突然の合流、突然の再会といったような、「あ、そう繋がるの?!」「そこに戻るんだ!!」という映画としての娯楽性がかなり盛り込まれているんですよね。これが、すごいなと。ファインダー越しの視界となる終盤のスクープハンターっぷりも単純に楽しいですしね。

前述した通りで、内容はものすごくエグい、目を背けたくなるような映画ですが、映画館でひたすら目をつぶっているわけにもいかないし、見てもらえなかったら意味がないし。そこで、目を背けなくてもいいように「慣れちゃってる目」を疑似的にはめ込んで見せてくれる仕掛けなのが本作。かな、みたいに思いました。映画としてはおもしろいからまた観たくなってしまう。でも観るたびに世界のどこかの現実をインプットさせられる。よくできている…。

ということで、非常にバランスのよい、非常に巧みなつくりの映画でした。おすすめです。ついでに冒頭で書いた「トラッシュ! -この街が輝く日まで-」もおすすめです(感想はこちら)。


(2018年149本目)

007 ドクター・ノオ(1962)

ショーン・コネリーが初代ボンドを務めた、「007」シリーズの記念すべき第一作。原題「007 Dr.No」。

超あらすじ

1962年、宇宙開発競争の時代。アメリカのロケット打ち上げを妨害する謎の人物「ノオ博士」を追って、ボンドたちはこれまた謎の島「クラブ・キー」へ上陸する。

007はじめました

ダニクレボンドは履修済なのですがそれ以外は一切手をつけていない007シリーズ。特にきっかけもないけれど、個人的に夏場は時間もあるしいっちょいきますか。という感じで気合いを入れて第一作目からいってみようと思います。何卒。

ダニエル・クレイグから入ってしまったので、まずはジェームズ・ボンドという男の先入観を消すところからのスタート。7作ってよく考えたらだいぶある。ショーン・コネリーのボンドとは結構長いお付き合いになりそうです。7作観終わる頃には思い入れたっぷりになってるかな?

物語の舞台は1962年。はい、もはやお馴染みの米ソ冷戦下1960年代です。X-MENが結成され、アイアン・ジャイアントが空を飛び、アマゾンでは半魚人が発見され、NASAでは黒人女性計算手がマーキュリー計画のために活躍し、ボルチモアではトラボルタがママになってる、わたしの記憶に新しいところでもそんな感じでいろいろあるこの時期ですが、銀幕上のジェームズ・ボンドも時を同じくして生まれたのですね。

一作目ということである程度身構えてはみたものの、なかなかにチープでちょっと安心しちゃいました。最初のうちはいいんですよ、いろんな「初代」に感動しつつ、そこそこイメージ通りのかっこいいボンドを堪能できるので。でも後半「クラブ・キー」に上陸してからは、なんともすごい大味で。しかもだいぶセンシティブな(笑) いや〜なんか燃料棒とか出てきたあたりから完全に笑えなくなってしまい楽しかったです。時代ですね。ちょうど「オーシャンズ11(2001)」で「ヒロシマにしない核爆弾だよ」とかいう配慮ありの台詞を聞いたばかりなので余計際立った感あります。

R.I.P. 初代ボンドガール様

本作で一番最初に登場するボンドガールのユーニス・ゲイソンさんが先月亡くなられたそうです。 メインではなくあしらわれてしまうほうのボンドガールですが、記事によればショーン・コネリー演じるボンドから、シリーズおなじみの名セリフとなる『ボンド、ジェームズ・ボンド』という名乗りを引き出した女性としても知られる」ということで、なるほどその功績は偉大ですね。

メインとなるボンドガールを務めるのはウルスラ・アンドレスさん。レイプされそうになっても毒グモを使って反撃するほどの強い女性(そういえば毒グモのシーン、指の隙間からも見れなかった…。映画でのクモがだいぶ苦手だと気付く)。ビキニ姿の登場シーンが有名だそうで、先日「ショーシャンクの空に(1994)」で知ったラクエル・ウェルチさんとかと時代的にも同じポジションの女優さんって感じでしょうか。

テレンス・ヤング監督

知ってるお名前だけど他に何撮ってる人だったかしら、と思ったら、マイフェイバリットムービー「暗くなるまで待って(1967)」の監督さんでした。オードリー・ヘプバーン主演の超スリリングな密室劇、めちゃくちゃおすすめです。あの監督さんなら続く007シリーズも期待できるかもしれない。ちなみにWikiによれば第二次世界大戦中に当時看護婦だったヘプバーンから介護された経験があるとか。すごい。なんで覚えてるの。

暗くなるまで待って [DVD]

暗くなるまで待って [DVD]

てなわけで長期戦の007レース始まりました。ちょいちょい進めてゆきます。なお、今回のベスト・オブ・ボンド賞は「時計見ながらキスをする」です。彼、こういうとこがいいよね。

(2018年148本目)