ゆっくりじっくり尾道探訪記、4本目です。前回の記事はこちら。
憧れの尾道をひたすら歩き回り、大林宣彦監督作品の世界に迷い込んでゆきます。作品ごとに巡っているわけでも作品ごとにまとめているわけでもないのでごちゃ混ぜですが、エリア的には比較的近いあたりでまとめてあります。
今回登場するのは--
おすすめしないルートです。っていうかペースが遅い! いつ終わるんだろう。
『ふたり』のひょい飛びポイント
しばし歩道橋と戯れたのち、次なる目的地へ向かう。なおプランは特に定めず、GoogleMap上でピンの近いところをセレクトしているだけである。
ピンを頼りに向かう次の目的地は、『ふたり(1991)』で石田ひかり演じる北尾実加がひょいとすり抜ける電柱の隙間、みたいなのがある路地。スポット名が曖昧ならば位置情報も曖昧だ。細い路地なのでGoogleMapには載っていない。先人たちの聖地巡礼写真を頼りに、ひたすら歩き回るのみ。
じつのところ一ヶ月も経ってから書いているため記憶は曖昧なのだが、かなり迷った記憶だけはある。でもこの場所はどうしてもこの目で見たかったので、迷路攻略のごとく路地という路地へ入っては出、入っては出、ついに出会えた。感動した。
どこに感動する要素があるんだと思われるかもしれないが聖地巡礼とはそういうものである。かわいい石田ひかりが「あたし猫だからね」と抜け道を使いこなし、電柱と壁の間をひょいとすり抜ける名シーンがあるのである。開始6分ほどで見ることができる(PrimeVideo、いつの間にか観れなくなっていた)。
せっかく来たからには、ほかに人もいないことだし、35歳男性、ひょいと飛び越えてみることにした。が、思いのほか高く、あんな身軽にすり抜けるのは到底無理だった。あたし猫じゃないからね。
かなり映画の世界そのままなので、ぜひ歩き回って見つけてもらいたいスポット。迷って迷ってやっと見つけてこその感動がある。
ねこに連れられ、千光寺
ひとしきり行ったり来たり満足したので、ノープラン散策に戻る。そろそろ宿にチェックインできる時間だがどうしようかなと思いながらとりあえず歩いていると、猫がいた。
坂道の途中で立ち止まり、振り返ってこちらを見ている。これが尾道の人馴れした猫か。嬉しくなって写真を撮りつつ追っていくと、いつしか猫は消えた。そしてわたしはひとり、山道に取り残された。
一応は「千光寺参道」と手書きの立て看板があった(ような気がする)道。登っていけば、尾道いち有名な展望台へ着けるだろう。遅かれ早かれ行く予定ではあったからこのまま登ってしまおう。そう決めたものの、足を進めるごとに後悔してきた。これ登山では。遭難するのでは。すげえ不安になってきた。暑いし。肌べとべとだし。
宿のチェックインすらできないまま死ぬのかと心折れそうになりながらも、結論から言えばちゃんと着いた。そして足労の対価たるザ・尾道ビューがそこにはあった。『転校生(1982)』から『海辺の映画館-キネマの玉手箱(2020)』まで多くの作品に登場する「尾道水道」をしばらくご覧ください。
いちいちNYに例えると、エンパイアやロックフェラーの展望台から初めてマンハッタンの夕景・夜景を見たときのような*1、ずっと目に焼き付けていたい景色。それがこの尾道水道。なお大林映画に頻出する尾道水道は、もうひとつ別のアングルがある。それはまた別日に。
ところで、途中で引き返さずにどうにか登ってきたのにはひとつ理由があった。それは、この展望台には文明の利器ロープウェイがあるということである。よって帰りはこいつを使う。本当は行きから使いたかった。猫め。
ロープウェイに乗り込むと、なぜかケージに入った猫も同乗してきた。さっきの、お前じゃないよな。
ガクンと落ちる急勾配がなかなか怖かったが、往路の登山が嘘かのようにあっという間に尾道地上階到着。生きた心地で宿へ向かう。商店街でいい感じの写真が撮れ、ご満悦。
次回、今回のお宿「あなごのねどこ」にチェックイン。魅力的な古民家再利用ゲストハウスをご紹介します。