353log

主に映画の感想文を書いています

映画「キングメーカー 大統領を作った男(2021)」感想|金大中と「影」の凄腕選挙参謀を描くポリティカルエンタメ

シネマート新宿にてキングメーカー 大統領を作った男』を観ました。


映画「キングメーカー 大統領を作った男」ポスター
映画「キングメーカー 大統領を作った男」ポスター


韓国の第15代大統領・金大中とその「影」で暗躍した選挙参謀厳昌録(オム・チャンノク)をモデルに1960〜70年代の選挙戦を描く、韓国映画お得意のポリティカル・エンタテインメント作品です。

近年の代表的な関連作品を劇中の時系列で並べると、朴正煕暗殺事件を描いた『KCIA 南山の部長たち(2020)』、その直後の全斗煥による光州事件金大中が逮捕されたことに端を発する)を描いた『タクシー運転手 約束は海を越えて(2017)』、金大中の大統領当選へと繋がる民主化闘争を描いた『1987、ある闘いの真実(2017)』などがありますが、本作はこれらの作品群の一番手前(朴正煕の長期政権中)に位置します。

物語的には『KCIA』と近く、大統領(候補)とその腹心の、愛憎入り混じった、まあ、ややブロマンスな、そういうやつです。ただ、選挙戦をメインに描いているところが他作品と一味違って、またこれかよとは全く思わせません。『KCIA』と被る人物が出てくるのも楽しいところです。

キャストは、金大中をモデルとしたキム・ウンボム役に、光州事件のトラウマを描いた『ペパーミント・キャンディー(2000)(じつはまだ観たことがない……)』などのソル・ギョング。厳昌録をモデルとしたソ・チャンデ役に、『パラサイト 半地下の家族(2019)』や『マイ・ディア・ミスター 私のおじさん(リンク貼ろうとして、感想書いてないことに気付く)』などのイ・ソンギュン

わたし何故かイ・ソンギュンの名前を全く覚えられなくて、ポスターとか見てても全然気付かなくて、始まってしばらくしてからあのダンディすぎる低い声を聞いて「ん?!」となったのでした。ライムスター宇多丸さんがムービーウォッチメンで紹介していたこちらの記事によれば厳昌録本人も声が低かったらしく、そこでのキャスティングなのかな?とか思ったり。

他にもキャスティングはなかなか豪華。おそらく金泳三(キム・ヨンサム)がモデルのキム・ユンホを演じるのは『梨泰院クラス』『秘密の森』など代表作は挙げればきりがないユ・ジェミョン。『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のお父さん役も記憶に新しいチョン・べス。『マイ・ディア・ミスター』繋がりの雑魚い敵役チョン・ジェソン。といった具合。

ソ・チャンデがトンデモ戦略で選挙戦を突き進んでいく序盤などはシンプルに楽しいのですが、先に挙げたような関連作と比べると予備知識が結構必要かなと思われる作品で、わたしは初見ではついていけない部分が多かったです。後から調べて、全羅道(チョルラド)と慶尚道キョンサンド)という「韓国を東西に分けた」地域対立についてなるほど…と知ったり、今更身も蓋もないことを言えばキムやパクだらけの名前が識別できないとかそういうのも当然ありましたしね。

それから……、あまりこれクレームみたいに書きたくもないのですけど、鑑賞環境が良くなくて、あんまり味わえてません。シネマート新宿さんのスクリーン2が、わたしスクリーン2は初めて利用したので普段がどうかとか知らないのですが、やたら明るくてですね。どこかから薄明かりがさしているような、全く「黒」が出ない映写で、すごく気が散ってしまって、話を追うぐらいしかできなかったんです。スタッフさんに言うべきだったかな。でもなんか、言わずに帰ってきちゃって。あの日だけの整備不良とかであってほしいです。ちなみに9/5(月)18:25の回です。

まあ、なので、これは配信始まったら自宅でもう一度観たいなと思っています。なんなら今日どこか劇場へ観に行きたいなと思ったくらいですが、だいぶ回数減っていて時すでに遅しでした。

(2022年155本目/劇場鑑賞)