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S・S・ラージャマウリ最新作「RRR(2022)」感想|3,000円くらい払って観たい満足度

『バーフバリ』シリーズで大旋風を巻き起こしたS・S・ラージャマウリ監督の最新作『RRR』、初日に観てきました。立川シネマシティ極音上映!


映画「RRR」ポスター
映画「RRR」ポスター


もともと、初日に観るほどの熱量はなかったんです。『バーフバリ』シリーズはそこまでハマったわけでもないし。でもTwitterで「観たら元気になるぞ!」みたいなのを見かけて、急に行きたくなって。元気が欲しかった。

あとは、愛聴している「アトロク」ことTBSラジオアフター6ジャンクション」でもここ最近インド映画特集ラージャマウリ監督ゲスト回があったりして、それも相まってですね。

で、感想。いやあ……、めっちゃ面白かった、です。大満足。シネマシティの会員割引により1,000円で鑑賞したんですけどね、途中から「安すぎる……」ってなってきて。明らかに1,000円っていう金額が見合わないんですよ。1,900円でも安いと思う。3,000円が適正価格ではないか。観ながら追加課金したくなった映画は初めてかもしれません。

それとも通じることで、これは間違いなく映画館の大スクリーンで観るべき映画ですね。わたし「バーフバリ旋風」当時は熱心な映画ファンじゃなかったので個人的ビデオスルーしちゃって、映画館で観てないんですよね。今回『RRR』は『バーフバリ』シリーズより好みだと感じたけれど、おそらく映画館で観てたら『バーフバリ』もこれくらい興奮したんだろうな。ぜひ、ぜひ、映画館へ行ってください! 元気になります!

ということで、具体的な感想、さてどうしよう。事細かな感想なんか書いてたら大変なことになってしまうし、そもそも書ききれないし。ちょっと、順を追って書いてみますか。

アバンかよ

まず冒頭。3つの「R」のひとつ「STO"R"Y」がドォン! これから始まる物語のプロローグとして、とある悲劇的な出来事を見せられます。舞台は英国植民地時代のインドで、傲慢で残忍な白人至上主義の英国軍人がインドの人たちを抑圧・迫害しているという、思いのほかヘヴィな背景。「ひえっ」な暴力描写でいきなり『へレディタリー/継承(2018)』を連想してしまったのはわたしだけだろうか。

続いて「R」ふたつめ「FIR"E"」がドォン! みっつめ「WATE"R"」もドォン! 本作のW主人公「ラーマ」と「ビーム」がそれぞれ炎と水として紹介されます。どうせ序盤だから言っちゃうと、「1万人vs1人の闘い」「人vs虎の肉弾戦」ですよ。幕開け早々のクライマックスですよ。冒頭の絵面じゃない。シネマシティズン平日割1,000円はもうここでペイされている。

で、ひとしきり満足したところでドゴォンと『RRR』のタイトルが出てきて「アバンかよ」ってなるわけです。なお『RRR』は「stoRy」「fiRe」「wateR」ではなく、「Rise(蜂起)」「Roar(咆哮)」「Revolt(反乱)」の頭文字、というのが正式なようです。

秘密の任務、男の友情

NTR Jr.さん演じる「ビーム」と、ラーム・チャランさん演じる「ラーマ」。二人の主人公はそれぞれ大きなミッションを抱えた「仮の姿」のときに出会い、友情を深めていきます。最初の出会いがほんと笑っちゃうんですけど、いや分かんねえよ!伝わんねえよ!なんで伝わってんだよ!握手してる状況ではないよ!みたいな。ぜひ劇場でご確認ください。ちなみに今Googleで「RRR」を検索すると「馬」と「バイク」が上の方をチープに走りますね。

んで、もうなんか、どうやったらそんな仲良くなるんだよってくらいイチャコラしてる男の友情と、恋物語と、歌とダンスと、このへんはいかにも我々がイメージする「インド映画」を供給してくれる部分です。1930〜50年代あたりの豪華絢爛なハリウッドミュージカルを観ているような感覚。観てる間中、ずっと目がニッコニコでした。元気が出る!!

ただですね、この二人の秘めたるミッションはじつのところ敵対関係を生じさせるもので、あんなに仲良しだったのに、いざ「仮の姿」を脱ぐ段階になると絶対に相容れない二人になってしまうという、映画史上最大の苦渋、みたいな状況が大変つらくなってまいります。が、耐え忍びましょう。映画というエンタテインメントのカタルシスを信じて、耐え忍びましょう。

歌って踊るだけじゃない

3時間という超大作、今回印象的だったのは、歌い踊り荒唐無稽アクションの合間にシリアスなパートがどっしり入っていること。特にインターバル(出るだけで休めません)を挟んだ後半序盤で描かれるラーマの過去パートはかなり重たいものとなっていて、なんとなく『七人の侍(1954)』を連想させるような感じでもありました。

冒頭から幾度も繰り返される、残虐非道な「総督」によるあの言葉。そしてラーマが幼い頃から繰り返し聞いてきたあの一連の動作に関する言葉。そのあたりが意味を持って重なっていく様は、つらいながらも、ううん、よくできているなあと。

そう、ストーリー、よくできているんですよね。数奇な群像劇が気持ちよく交わって集結して。アーリヤー・バットさん演じるラーマの許嫁シータはどこまで関わってくるんだろう?と思ったら、案外めちゃくちゃ関わってきたり。あの宿屋のくだりなんかも『七人の侍』っぽいかも。「この飯、おろそかには食わんぞ」感。シータの台詞、なんでしたっけ、「食材が気を悪くする」でしたっけ。ぐっときちゃった。出番はそう多くないけれど、一気に魅了される名シーン!

ストーリーといえば驚いたのが、本作がタランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ(2009)』からインスピレーションを受けているということ。


鑑賞直前に上記の記事で読んで「ええっ」となったのですが、観てみると確かに、わかる……。わたし『イングロリアス・バスターズ』観たのだいぶ前で、細かく覚えてはいないのですけど、ただなんとなく、全体の雰囲気や要素はすごく「わかる」! 久しぶりに観直してみようかな。

でも最後は歌って踊る

書くの疲れてきたんでそろそろ終わらせます。ってことで、かくかくしかじかエンドロール。監督曰く、結構つらいシーンも出てくる映画だから最後はやっぱりね、みたいな感じみたいです。で、監督ご自身も出て踊ってます(笑) かっこいいわあ。

エンドロールでひときわ魅力的なのはシータ役のアーリヤー・バットさん! なんだその力こぶダンスは、とは思いつつ、とにかくkawaii。アーリヤー・バットさん、引っ張りだこの大スターなんですね。『ガリーボーイ(2019)』とかにも出てるんだ!と知って、未見だったけど観たくなりました。

ガリーボーイ(字幕版)

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はい、以上で『RRR』の感想を終わります。最初に書いた通りこれは絶対映画館の大スクリーン&音響設備で観なきゃ!な映画なのでぜひそのようにしてください。割引券とか使わないで観るとより満足感が高いかもしれません。ああ、IMAXで観ればいいのか! ぜひそのようにしてください(再)。

(2022年180本目/劇場鑑賞)