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映画「ラプソディ オブ colors(2020)」感想|極度のカオスに不思議と癒される実録人間狂詩曲

映画「ラプソディ オブ colors」ポスタードキュメンタリー映画『ラプソディ オブ colors』を観ました。蒲田のコミュニティスペースcolorsに所狭しと集う、そのあまりにも「なんでもあり」な人々の生き様を描きます。

昨日書いた『へんしんっ!(2020)』とのハシゴ鑑賞だったので感受性がパンクしそうになりましたがどちらも非常におもしろく、ドキュメンタリーってすごいなとあらためて唸りました。いろんな場所がある、いろんな人がいる、いろんな人生がある。生きることに対してちょっと肩の力が抜けるような、クセは強いけれど不思議と癒される作品です。

──というのは綺麗めの感想で。実際問題どんな映画なのかということについてはまさにタイトルの「ラプソディ=狂詩曲」が一言であらわしているとおり、開始早々とにかくカオス! なんだここは、なんだこれは、なんだこの人たちは。これを観なきゃいけないの??

と困惑しているところにテロップ「いったいなんなのだろう、この人たちは」。ああよかった、監督は一線引いてた……。この先も度々監督による「客観視」のテロップが挿入されるおかげで本作はかろうじてバランスを保っています。

そんなカオスの中にも一応、物語の主軸となる人物が約二名。まずはcolors代表の石川さん、通称「魔女」。それから石川さんのビジネスパートナーでありNPO法人理事長として地域の障害福祉向上に奔走する中村さん、自称「マイノリティを喰い物にしてる蝿」。いや蝿て。もうね、とりあえず予告編を観てください。



魔女と蝿をご覧いただけましたか。こういうドキュメンタリーです。端的に言って、めちゃめちゃ面白いです。見ての通りのカオスだけど案外その中にもドラマはあったりして、特に終盤、すっかり一線を飛び越えてしまった距離感の監督が「魔女と蝿の同行二人」にお節介を焼こうとするあたり。嗚呼、他人事だから面白い。

猥雑な魅力は他にも沢山。コロナ禍の2021年初夏から見るともはやファンタジーな「密」。ドキュメンタリーの神様に導かれたかのような「colors解体」という刹那。同行二人の結末。一転して劇映画、『アマルコルド』か『8 1/2』か、ふと柄にもなくフェリーニなんかを思い出してしまった在りし日の大団円なラスト。

いったいなんなんだろう、この映画は。あんまりドキュメンタリーを観たという感覚でもないかもしれません。こんな作品も作れてしまうのだから、繰り返しになりますがドキュメンタリーってすごい。事実は小説よりも奇なり。ぜひ映画館で、ぐちゃぐちゃに掻き回されていただきたい一本でした。

(2021年97本目/劇場鑑賞) 公式サイトから既に溢れ出るカオス。シネマ・チュプキ・タバタにて鑑賞しました。音声ガイド(任意)&日本語字幕付きで7/13(火)まで上映されています。舞台挨拶の企画も多数! ご予約はこちらから。

後日談:「あの中村さん」と監督にお会いする

シネマチュプキにて、舞台挨拶にいらした監督、それからなんと「マイノリティを喰い物にしてる蝿」こと中村さんにお会いしてしまいました。本作観賞後、「中村さん」と「石川さん」がまるでフィクションのキャラクターみたいに頭から離れないでいたわたし、大興奮。

監督も中村さんもこの感想記事を読んでくださっていたようで恐縮しきり、変な汗をいっぱいかきました。

舞台挨拶の様子
違う作品を観に来たのに、舞台挨拶のおこぼれにあずかってしまう。ありがたや…!


棚ぼた的に覗かせていただいた舞台挨拶は、これまた経験したことがないほど濃厚な質疑応答の飛び交うクレイジーな空間で最高でした。さりげなく「colors」の元スタッフさんが混じっていたり、福祉関係の仕事をされている方も多かったり、この日が2回目という女性は「中村さんの意見にモヤモヤしたからもう一度観てみたけどやっぱりモヤモヤした」と中村さんご本人に伝えていたり(笑)

映画の中も外も、鑑賞体験ってこんなにもディープになるんだなあと様々な角度から思わされる『ラプソディ オブ colors』でございました。