先日の「ニューイヤー・ミュージカル・コンサート2019(感想記事)」きっかけで観ようと思った作品のひとつです。コンサートで歌われた「God Help the Outcasts/ゴッド・ヘルプ」の他に、メインタイトルの曲もディズニーシーのショウなどで使われていますね。
原作になっているのは、「レ・ミゼラブル」の著者でもあるヴィクトル・ユーゴーによる小説「ノートルダムのせむし男」(面白いことにこのディズニー版ではヴィクトルとユーゴーなんていうキャラクターが出てきます)。何かに配慮した邦題のせいで鐘の話みたいになってますが、実際は「せむし男」のお話です。
「せむし」とは背中が大きく折れ曲がったハンディキャップのことで、本作の主人公であるカジモドがそのせむし男にあたります。日本人っぽいけど日本名ではないカジモドという名前は「ほぼ」を意味するらしく、「ほぼ人間」みたいな意味で付けられた名前だそうです。要はかなり奇形な主人公ということで、ディズニーアニメとしては異質に感じます。
ノートルダム大聖堂の「鐘つき男」として育てられた捨て子(ではないのだが本人はそう教えられている)のカジモドは、後見人である腹黒い判事フロローの命令により一度も大聖堂から出たことがありません。でもある日ついに外の世界へと飛び出します。するとそこでエスメラルダという女性に出会い、強く優しい彼女のことが忘れられなくなります。じつは、ジプシーである彼女もまたフロロから追われる身。カジモドとエスメラルダはお互いを護り合って…、みたいなそんなお話。
とにかく大人向けのディズニー作品といいますか、夢と魔法よりは現実のほうを強く見せられるような独特のテイストになっていて、一度観たらちょっと引きずってしまいました。
ディズニーヒロイン暫定トップ、エスメラルダ
わたし実写映画でもそうなんですけど、とりあえずヒロインが好みだったらオールオッケー!みたいになるとこあります。本作のヒロインであるところのエスメラルダ(声はデミ・ムーア!)、最高にストライクでした。褐色の肌に下がり眉、つり目、時折見せる「さて、どうしたもんだか」みたいな表情がたまりません。
プリンセスじゃないっていうのもディズニーアニメとしては珍しいところです。よって例の「シュガー・ラッシュ:オンライン(2018)」には出れてないのですが、いや〜〜出したい!(?) だってあんな、「ジャスティス!!」って叫ぶとことかめちゃくちゃ、めちゃくちゃ痺れるのに!!
大聖堂に匿われたエスメラルダが「さて、どうしたもんだか」顔で淡々と歌い上げる「God Help the Outcasts」、素晴らしいです。メンケンバラードの最高峰です。
1時間くらい見たらようやく慣れてくる主人公、カジモド
主人公カジモドはだいぶ攻めたキャラクターデザインになっています。野獣や魔神と違い、なまじ人の形をしているだけに「こ、これが主人公?」と認めがたい気持ちになってしまうのはなんとも現実的で皮肉があります。このビジュアルだからこそ成り立つ独特の空気感なので英断だと思うのですが、興行成績があまり振るわなかったらしいこともなんとなく納得です。
もう一人のメインキャラクターであるフィーバスは、地位あるプリンス的存在。アンチヒーローならぬアンチプリンスくらいの感じでしょうか。一応かたちとしては三角関係であるものの、カジモドが一歩引いていて、まあそうなるよねっていうラスト。このフィーバスのキャラクターもよく作られているなあと思います。いい男なんです*1。
思わず拍手したくなる
大聖堂が舞台になっていることもあってか、音楽が全体的に荘厳です。冒頭、タイトルの「THE HUNCHBACK OF NOTRE DAME」が大写しになるまでのクライマックス感がすごい。また、「God Help〜」をはじめとしたミュージカルナンバーの「拍手したさ」も非常に舞台を観ている感じがあります。映像の綺麗さも相まって、すごいものを見ている!という気持ちにさせられることの多い作品でした。
もともと悲劇なところをハッピーエンドにしているそうで、「まあそうなるよねっていうラスト」も不幸中の幸いとでもいうか、できるかぎりのハッピーエンドなんだよと捉えればそこまで物申したくなる脚本ではありません。まあこのへんは人によってかなり異なると思います。と注釈を入れたくなってしまう程度にセンシティブでビターな、独特のディズニーアニメでした。好きです。
(2019年8本目)
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*1:「ゲーム・オブ・スローンズ」的に言うとジェイミーだなって思いながら観ていた。だったらカジモドはピーター・ディンクレイジでもいいかも。というGoTキャスト妄想。