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主に映画の感想文を書いています

ナラタージュ(2017)

ナラタージュ Blu-ray 豪華版

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ナラタージュ (角川文庫)

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2005年刊行の同名小説を有村架純松本潤のW主演で実写映画化した作品。色っぽい有村架純が見れるのでは??という主に下心からの鑑賞。公開当時も気になってはいたものの結局観なかったので、だいぶ遅ればせながらとなりました。

あらすじ

雨の日、残業中の工藤泉有村架純は窓の外を眺めながら、学生時代を思い出していた。

大学二年生のある日、泉のもとに高校時代の教師から電話がかかってきた。所属する演劇部の顧問だった葉山松本潤というその教師は、部員不足の演劇部を文化祭まで手伝ってもらえないかとOBたちに声をかけていたのだった。泉は話を請け、久しぶりに母校を訪れる。彼女にとって葉山は恩師であり、そして同時に淡い恋の対象でもあった。

ナラタージュ=回想

有村架純のナレーションで進行していく、回想の物語です。「ナラタージュ」という言葉は、ナレーションを軸にした回想形式のことを指す用語なのだそうです。

非常に邦画的な、控えめな劇伴のなかに生活音が小気味よく響くような、そんなタイプの本作。じっとりしています。「雨」「教師と生徒」「靴」など、原作は本作のほうが先ではありますが「言の葉の庭(2013)」を連想するような作品でした。なんなら「言の葉」と「秒速」を同時に見せられたような、それくらいじっとり切ないお話です。

松潤が演じる過去ありげな寡黙メガネ男子の先生は「響け!ユーフォニアム」シリーズの滝先生みたいだなあとか思ったりも。これ、ずっと頭のなかで既視感がもやもやしててなかなか思い出せなかったんですけど思い出してすっきり。こんな先生いるかよ?!とは思いつつも、松潤による「これは泉の回想の物語だから、泉視点の葉山を演じるつもりで役作りをしている」という旨の発言を目にして、なるほどなあと。

もうひとり印象的なのは坂口健太郎演じる小野という大学生。彼の豹変っぷりは怖くて良かったです。あんな好青年だったのに付き合ったら束縛系DV彼氏になっちゃうなんて、ありそう、すごくありそう、リアル。まあいきなり実家連れてくあたりで完全になんだこいつとは思ってましたけど。坂口健太郎、こーいうのがうまい。彼の演じる役、基本的に好かんわ〜〜〜!です(笑)

こじらせ映画オタク要素たっぷり

葉山先生と泉の共通の趣味は映画。泉にいたっては映画配給会社に就職するほど。てなわけで、こじらせた映画ファンの好きそうな作品(偏見)がたくさん出てきます。

エル・スール Blu-ray

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浮雲 [DVD]

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このへんは全部観てないので観てみたいな〜といずれもリストに突っ込んだ次第。はい、わたし恥ずかしながらまだこじらせ不足です。これを機にもうちょっとこじらせます。ちなみに原作の設定では先生が「エル・スール(1983)」、泉が「ミツバチのささやき(1973)」をそれぞれフェイバリット・ムービーにしているらしく、お似合いだなおい!って感じです。

なお映画関連ネタで一番好きなのは、市川実日子さん演じるワケありな奥さんのフェイバリット・ムービーが「ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000)」っていう設定。なんか、っぽすぎて。っぽすぎるよその設定は。冗談ポイですよ尾頭さん。ちなみに先生は好きじゃないそうな。

ツッコミどころモヤりどころは多し

松潤の葉山先生がどうにも感情移入できないなあというところがあって、でもまあそこは「泉視点の葉山」なんだったらあれでいいのか〜と一応の納得。他には、あの子が死ぬのって物語上そんなに必要あった…??とか(原作および著者の他作品においては深く掘り下げられているようです)、残業して思い出話してたら「朝になっちゃったな〜〜〜by瀬戸康史」とかそれそんな爽やかなことではなくない??とか。

