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映画「激怒(2022)」感想|高橋ヨシキ長編監督デビュー作、これは観ておかねば。

映画ライター、アートディレクターの高橋ヨシキさんが企画・脚本・監督をつとめた映画『激怒』新宿武蔵野館にて観てきました。


映画「激怒」ポスター
映画「激怒」ポスター


高橋ヨシキさんといえば雑誌「映画秘宝」などでもお馴染みですが、わたし的にはアトロクことTBSラジオアフター6ジャンクション」に時々出演なさるタイミングというのが主な接点でございます。アングラで奇抜な風貌からは想像もつかないような、穏やかで理路整然とした語り口がとても好きです。あんな話ができるようになりたい!って心から思います。

で、その高橋ヨシキさんがコツコツ作られていた長編監督デビュー作『激怒』。これは観ておかないとな、と行ってきました。あらすじをご紹介しておきましょう。

川瀬陽太さん演じる主人公・深間は、ついカッとなってやりすぎてしまう刑事。今回もまたカッとなってやりすぎちゃったので、アメリカの病院に送られてしまいます。

数年後、治療の成果が認められた深間は帰国。再び同じ町の刑事として復職しますが、どうも町の様子がおかしい。安心・安全をスローガンに自警団が幅をきかせ、きな臭い笑顔の張り付いたディストピアになっていやがる。

しばらくは、「治療」の甲斐あって激昂することもなくヘコヘコ過ごしていた深間。しかし遂に、カッと目覚めるのでありました。「俺は、お前らを殺す」

はい、というわけで覚醒系勧善懲悪バイオレンス映画、楽しそうです。オープニングもめちゃめちゃかっこいいし、これは期待できる!と思ったのですが、終始わりと真顔で冷静に観てしまったのが正直なところです。テンポ感なのか、チープさなのか、突き抜けきれていない感じなのか。

というか多分、ヨシキさんの作品ということで肩肘張ってしまい、意識はせずとも精査するモードになってしまったのがいけなかったのかもしれません。ブラウン管テレビとVHSで出会いたかった系の作品。ヨシキさんを知らない方が軽い気持ちで観たら、楽しいB級映画だった!となりそうです。

もちろんいいところもあって、なかでも終盤のとあるゴア・バイオレンス描写は最高でした。嫌なウルヴァリンだな! ひとつ明確に不満なのは、女署長さんの無念が劇中で晴らされないこと。幽閉されてて最後にリベンジする、くらい欲しかったです。や、幽閉される必要はないか。ただ、スカッとしたかった。

観ていてすごく連想したのが、阪元裕吾監督が『ベイビーわるきゅーれ(2021)』の前に撮った『ある用務員(2021)』。通じる要素はあるんだけどいまひとつノりきれないなあという感じの、何が言いたいかっていうと、ヨシキさんが次にもう一本撮るとしたら、それは確実に数段クオリティの高い、ばっちし面白い作品になってるだろうなってことです。多分そういう、微々たる部分なんだと思う。楽しみにしています!

(2022年153本目/劇場鑑賞)

予告編はばっちし面白い……。やっぱりテンポ感なのかも。


高橋ヨシキさんの魅力を知るには、今年の七夕に放送されたアトロクの「我々の観たいアノ映画、こうなるといいナ!会議」が今現在のイチオシです。実在しない妄想の「続編映画」を、さも実在するかのように、というか実在するようにしか聞こえないレベルで「紹介」していくヨシキさんの語り口にどうぞ魅了されてください。