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映画「わかりません(2022)」感想|年相応のレールから外れた私たちへ

池袋シネマ・ロサにて、片山享監督の映画『わかりません』を観ました。


映画「わかりません」ポスター
映画「わかりません」ポスター


片山享監督のことを知ったのは、安楽涼監督との共作『まっぱだか(2021)』をシネマ・チュプキで上映したときのこと。



2日連続で来てくださり舞台挨拶をいただいたのですが、片山監督めちゃめちゃいい方!ってすっかり好きになっちゃって。わたしはこの2日間がとにかく楽しい記憶として残っているのです。

そんな片山監督の新作、絶対観に行きたい!と思ってはいたものの、なかなか都合がつかず、でもなんとか滑り込みで行くことができました。『アメリカン・ユートピア(2020)』ぶりのシネマ・ロサ

こちら、まず面白いのが、出演者の多くが「本人役」であるところ。ボブ鈴木さん演じる「ボブ鈴木」と、木原勝利さん演じる「木原」という、実在の「おっさん」二人の物語なのです。そして脚本を書いた片山監督もまた、二人の実際の友人であるという。

公式のあらすじが分かりやすいので引用しておきましょう。


俳優であるボブ鈴木と木原勝利。2人は事務所の先輩後輩である。ボブ鈴木は出演作も数知れずとベテランの域にはあるが、昔、苦労を共有した俳優仲間達は売れていき、ふと50歳も越えた自分の現在地に疑問を感じる。そして、どうにか自分を変えようと思い立つが、今更何をどう変えていいのかもわからない。一方、木原は芝居が評価されているが、大きな役で呼ばれるのは小規模予算の現場だけ。妻に「いつ売れるの」と言われても、言い返す言葉もなく現状を飲み込みながら時間は過ぎていく。
 一回りも年は違うが、同じような境遇にある二人は肩を並べてもがき始める。しかしうまくいかない。どうしようもなく、生活は続いていってしまう。

映画「わかりません」 | 公式サイト


「売れない俳優」がうだうだしてるだけのお話といえばそうです。でまあ、そこまで心動かされたいとかそんなんじゃなく軽い気持ちでロサの独特な椅子に沈み込んだのですけど、いやはやこれが存外、響いてしまいまして。

わたしもどちらかといえば「年相応」の「社会人」というレールからはだいぶ逸れた生き方をしてしまっていて、もうさすがに「葛藤」のフェーズは越えて落ち着いているけれど、しかし時折ふいに突き付けられて「揺らぐ」、みたいな、そういうのあるんですよね。

そこでこの映画。いろいろグサグサと刺さりつつも、最終的には「やりたいことをやり続ける勇気」をもらった気がします。

上映後の舞台挨拶でも、ずらりと並ばれた出演者の皆様を片山監督が「そういうのを乗り越えてきた人たち」と紹介しているの聞いたらなんかこみ上げてきちゃって。思わず溢れてきた涙、マスクに吸わせましたよ。なんでかわかんないけど、それぞれのストーリーを舞台上に見た、的なことなのかなあ。


行った日の舞台挨拶。ちょうどカメラを持っていたのできれいな写真が撮れました。右端が主演のお二人、左端が片山監督。
行った日の舞台挨拶。ちょうどカメラを持っていたのできれいな写真が撮れました。右端が主演のお二人、左端が片山監督。

あとはやっぱり、前述の「楽しかった2日間」が鮮明に残っておりますゆえ、あんな素敵な監督が、映画業界の闇とか全然感じさせなかった監督が、こんな映画作ってくれるんだ……っていう、いわゆるクソデカ感情、ですかね〜。帰り際のロビーで監督に同じようなことお伝えしてたらまたなんか感極まってきて、なんだ疲れてんのか?!って思いましたね〜。

中身に少し触れると、映画制作内幕ものとしても楽しい場面がいっぱいある作品です。「安楽組」の撮影現場なんていうメタなシーンとか、頭の位置が斬新な映画内映画その1とか、成城の東宝スタジオで撮ったていの映画内映画その2とか。『誰かの花(2021)』のカトウシンスケさんが凄まじい役で出ているのだけど、え、カトウさんって本当にそんな強烈なキャラなの…‥…?? 『まっぱだか』の柳谷一成さんもインパクトあったなあ。一服しに来ただけの片山監督もさすがのイケメン。ほんっとにイケメン。

主演のお二人も、もちろん素敵で。ボブさんは「正社員は、ちょっと…」のところが超シンパシーです。木原さんは、「売れないのが不思議」わかる。すごくいい俳優さんだなって、素直に思いました。ふたりのカフェのシーン、パステルカラーの窓枠で切り取られたシーン、好きだなあ。等々。

なお、好評につきシネマ・ロサでの上映は延長になったそう! いや、これ、うん、面白いですもん。『まっぱだか』ほどめんどくさくはないし(あれはあれでいいんだけど)、好きなことを頑なに続けてしまっている人には何かしら響くところがあるはず。ぜひご覧ください。



(2022年179本目/劇場鑑賞)

ちなみに多分、今年の劇場鑑賞100本目です。やった!