あと、これいろんな映画観てて思うんですけど、主人公か誰かが体調崩して寝てるとこに長ネギやら携えてご飯作りに来てくれる系の展開あるじゃないですか、よく。あれ、一人暮らしの女の子が具合悪いのにわざわざインターホンで起き上がってカメラはおろか覗き窓すら見ることなくドア開けるなんてことあります??? 体調不良時の抜き打ち訪問で部屋がしっかり片付いてるあたりは百歩譲ってよしとして。インターホン対応のところだけは有り得ないと思ってしまうわたしなのでした。

とまあ全体的に首を傾げるシーンは多いですが、有村架純を堪能できたのでオールオッケーです。どうもありがとうございました!

(2018年203本目)

ピグマリオン(1938)

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1913年初演の同名戯曲を映画化したもの(が、これ)で、それをブロードウェイでミュージカル化したのちに再映画化した(ややこしい)のが、かの有名な「マイ・フェア・レディ(1964)」。以前「マイ・フェア・レディ」を観た頃はまだ「1938年の映画を観るという選択肢」がそもそもなかったのですが、そういえば今なら余裕で観れるねとふと思って鑑賞しました。TSUTAYA DISCASにあります。 レンタルも配信もされてないような古い映画はそもそもどうやって見るねん、というところがあるかと思いましたので今後はなるべくリンク貼るようにしていきますね。観たい映画はほとんどある、信頼のTSUTAYA DISCASさまさまです。

あらすじ

マイ・フェア・レディ」と同じ。みすぼらしく口も悪い花売り娘のイライザを言語学の教授が淑女に仕立て上げていくお話。

びっくりするほど「マイ・フェア・レディ

もっとなんかこう、「原案」的な感じなのかなと思っていたんですよ。そしたら、びっくりするほどそのまんまでした。「マイ・フェア・レディ」からミュージカル要素を抜いただけ、っていう感じ。人物名はもちろん、シチュエーションやアングルまでほぼほぼ同じなんじゃないかというレベルです。そのうえ90分というコンパクトさ。「マイ・フェア・レディ」が3時間弱の長尺なので、観終わって真っ先に思ったのは「90分で出来るんじゃん!」でした(笑)

ここまで変わりがないのは、原作の完成度が相当高かったっていうことですよね多分。なおWikipedia等によれば「ヒギンズ教授とのハッピーエンド」というのは原作者ジョージ・バーナード・ショーの望むところではなかったそうで、しかし最初の舞台化の時点で既に(勝手に)ハッピーエンド要素を加えられてしまい、そのままのかたちで「マイ・フェア・レディ」に引き継がれるという、原作者にとってはなんともアレなお話。

本作でイライザを演じているのはウェンディ・ヒラーという女優さん。上がり眉タレ目がなんとなくイングリッド・バーグマンに似てるかな?というような、もちろん淑女になったらバッチリ綺麗なお方。ちなみにイングリッド・バーグマンとは「オリエント急行殺人事件(1974)」で共演していて、ウェンディ・ヒラーさんはあのちょっと不気味な老婆役でした。イングリッド・バーグマンと3歳しか違わないのにビジュアルの差がすごい…(あれは特殊メイク…?)。

170分の「マイ・フェア・レディ」と比較したときに「80分の差分とは」と思ってしまうほどこれ一本で十分に物語を堪能できる充実の90分なのですが、「マイ・フェア・レディ」の大きな付加価値というのはまあ言うまでもなくオードリー・ヘプバーンの存在っていうことで。やっぱりあの「最終試験会場」における圧倒的淑女感はヘプバーンのイライザが抜きん出ております。はい。カラーですしね(本作はモノクロ)。

歌は、正直そんな必要ない物語だなと本作を観て思いました。普通にお話がおもしろい。バーナード・ショーがすごい。なので、忙しい人向けの「マイ・フェア・レディとしても非常におすすめできます(笑)

(2018年202本目)